躁鬱園芸③(サンマーメン)
実りなき秋が来た。
8月のほとんどを横になって過ごしたのだから仕方ない。昼に起きて居間に行ってテレビの前で横になる。もう水やりタイムは終わっている。2、3日なぜか5時起きで水やりをしたあとゲリラ豪雨に降られる、ということを繰り返したので嫌になったのだ。何しろ雨が多くてトマトもナスも根腐れた。生き急ぎがちのキュウリとピーマンだけは「水をくれ!」と叫んでいるが夕方の水やりタイムにも私は怪談チャンネルを見ながら寝落ちしている。
こんな調子ではゴーヤーすら結実しない。毎年ゴーヤーとプチトマトはできすぎて困るぐらいなのに何の呪いなのか。いや単なる夏鬱だ。
なぜかししとうと唐辛子だけがバカスカなる。私は舌が赤ちゃんなので唐辛子は食べられないが、虫除けのために植えている。赤々と輝く唐辛子を見るたびに「辛そうだな…」と思う。
辛いものがダメな上に熱いものもダメだ。それなのにいちばんの好物は「サンマーメン」である。少し前に私のベストサンマーメンだった「天一景」が閉店してしまったので「日中友好食堂玉屋」でサンマーメンを頼もうとするが、ここに行くとモヤシ焼きそばを頼んでしまう。モヤシのシャキシャキ中毒なのである。ここには「バンメン」というナゾメニューがあるのだが、ピリ辛らしいので頼んだことはない。バンメンというのは古い町中華にたまーにあるメニューだ。特に定義はないらしく各店によってフリーダムなバンメンがでてくるらしい。
サンマーメンは野菜を炒めた餡がかかっているのが決まりだから、永遠に冷めない。なので猫舌の私は「チッチャイオワンヲクダサイ…」となるべくかわいくお願いする。が、たいがいは「フッ…」と鼻で笑われ「猫舌のくせにサンマーメン頼むんじゃないよ」という猫舌差別を感じる。猫だけに舐められている。
私調べでは店主がお年寄りなほど餡が固い。理由はわからない。サンマーメンはヨコハマ名物とか言われているが、東京の中華屋にもまあまあよくある。とろみという点では広東麺との違いもよくわからないが、美味けりゃなんでもいい。
サンマーメンより軽く行きたい時にはネギそばをよく頼む。白髪ネギと赤いチャーシューが乗ったあっさり醤油味。こちらも古い店ほど汁の甘味が強いように思う。悲しいかな奇珍もなくなってしまったので、ベストスープがまだ見つからない。奇珍の汁と揚げワンタンのタレに浸かって余生を過ごしたいという夢は潰えた。
ツクツクボウシが鳴いている。夏の園芸はもう終いにしよう。ジャガイモが線虫で絶滅する前に、国産の種芋でも植えてみるか。あとは葱だな。ニンニクも植えよう。まだまだ実りなき園芸は続く。
