天気の日の重だるさは、股関節を包む袋から届いています|天気痛と関節包のはなし
こんにちは。兵庫県三田市で開業している、ひろはた整体ラボの廣畑です。
「雨が近づくと、お尻から太ももにかけて重たくなる」
「天気が崩れる日は、脚の付け根が詰まったような感じがする」
このようなお悩みはありませんか?
当ラボにいらっしゃる方で、天気が崩れる日に決まって股関節のあたりが重だるくなる、という方がいらっしゃいます。
出かける予定のある日ほど、空模様が気になってしまいますよね。
でも、その重だるさを受け取っているのは、股関節を包んでいる袋なんです。
股関節は、関節包(かんせつほう)という丈夫な袋に、すっぽりと包まれています。
この袋には、痛みを感じ取るセンサーが集まっています。
袋の張り具合が変わると、その知らせが脚の付け根やお尻へ広がって届きます。
今回は、天気が崩れる日の股関節の重だるさについて、この袋の側で何が起きているのかをお話ししますね。
天気の日の重だるさを受け取っているのは、股関節を包む袋
股関節は、骨盤側のくぼみに、太ももの骨の丸い先端がはまり込んだ関節です。
そのまわりを、関節包という袋が包んでいます。
袋の中は関節液(かんせつえき)という少量の液で満たされていて、骨と骨がなめらかに動けるようになっています。
この袋には、体の状態を感じ取る役割もあります。
フランスの研究チームが、股関節の関節包の感覚について、1945年から2019年までに出た論文を検索し、21本を詳しく調べています。痛みを感じ取るセンサーが一番密に分布していたのは、関節包の前側の上のほうと、くぼみのふちにある関節唇(かんせつしん)でした。動きや張りを感じ取るセンサーも、後ろ側より前側のほうが多く分布していました。(Laumonerie ほか, 2021)
股関節の状態を一番細かく感じ取っているのは、関節を包む袋の前側です。
「脚の付け根」と表現される場所は、ちょうどこの前側の袋がある場所にあたります。
筋肉のこわばりだけでなく、袋の側からも知らせが届いているんですね。

股関節からの知らせは、お尻や太ももへ広がって届く
では、その知らせは、どこで感じられるのでしょうか。
股関節に症状のある51名に、レントゲンで位置を確かめながら股関節の中へ注射を行い、痛みの出ている場所を地図にした研究があります。最も多かったのはお尻で71%、次いで太ももが57%、脚の付け根が55%でした。膝より下まで広がっていた方も22%いらっしゃいました。痛みの出方は14通りに分かれ、腰へ広がった方はいませんでした。(Lesher ほか, 2008)
股関節から届く知らせは、股関節そのものの場所に出るとは限りません。
むしろ、お尻に出ていた方が一番多いという結果でした。
股関節は、体の深いところにある関節です。
深いところから届く痛みは、皮膚の痛みほど「ここ」と場所を絞りにくいと言われています。
天気が崩れる日に「お尻のあたりが重い」「太ももがだるい」と感じられているものも、股関節から届いていることがあります。

股関節の袋の中は、もともと少しだけ低い圧に保たれている
この袋には、もう一つの働きがあります。
ご検体の股関節10体を使って、回る範囲を調べた研究があります。この論文では、股関節の回る範囲に関わるものとして、骨の形・関節包・関節唇に加えて、関節の中が外より低い圧に保たれていることが挙げられています。実際に関節の中へ10mlの生理食塩水を入れて関節液が増えた状態を作ると、回る範囲は狭くなり、脚を伸ばした状態で外へ回す動きでは平均4.1度狭くなっていました。(Hebert ほか, 2017)
袋の中の量がわずかに変わるだけで、関節の回り方も変わります。
外から見て腫れているように見えなくても、動かしたときの引っかかりや、回しにくさとして感じられることがあります。
そして、袋の張り具合は、脚の向きによっても変わります。
股関節の中の圧について報告した論文では、股関節が入る量は10cc以上あるにもかかわらず、2.5ccほどのわずかな量でも、関節の向きによっては高い圧になりうると述べられています。(Schwarz & Leixnering, 1989)
同じ量が入っていても、脚をどの向きに置いているかで、袋の張り方は変わります。
同じ姿勢が続けば、袋の張り方も同じままになります。
気圧が下がる日、痛みの感じ方に関わるのは交感神経
ここまでは、股関節の側の話でした。
では、天気が崩れる日には、そこに何が加わるのでしょうか。
気圧が下がったときに体の中で起きていることは、動物を使った実験で調べられています。
脚の神経に痛みを抱えたラットを、まわりの気圧を20mmHg下げた部屋に入れると、痛みの反応が強まりました。一方、痛みのない健康なラットでは変化がありませんでした。さらに、交感神経(こうかんしんけい)が働かない状態にしたラットでは、気圧を下げてもこの強まりは起きませんでした。(Sato ほか, 1999)
気圧が下がると、すでに痛みのある場所では、交感神経を通してその感じ方が強まります。
気圧の変化が痛みまで届くまでには、交感神経の働きが関わっているんですね。
では、どのくらいの下がり方で影響が出るのでしょうか。
モルモットを使った別の研究では、自然の天気で起こる範囲の下がり方(27hPa)でも、同じように痛みの反応が強まることが確かめられています。(Sato ほか, 2011)
天気が崩れる日に股関節の重だるさが強くなるのは、股関節を包む袋が、もともと知らせを送っている場所だからです。
天気は変えられませんが、股関節にかかる負担のほうは、セルフケアで減らせることがあります。
日頃からできることを、追伸でお伝えしますね。
追伸
最後までご覧いただきありがとうございました。
天気が崩れそうな日にできることを、3つお伝えします。
同じ姿勢が続きそうなときは、ときどき立ち上がって、その場で軽く足踏みをしてみてください。
椅子に座ったままでも、両膝をゆっくり外へ開いて、また閉じるだけで、股関節は動きます。
天気が崩れそうな日は、シャワーだけで済ませず、湯船に浸かってみてください。
体が温まると血管が広がって、股関節まわりの巡りを助けてくれます。
どれも、気づいたときにできる範囲で十分です。
天気が崩れる日のセルフケアは、院のブログで詳しくご紹介しています。

ひろはた整体ラボ
代表 廣畑 駿也(理学療法士)
参考文献
Laumonerie P, et al. Sensory Innervation of the Hip Joint and Referred Pain: A Systematic Review of the Literature. Pain Med. 2021;22(5):1149-1157.
Lesher JM, et al. Hip joint pain referral patterns: a descriptive study. Pain Med. 2008;9(1):22-25.
Hebert C, et al. Effects of hip joint transverse plane range of motion with a modeled effusion and capsular tear: A cadaveric study. Clin Biomech (Bristol). 2017;42:115-119.
Schwarz N, Leixnering M. Posttraumatic hemarthrosis of the hip joint. Unfallchirurg. 1989;92(4):180-186.
Sato J, et al. Lowering barometric pressure aggravates mechanical allodynia and hyperalgesia in a rat model of neuropathic pain. Neurosci Lett. 1999;266(1):21-24.
Sato J, et al. Low barometric pressure aggravates neuropathic pain in guinea pigs. Neurosci Lett. 2011;503(2):152-156.
