たまよりひめと出雲路森(いづもぢもり)と出雲の御子
ー賀茂信仰と鴨川デルタ#5ー
処女懐胎なる匿名性とかかる姫の無謬性
"白羽の矢" により、
子を授かったというタマヨリ姫。
気高き孤高の姫の清潔さ、
無謬性を謳わんとの表現に
他ならないものと感じます。
白羽の矢は "白い矢羽の矢" であり、
白い矢羽の矢は、 "白矢の璽" と "羽羽矢"。
白羽の矢は璽と矢の略筆表現だと
解釈してきました。
処女懐胎により、生まれた子が3歳のとき、
白羽の矢を指さし、「父」というと、矢は昇天。
呼応するように「ワケイカツチの神なり」と
虚空に鳴り響いたといいます。
はいそうですか、ワケツチ宮のお子なんですね。
とは安直に過ぎる気もします。
「矢」の父がワケツチさんであると、
そう聞こえなくもないですね。
ならば、矢はワケツチさんのご子息?

肖像として白羽の矢と呼べるのは
この時点で、「白矢の璽」の携帯が許された
「白矢」の肖像と呼べる歴任者は3人、
別雷神、彦火火出見尊、賀茂御祖神。
ワケツチ宮から見れば、
息子の嫁がトヨタマ姫。
トヨタマ姫の弟が、
「河合の神」のカモタケツミさん。
タケツミさんのお子がタマヨリ姫ですから、
タマヨリ姫は「息子の嫁の姪っ子」となります。
神代における醜聞のひとつ、
シラヒト・コクミの一件。
祝詞に唱えてまでして、教訓として後世に残し、
伝えているわけですから、
天君(九分九厘アカシックレコードに繋がっていた)
ともあろう方が、それはないでしょ。
とも思います。
ともかく処女懐胎で生を成し、
父がいないものですから、
そのお子には、名が無く、
「出雲の御子」とニックネームが
ついていました。

オオヤマクイの子なら出雲の御子で収まる
出雲の御子とは、何を語らんとするのか。
ソサノウさん → 子・オオトシさん →
子・オオヤマクイさん
との系譜見ると、
その子がヤマクイさんの子であるのなら、
「出雲の御子」でメタファーの成立を見ます。
一方、この出雲の意味合いにおいて、
五雲と記すのが本来のようで、
姫が父なき子と二人きり、俗世から距離を置き、
隠れるように暮らしたという「高野の森」。
五色の雲が現れ、覆うこの森を
「五雲路森」と
姫は呼んでいたいました。
いったい何のことやら、
語彙の淵に迷い込んでしまいそうですね。

出雲路森に子と引き籠るタマヨリ姫
五色の雲が覆う森・五雲路森に
子とふたり引き籠もる姫。
一体、姫は何をしていたのか。
ワケツチさんの祠を成し、
一心不乱に御影を祭ったといいます。
御影とは、神霊の反映、光の放射、
御蔭とは、身の陰、話したくないこと、
そっとしておいて、等々。
上記すべてをひっくるめて、
祭祀していた姫の姿が想われます。
タマヨリ姫は、なんたって「河合の神」の
お嬢さんですから、
周辺関係者も憂慮し、
諸守は姫と子に宮へ戻ってと乞いますが、
首を縦に振ろうとはしません。

姫の魂に深山幽谷を見た諸守
森(御蔭神社・京都市左京区)に籠り、
別雷神の御影をひたすら祭祀し続ける姫。
姫しか知らない何かの為に、
別雷神に縋り、頼り、祈りし、
トランス状態、入神状態の彼女に
諸守たちは、
近づくことさえ難しかったのかもしれません。
または、
別雷神と姫に近しい親族との間に出来た子を
恩義に預かり、育てていたと
考えられなくもありません。
二人しか存ぜぬ何かを
あの世まで持って行くつもりで
諸守たちを寄せ付けないでいたのかも
しれません。

