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第1話:「書けない時間にこそ、言葉は育っていた」

『ことばの種をわたす──書く人と、まだ書けない人のあいだで』


書けない夜がある。
でも、あの沈黙の中にも、確かに“言葉の芽”はあった。
焦っても芽は出えへん。
けど、信じて待つ時間の中で、ちゃんと育ってたんや。


「毎日書くことが大事や」
ずっと、そう信じてきた。
noteを開くことが、呼吸みたいになってて、
スキがひとつもつかへん夜も、
“とにかく続けなあかん”と思ってた。

書くことが、わたしの“証”やった。
数字がゼロでも、読まれなくても、
「続けてる自分」でいられることに、
かすかな誇りを感じてた。

でも──
ある夜、急にその呼吸が止まった。
何を書いても、嘘っぽく感じる。
心の中がざわついて、
キーボードを叩く指が、どうしても動かへんかった。


◆ 書けない夜の光景

机の上のコーヒーは冷めて、
モニターの明かりだけが、部屋の中を淡く照らしてた。
外は雨。
小さくパラパラと窓を叩く音がして、
時計の針が秒を刻むたびに、
「時間だけが進んでいく」感覚がした。

カーソルの点滅を見つめながら、
ただ呼吸してた。
心が“止まってる”のに、身体だけは動いてる。
この感じ、なんとも言えへん虚しさやった。

「何をどう書けばええんやろ」
「もう、誰にも届いてへんのちゃうか」
そんな言葉が何度も浮かんでは消えた。

──書けない夜って、静かすぎる。
けど、その静けさの中に、
なんか“生きてる音”みたいなもんが、
確かにあった気がする。

部屋の隅には、書きかけのメモが散らかっていた。
思いついた言葉をメモしても、どれも“本当”じゃない気がして、
書いては消し、また書いてはため息をついた。
冷めたコーヒーの匂いが、部屋にうっすら残ってる。
冷蔵庫のモーター音だけが響いて、
世界が音を止めたみたいに静かやった。
そんな夜に、ひとりでいると、
「自分がいなくなっても、何も変わらんのちゃうか」って、
ふと怖くなるんや。


◆ 止まることが、怖かった

わたしにとって、書くことは“証明”やった。
「今日も書けた」
「まだ続けてる」
そうやって自分を確かめてきた。

だから、止まるのが怖かった。
何も出てこない日は、自分が消えてしまいそうで。
「もう終わりなんかもしれん」と思うたび、
胸の奥がズキズキした。

でも、止まってわかったことがある。
止まることって、終わりやない。
それは、呼吸を整える“間”なんや。

走りすぎてたんやと思う。
「書く」ことを続けるあまり、
“生きる”ことを置き去りにしてた。
止まって初めて、
心の奥に溜まってた“疲れ”が見えた。

沈黙の時間は、
壊れる前に立ち止まらせてくれるサインやったんや。

続けることに意味があると思ってた。
でも、それは「止める勇気」を失ってただけかもしれへん。
書かん自分を責めるクセがついて、
“書けない=価値がない”みたいに思い込んでた。
本当は、書かん日にも息してた。
家族と笑ったり、誰かのnoteを読んで涙したり。
その全部が、言葉の栄養やったんや。
けど当時は、それを“逃げ”やと思ってた。

書けない自分を、ちゃんと抱きしめるまでに、
けっこう時間がかかった。


◆ 沈黙の中で、聞こえた声

数日、何も書かんまま過ごした。
スマホを見ても、人の投稿が眩しすぎた。
「毎日更新」「〇〇日連続投稿」
そんな文字を見るたび、
自分が取り残されていく気がした。

でも、ある夜ふと、
自分の昔のnoteを読み返してみた。

──あの頃のわたしの言葉、
拙くて、恥ずかしくて、でも真っすぐやった。
「誰かに届いてほしい」よりも、
「今の自分を残しておきたい」っていう必死さがあった。

読みながら、涙が出た。
思い出したんや。
“最初の気持ち”を。

沈黙は、何もない時間やない。
忘れてた自分に会いに行く時間や。

「あの頃のわたし」は、誰に読まれんでも書いてた。
夜中に1行だけ書いて寝て、
朝起きて消して、また書き直して。
その繰り返しの中に、
“書くことが好き”っていう、たった一つの真実があった。

だから今、もし書けない夜があっても、
それは「好きやからこそ苦しい」証拠なんやと思う。
書くことを信じてるからこそ、
うまく言葉にできへん痛みが出てくる。 書けない夜って、
“言葉を失った人”やなくて、
“言葉を信じ続けてる人”の夜なんやと思う。


◆ 書けない時間も、育ってた

不思議やけど、書かん間に、
言葉はちゃんと根を張ってた。

沈黙の中で、
いくつも考えが発酵していって、
気づいたら、前よりも深い場所から言葉が出てきた。

まるで、
土の中でじっと光を待ってた種が、
ようやく芽吹く瞬間みたいに。

“書けない時間”って、
ほんまは「見えへんところで育ててる時間」なんやと思う。
焦っても、引き抜いたら枯れてまう。
でも、信じて待ってたら、ちゃんと芽は出る。

わたしも、何度も「もうええか」と思った。
でも、そのたびに、
誰かのnoteに救われた。
誰かの“途中の言葉”が、
「もう一度、書いてみようかな」って気持ちをくれた。


◆ 書けないあなたへ

もし今、
何を書いたらええかわからん夜を過ごしてる人がおるなら、
どうか焦らんといてほしい。

言葉は生きもんや。
水をやらんでも、光が届かんでも、
ちゃんと自分のタイミングで芽を出す。

書けない夜も、
“言葉の季節”のひとつや。
春みたいに鮮やかやないけど、
土の中で静かに根を張ってる季節や。

あなたが書けない夜を過ごしてるその間にも、
心の奥で、言葉はちゃんと育ってる。
今はまだ見えへんだけや。

書けない夜を通り抜けた人は、
ほんまの意味で“言葉の力”を知ってる。
書けるときより、書けなかったときのほうが、
言葉の重みを感じられる。

言葉は、沈黙を知ってる人の中で、一番強く光る。


◆ 結び

書けない夜があったからこそ、
今、誰かの言葉に救われる。
そして、
その救いがまた次の誰かに渡っていく。

止まることも、沈黙も、
全部、書く道の一部。

焦らんでええ。
あなたの中にも、
ちゃんと“言葉の種”は生きてる。

それが芽吹く日を信じて、
今日は、静かに呼吸しよう。


🌷 次回予告

“書けない夜”を越えたあと、
わたしの心に浮かんだのは──
「今度は、誰かの“書けない”を救いたい」という気持ちやった。

次回:
🪶第2話|「“書けない誰か”に、言葉を渡す日」

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