社員ゼロで7年、それでも会社は回る──ひとり社長のすゝめ【ひとり社長ラジオ 第1回】
「ひとり社長ラジオ」は、フリーランス歴2年・ひとり社長歴5年の鳥屋(とりや)が、社長人生で得た学びと気づきをお届けするPodcast番組です。
この記事は、記念すべき第1回「ひとり社長のすゝめ」を読みやすく再構成したものです。聞き手は、都内で会社員をしているアシスタントのキャメロンさん。会社員目線の率直な質問に答えながら、社員を取らずに7年間事業を続けてきた理由を話しました。
音声・動画で聴きたい方はこちらからどうぞ。
新卒フリーランスから7年、ずっと同じ仕事をしている
私は今、YouTube運用代行の会社(株式会社BIRDY)の代表をしています。
運用代行というのは、動画を作って納品するだけの仕事ではありません。「YouTubeをやりたい」という企業さんから、企画・撮影・編集・チャンネル運用までまるっと引き受けて、全部いい感じに回す仕事です。
この仕事、フリーランス時代を含めるとちょうど7年やっています。今30歳なので、23歳の新卒からずっと同じ仕事です。
周りの経営者仲間を見ていると、みんな結構ピボットしていくんですね。その中で同じことをやり続けているのは、割とレアかもしれません。
原点は「稼げなかった筋トレYouTuber」
もともと私は、大学時代に筋トレYouTuber(とんぺーフィットネス)をやっていました。筋トレの部活でガチっていて、「これを発信したら見てくれる人がいるんじゃないか」と、まあ調子に乗っていたわけです。
結論、稼げませんでした。
企画・撮影・編集・演者を全部ひとりでやって、1日12〜13時間。多いときは1日2本投稿して、それで月8万円。「バイトやってた方が絶対いい」水準です。
しかも、好きだった筋トレが仕事になった瞬間、つまらなくなった。カメラを回していない筋トレが「損」に感じるようになって、冷めてしまったんですね。
それで演者は諦めました。ただ、「これだけYouTubeを頑張ったんだから、何かに活かしたい」と探して見つけたのが動画編集です。自分で企画も撮影も編集もやってきたんだから、そんじょそこらの編集者よりは絶対うまいだろうと。当時のTwitterで編集の募集を探しまくったのが、YouTube運用代行のキャリアの始まりです。
なぜ社員を取らないのか
うちは社員ゼロです。役員は代表取締役の私ひとり。ザ・ひとり社長です。
「社員を取った方がいい」というアドバイスは何度もされてきました。それでも取らないのは、私のビジネスモデルには社員がいることがあまりプラスに働かない、と思っているからです。理由は2つあります。
1つ目。YouTube運用代行は、一人ひとりに求められる難易度がめちゃくちゃ高い仕事だから。
動画を作ってバズらせて終わり、ではないんです。再生数を伸ばした上で、集客や採用といった企業の利益につなげるところまでが仕事。つまりマーケティングの知識も、お客さんを動かすコンサルタントとしての動きも必要になります。
だから私は、業務委託──つまり自分で独立している「社長」たち、プロ人材に依頼しています。プロ人材に依頼するなら、正社員採用より業務委託の方が圧倒的に優秀な人が見つかりやすい。
2つ目。SNSマーケティングは歴史が浅すぎるから。
広告やSEOと違って、法人がYouTubeを本気で使い始めてまだ7〜8年です。「ちゃんとした先駆者」がそもそも市場にいない。必然的に、若くて自分で事業をやっている人に依頼しないとプロジェクトが回らないんです。
私のビジネスモデルには、業務委託組織が合っていた。それだけの話です。
「飛ばれるリスク」には、構造で備える
業務委託だけの組織だと「人が飛ぶリスク」を聞かれます。実際、フリーランスなりたての頃は編集者に飛ばれかけたこともあります。
答えは、レイヤー構造です。うちの運用体制は4段階に分かれています。
PM(プロジェクトマネージャー) ── 戦略の責任者
企画ディレクター ── 戦略を実行に落とす
編集ディレクター ── 編集者を束ねて品質を担保する
編集者 ── 制作の実働
飛ぶ可能性があるのは、実は作業者レイヤーだけです。そこは飛ばれても後から巻き取れるように、プロジェクトデータを毎回共有させる仕組みを作りました。