姫の想いが違ったかたちで解釈され、
独り歩きし、
風聞は広がります。

流言は知者に止まる
やがて、日枝山(比叡山)の麓、
ワタカミの娘が子と森に隠れ住むと
賀茂御祖神カモヒトさんの耳に入ります。
訊けば、当然諸守は心配して
森から出るよう請うも
頑として応じないと。
カモヒトさんは事情を知ると心を痛め、
宮内の局預り(監督役)、
石椋命(三代大物主コモリ13男)に
高野の森(五雲路森)へ様子を見に遣らせます。
しばらくして、
手ぶらで戻った石椋命。
項垂れています。どう申し開きしようか
言葉が見つからないでいます。
「御祖天君、御使人を出さねば来ぬと
思われます」傍らに控えた
オオヤマクイさんが、助け舟を出します。
続けて「姫を召せば、五雲路森(御蔭神社)を
離れることになり、そうなれば自ら成した祠、
別雷神を祭ることが、出来なくなるから
でしょう」
※御使人・差使=神使・上使
天君、皇の使い。勅使。天君、皇の代理人。
ヲシカを掛詞に後世「鹿」が神の使いとされ始め
神社に飼われるように。
御使人オオヤマクイの慧眼
御使人として、
姫のもとに着いたオオヤマクイさん。
「事情は承知しており、すべてにおいて便宜を
図ります」
長男イツセの乳母役と
カモヒト内局というオファーも伝えます。
イツセを生むも息絶えたヤセ姫
カモヒトさんの長男イツセを生んだヤセ姫。
ですが、出産するや身罷るという悲劇が
あり、上記のようなオファーになったようです。
※ ヤセ姫 = カモヒト内侍。
世継ぎがないカモヒトを憂い
コヤネさんが占い推薦した姫。
すぐにイツセを孕むも
出産後まもなく絶命。

姫、龍の庇護とともに宮へ上がる
オオヤマクイ御使人に召され、宮へ上がる姫。
「父はカモタケツミ、母はイソヨリ、
われはタマヨリと名付きます」凛とした背筋。
聡明に姫は続けます「祖父は六船霊の第五神、
籠宮豊玉彦にございます」一呼吸置くと、
涼しげな姫の相好が曇り始め、
子に目を遣ります「お察しどうり、この子は
神生りにございます。ゆえ、父無ければ斎名も
なく、皆は出雲の御子と呼んでおります」
言葉美しき透きとおる珠の姿。
孤高の女神、タマヨリ姫。御子に肩を寄せます。

賀茂御祖神カモヒトの恢々とした度量
タマヨリ姫に応えるカモヒトさん。
御子の視線に腰を下げ、
破顔一笑、何度も頷きました。
こうして出雲の御子は、
カモヒトさんの子となります。
宮入り(御家に入った)したので、
三毛入野命と御子に名が付きます。
御家入りして「ミケイリ」とは別に
「食をもたらす者」の意があるといい、
こちらがファーストミーニングのようです。
つまり長男イツセの食の面倒、
調整をする御子というネーミングとも
受け取れます。
ミケイリと名が付いた神生り子。
もしワケツチさんの子であるなら、
イツセさんの下序列には置かないようにも
想像します。
でも「かみなり子」とは、これ如何に。
タマヨリ姫、カモヒト内局となり稲飯命を生む
カモヒトさんの内局となったタマヨリ姫。
御子を授かります。
「イナイイ」と名が付きます。
ヤダ、ヤダと駄々をこね、騒がしい子だったので、
そう名付けられたといいます。
「否言い」。
関西でいう
「文句たれ」のニュアンスでしょうか。
イツセさんとは異母兄弟の弟となる
イナイイさん。
ミケイリさんとともに神武東征をサポート。
イナイイさん、ミケイリさん、
お二人とも東征における道のりの難所中の難所、
イワタテの沖を襲った暴風雨に無念の殉職。
つづく
