お尻から先に入れてください
わたしの車、助手席のドアを開けたところで止まる人がだいたい半分います。
BRZって車高が低いんです。普通の車みたいに、上からすとんと座れると思ってる人、多いんです。ドアを開けて、次の動作が分からへんまま突っ立ってる。何回も見た光景です。
「これ、どうやって乗るん?」
もう数えてません。何回聞かれたか。毎回同じ説明をしてます。お尻から先に入れて、そのあと足を入れてください、って。頭からとか足からとか、いろんな入り方を試そうとする人がいるんですけど、正解はひとつです。お尻が先。これだけ言うたら大体うまくいきます。
説明するだけならまだしも、気づいたらドアを押さえて待ってるんです。相手が乗り込むまで、ずっと開けたまま。乗ったら、はい、って閉めてあげる。これ、完全にホテルのコンシェルジュの動きです。誰に教わったわけでもないのに、いつのまにかそうなってます。ガソリンスタンドで、エンジン切ってフタ開けて静電気除去パッドを触る、あの手順と同じです。教わってへんのに、毎回同じ順番でやってる。
問題は降りるときです。乗るときより、降りるときのほうがよっぽど難しいんです。低い座席から体を持ち上げて、地面に足をつけて、そこから立ち上がる。この一連の動作、見てるとかなり不安定です。手を差し出すべきかどうか、毎回迷います。差し出して、いらんかったら気まずい。差し出さんと、よろけられても困る。結局、何もできずにただ見てるだけ、っていうのが一番多いパターンです。突っ立って、相手が無事に地面に立つのを確認してるだけ。世話焼いてるようで、実は突っ立ってるだけの人です。
雨の日はもっとしんどいです。ドアを押さえてる数秒、傘をさす手がありません。押さえる方の手がふさがってるから、当然です。自分だけ濡れます。しかも、うちの傘、後ろの座席に置きっぱなしなんです。3本くらい溜まってます。取りたくても、余裕なんてその瞬間にはありません。助手席のドアを押さえたまま、髪が濡れていくのをただ感じてます。
先週も、雨の日にひとり乗せました。ドアを開けて、待って、お尻から先ですよって言うて、乗ったら閉めて。閉めた瞬間、肩のあたりがもう湿ってました。
運転席に回り込んで、自分のドアを開けて、乗り込みます。ここはもう慣れたもんです。低い座席にすとんと体を落として、シートベルトを締めます。助手席の子は、シートベルトを締めながら「濡れてますよ」って言うてきました。知ってます。今さっき濡れました。
エンジンをかけると、ワイパーの動く音がして、フロントガラスの雨粒が流れていきます。助手席の子はまだ髪を手で払ってます。後ろの座席には、相変わらず傘が3本、転がってます。

※本文とは関係ありません。
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