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【感想記事】あやまって、という言葉の外側で

noteを始めたばかりで、読者なんてほとんどいない私。

そんな中で、ふと目に入ったのがパテック様の恋愛コンペだった。

パテック様の作品は、どこか俯瞰しているのに、ちゃんと温度がある。  
バードアイのように全体を見渡しながら、それでも触れたものの感触が残る文章。

それに比べて私は、感情ばかりを書いている。  
しかも、どちらかといえば重たくて、湿度が高くて、少し暗い。

正直に言えば、AIと一緒に創作している。自分で言葉を出せない私が、参加していいのか迷いもあった。

それでも、「作者の温度が感じられる作品を選びたい」という言葉に、少しだけ背中を押された。

温度なら、書けるかもしれない。  
自分の書いたものが、どう届くのか知りたい。

そんな軽い気持ちで参加したコンペだった。


結果、57作品が集まり、決勝に残った作品たちはどれも本当に美しく、言葉が丁寧に紡がれていた。

正直、場違いだったかもしれないと思った。  
それでも、多くの方から「スキ」やコメントをいただけたことが、何より嬉しかった。

ワイルドカードに推薦していただけたことも含めて、  
このコンペに参加してよかったと、素直に思う。

恋愛コンペという場で、  
失恋や、強くあろうとする人ほど抱えてしまう弱さを、  
誰かに感じてもらえたこと。

それだけで、十分だった。



そして、決勝作品の中で、どうしても言葉にしたくなった作品がある。

絶望ナース田中さんの【短編小説】『あやまって』。

この作品の言葉の使い方に、痺れた。

少しだけ、その感想を書いてみたいと思う。


雨の匂いって、どうしてあんなに時間を遅くするんだろう。

この作品を読んでいるあいだ、ずっとそんな感覚があった。  
なにかが起きているわけじゃないのに、確実に何かが“ずれていく”。

その静かな違和感が、最後まで消えなかった。



「あやまって」

たった一つの音に、こんなに意味が重なるんだって、少し怖くなった。

誤って。  
謝って。  
そして、「あや、まって」と呼びかける声。

同じ音なのに、全部違う。  
でも、この物語の中では、どれもはっきり分けられないまま存在している。

たぶんそれが、この物語の正体なんだと思う。



鯉の話が、ずっと引っかかっている。

餌を与えすぎて、池の外に出てしまった鯉。  
戻れなくて、しばらく跳ねていた時間。

ほんの少しの「誤り」で、  
本来いるはずの場所から外れてしまうこと。

それって、たぶん人も同じで。

量とか、距離とか、タイミングとか。  
どれか一つでもずれると、簡単に“外”に出てしまう。

戻りたいのに、戻り方がわからなくなる。



この物語は、何も強く言わない。

「好き」とか、「後悔」とか、そういう言葉は出てこないのに、  
読んでいると、ちゃんと全部わかってしまう。

むしろ、言葉にしないからこそ、  
間に合わなかった時間だけが、静かに残る。



最後の一文を読んだとき、少しだけ息が止まった。

あやまりながら。  
あやまちながら。  
私だけが、まだその外で跳ねている。

戻れたはずのものと、戻れなかった自分。

その差は、ほんの少しだったはずなのに、  
もう取り返せないところまで来てしまっている。



たぶん誰の中にも、こういう「もしも」はある。

あと少しだけ早ければ、とか。  
もう一言、言えていたら、とか。

でも、その“少し”がいちばん遠い。

この物語は、それを静かに見せてくる。

だから、優しいのに、ちゃんと痛かった。


言葉選びが素敵な、絶望ナース田中さんの作品はこちら。


個性豊かで、素敵な作品が溢れるパテック杯はこちらです。皆様の感性に触れる作品がきっとあるはず。

※パテック様へ
本記事は個人的な感想として書いたものです。裏パテック杯のタグはお借りしておりますが、本記事でのエントリーは辞退させていただきます。

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