そして上のレイヤーは基本、飛びません。飛ぶような人はそもそもPMになれないので。企画ディレクターが抜けたらPMがカバーし、編集ディレクターが抜けたら企画ディレクターがカバーする。役割分担と多段構造で、リスクは仕組みでカバーできます。
ひとり社長は孤独じゃないのか
よく聞かれますが、私は独立してから孤独を感じたことが一度もありません。これは本当です。
理由ははっきりしていて、コミュニティがあったからです。私は独立当初から、業務委託のパートナーが集まる組織に入っていて、同じような立場のフリーランスや経営者との横のつながり──飲み会も、休日のゴルフも──が最初からありました。
だからこそ、逆のケースには断言できます。
コミュニティなしで、ガチのひとりで戦うひとり社長は、続けられない。人間はそんなに強くない。
これからひとり社長をやるなら、まずコミュニティを見つけた方がいい。できれば経営者コミュニティです。趣味のつながりも良いけれど、飲み会で仕事の話ができる場所がないと、きついと思います。
向いているのは「幸せに生きたい人」
「どういう人がひとり社長に向いていますか?」という質問への私の答えは、普通に幸せに生きたい人です。
自分の人生も楽しみたいし、お客さんへの貢献もしたい。家庭や社会人としての責務も果たしながら、事業も伸ばしたい。ひとり社長は、プライベートと仕事をどちらも120%で両立できる手段だと思っています。
意外かもしれませんが、超絶スキルは要りません。私自身、動画編集がプロの編集者より上手いわけではないです。ただ、「撮影できる人いる?」と言われたら「やります」と言って、音速でやり方を覚えて、求められるレベルを超えてきた。それさえできれば、ハードスキルの入口は問題になりません。
必要なのはむしろ、ブレないメンタルです。ひとり社長は外圧が少ない分、「自分が選んでいる道はこれで正しい」と思える自信がないと、ブレます。
原動力はコンプレックス
なぜ7年走ってこれたのか。答えは確実に、コンプレックスです。
私は大学受験で浪人して、さらに1.5年休学しています。つまり同世代より2.5年遅れの社会人デビュー。同期が出世していく年齢で、自分はまだ大学生。「追いつかなきゃ」とずっと思っていました。
だったら、最初から自分の力で稼いで何段飛びかしてやろう──それが独立の動機です。
これは私の周りのひとり社長にも共通しています。超絶エリートではないけれど、「本当の俺の実力はこんなもんじゃない」と思っている人。現状に満足していない=コンプレックスがある人は、起業に向いていると思います。
起業の醍醐味は「自分の手で世界を作り変えてる感覚」
ガチの話をすると、これに尽きます。
私がやっているのはスタートアップではありません。調達も莫大なプロダクトもない。それでも、「YouTubeディレクター」という職業が生まれて、YouTubeを生業にする人や会社が増えていく。その一端を7年かけて担えてきた手応えは、何にも代えがたいものです。
7年やって、ぶっちゃけ楽しいか
めちゃくちゃ楽しいです。楽しくてしょうがない。
1日の大半は仕事です。その仕事がつまらなかったら、人生きつくないですか。
ひとり社長は、自分の思いのままに事業をやれます。組織を大きくすると、「社員を食わせるために、本当はやりたくない事業をやる」という局面が生まれる。それはそれで美しいけれど、5年10年経ってからでもいい。まずひとりで、思いのままにやればいい。
独立当時は月500時間働いていました。でも楽しかった。やればやるほどお金になるし、やればやるほど自分の力になるからです。
おわりに──独立して後悔した人を、見たことがない
独立した人に感想を聞くと、うまくいかなかった人も含めて、ほぼ100%「やってよかった」と言います。失敗して会社員に戻った人ですら、独立した経験自体はポジティブに捉えている。
だから、ひとり社長を勧めたいのは──悔いのない人生をやり切りたい人です。
みんな焦って組織化や拡大をして、退場していく人をたくさん見てきました。最初はひとり社長でいい。この番組では、そんな「ひとりで戦う社長」のための学びを毎回お届けしていきます。
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それでは、第2回もお楽しみに。
