地獄のピクニック
日曜日、ピクニックに行った。
お弁当を作って、レジャーシートを持って公園に行く、あの「ピクニック」ではない。
あの「ピクニック」であれば、どれだけ良かっただろう。
僕が行ったのは、原宿の雑貨屋「Picnic」である。
シールにハマっている娘が「原宿に行きたい」と言うので、軽い気持ちで「いいよ」と返事をしたのが地獄に足を踏み入れた瞬間だった。
娘は原宿に行きたいと言うが、よくよく聞くとシールを買いに「Picnic」なるお店に行きたいとのこと。
Picnic。
知らん。
調べてみると竹下通りにある雑貨屋で、シールを買うためにはかなり長い時間並ぶ必要があるとのこと。
Google mapでは開店10:30とあったが、Xで検索したら9:30で既に大行列、とポストされていた。
嫌だ……。
行きたくない……。
この寒い中並ぶなんて考えられない……。
しかし、娘はもう行く気満々である。
「いつ原宿行くの?」と何度も聞いてくる。
仕方がない。
約束してしまった以上、行かないわけにはいかないだろう。
意を決して9:00着目標で娘と2人、Picnicへ向かったのだった。
現場に到着し、状況を見て、目を見張った。
え?
え?
え?
大・行・列!!
Picnicはビルの1階にあるのだが、なんと行列はビルの3階まで続いていた。
9時の時点で、である。
これは、とんでもないことになったぞ……。
この時、僕は地獄の中心に踏み入ったことを悟った。
いや、しかし呆然と立ちすくんでいる暇はない。
こうしている間にも人はどんどんやって来る。
一刻も早く並ばなければ。
僕と娘は2人、行列の最後尾を目指して歩き始めた。
太陽の光は届かず、どこからか流れて来る風が身体を冷やしていく。
最初は娘と2人会話をしていた僕だが、徐々に元気を失っていき、最後には無言でただただ虚空を見つめていた。
周りを見渡してみると、行列の中に虚無を覗き込んでいるかのような目をした大人をたくさん見つけることが出来た。
寒いし、トイレ行きたいけど行けないし。
そこは、Picnicという名の地獄だった。
並び始めてから約2時間!
11時を過ぎた頃、ようやくお店の入り口近くに到達する。
だが、お店の入り口に着いてからも長い。
みんな一生懸命にシールを選んでいるからだろう、なかなか列は前に進まない。
一体、何でシールがこんな爆発的に人気になったのだろう。
このブームに発起人はいるのだろうか?
狂わされておる、狂わされておるぞ。
世の中の子供たちが、このブーム発起人に狂わされておるぞ!
地獄のど真ん中で、僕はただただいるかどうかも分からないブーム発起人を恨んでいた。
まぁ、小学生の頃に僕は「ビックリマンシール」に狂わされておったからな……。
世の中のブームは巡るものなのか。
娘は楽しそうにシールを選んでいる。
2時間も並んだ後なのに、よくそんな元気が残っているものだ。
関心してしまう。
ここまで苦労してようやく辿り着いたのだ。
欲しいシールはカゴに入れるよう娘に伝え、また僕は虚空を見つめたのだった。
並び始めてから2時間半。
僕と娘はようやくゴール地点に到着した。
レジである。
現金Only。
店員さんが無慈悲な一言を放つ。
「7,000円になります」
たっか!たっか!
そう思った。
そう思ったが、もはやそれ以上の思考を巡らす気力はなく、僕は這々の体で財布から1万円札を抜き取り店員に渡した。
そしてやっと、僕は地獄から抜け出すことができたのだった。
娘は嬉しそうにしている。
その様子を見た時、疲れはどこかに飛んでいった。

