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The Notorious B.I.G. 「Big Poppa」 「ゆったり」という言葉がここまで似合う曲がこれまであっただろうか

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前回の調査報告書では、隊員Gが2Pacの「Dear Mama」を取り上げました。今回はその2Pacと深い関係にあったThe Notorious B.I.G.、通称Biggieの「Big Poppa」を掘り下げていきます。

Ready to Dieというアルバムは全体的にかなりダークで重い作品ですが、「Big Poppa」だけ全然違う空気が流れている。Biggieが一番リラックスして、一番楽しそうにラップしている曲だと思っています。

🎬 まずは聴いてみてください

まず知っておきたい——BiggieとPacは最初、友達だった

「Big Poppa」が生まれた1994年、BiggieとPacの関係は今のイメージとは全然違っていました。二人はまだ友人だったんです。

出会いは1993年のLAのパーティ。当時Biggieはまだ無名に近い存在で、Pacはすでにスターでした。そのPacがBiggieに自分のLA宅を開放し、ニューヨークから来るたびに泊まれるようにした。ヘネシーを送ってあげたり、業界のアドバイスをしたり、先輩として面倒を見ていた。

Biggieが「マネージャーになってくれ」と頼んだとき、Pacは「Puffのところにいろ。あいつがスターにしてくれる」と断ったというエピソードが残っています。二人の関係がここまで温かかったとは、今となっては想像しにくいですよね。

この「Big Poppa」がリリースされた1994年末は、ちょうどその友情が崩れ始めた時期と重なります。同年11月にPacがニューヨークのスタジオで銃撃されるという事件が起き、Pacはその背後にBiggieがいると疑うようになった。二人の関係は、この年を境に取り返しのつかない方向へ向かっていきます。

このビート、実はLost Boyz用だった

「Big Poppa」のあの柔らかくてグルーヴィーなビート、実はもともとBiggieのために作られたものではありませんでした。プロデューサーのChucky ThompsonとNashiem Myrickが作ったビートは、最初はLost Boyzというグループに渡っていたんです。

それをPuff Daddyが「やっぱりBiggieに使いたい」と別のビートと交換して取り戻した。このエピソード、聞くたびにPuff Daddyの耳の確かさを感じます。あのビートがLost Boyzの曲になっていたら、ヒップホップの歴史は少し違っていたかもしれない。

サンプリング元はThe Isley Brothers

ビートの核になっているのは、The Isley Brothersの1983年のR&Bバラード「Between the Sheets」のサンプルです。元ネタを聴くと「あ、あのメロディだ」とすぐにわかります。

面白いのが、Chucky ThompsonはこのビートをIce Cubeの「It Was a Good Day」をイメージして作っていたこと。あの曲もThe Isley Brothersのサンプルを使っているんですが、西海岸のG-Funkの匂いがする滑らかなビートを、東海岸のBiggieに乗せたかったという意図があった。その東西の融合が、この曲独特のリラックスした空気感を生んでいます。

🎬サンプリング元はこちら

「Big Poppa」というキャラクター

この曲でBiggieが演じているのは「Big Poppa」というキャラクターです。成功を手にした余裕のある男、クラブで一番目立つ存在——ストリートの暗さとは全く異なる、贅沢でゆったりとした世界観です。Ready to Dieの中では異色の存在感ですが、これがBiggieのもう一つの顔でもあった。ハードコアな曲も書けるし、こういうスムーズでセクシーな曲も書ける。その振れ幅がBiggieの凄さだと思います。

歌詞を読む|余裕と遊び心が全部詰まってる

クラブでの語りかけ

曲の冒頭から、Biggieは特定の女性に向かって語りかけるスタイルで進みます。クラブで目が合った瞬間から、自分のところに来るよう誘う。その語り口がとにかく余裕に満ちていて、まるで映画のワンシーンを見ているような感覚になります。

Biggieのフロウの妙

この曲のBiggieのラップ、実はすごく計算されています。ゆったりしたビートに対して、言葉を詰め込みすぎず、むしろ間を活かしながら乗っていく。その「余白の使い方」が上手くて、聴いていて気持ちいい。Ready to Dieの他の曲と聴き比べると、この曲だけ明らかにテンポ感が違います。

MVには豪華なメンバーが集結

「Big Poppa」のMVには当時のシーンを代表するメンバーが顔を揃えています。Mary J. Blige、Faith Evans、Lil' Kim、Busta Rhymes、Treach of Naughty by Natureなど。1994年のニューヨークのシーンがそのまま映像になったような豪華さで、今見ても楽しいです。

グラミーノミネート、2Pacと同じ年に同じ部門で

1996年のグラミー賞、ベスト男性ラップソロパフォーマンス部門にノミネートされましたが、受賞したのはCoolioの「Gangsta's Paradise」でした。そしてここが面白いのですが、同じカテゴリには前回隊員Gが取り上げた2Pacの「Dear Mama」もノミネートされていた。

友情が崩れていったまさにその年に、かつての親友の曲同士が同じ賞を争っていた。音楽の話をしているはずなのに、どこか切ない話だと思います。

まとめ

「Big Poppa」がリリースされた1994年末は、BiggieとPacの友情が終わりに近づいていた時期でもありました。この曲に漂うリラックスした空気感は、嵐の前の静けさだったのかもしれない——そんなことを考えながら聴くと、また違う聴こえ方がします。

もともとLost Boyz用だったビートが、Puff Daddyの判断でBiggieに渡って、ヒップホップ史に残る一曲になった。こういう偶然の積み重ねで名曲が生まれるというのが、音楽の面白さだと改めて思います。

🎬 改めてもう一度聴いてみてください

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