【日常のつぶやき帖】私は激しく後悔していた
後悔した理由は、今日の服である。
私は普段スカートは履かず、99.9%パンツスタイルである。後の0.1%は冠婚葬祭で辛うじて履くぐらいである。
しかし、今年のはじめにコンサートに行く予定があり、ちょっといつもと違う服を買いたいなと思って、ネットで購入したのだ。
それがどんなものかというと、大きいハートがたくさんついている黒いワンピースである。
私はどうかしていた。
ワンピースもそうだが、ハートがいっぱい付いてるワンピースである。
ネットとは怖いものである。
モデルさんが着ているのをみると
「ちょっとおしゃれじゃね?」と思ってポチリと購入してしまった。
──が、しかしである。
誰が好き好んでハートがたくさん付いてるワンピースのアラフィフを見たいのだ。
コンサートに着て行ったものの、ロングコートを上に羽織っていたし、そんなにお披露目する機会もなく過ぎ去っていた。
着たのはそれ1回のみだった。
しかし、今日の朝、ふと思ったのである。
せっかく買ったのに、1回しか着ないって勿体ないなと。
薄手で長袖のワンピースだったから、着るなら今が丁度いい季節である。
今日は街まで出る予定だったし、ワンピースを着てみようかと思ったのである。
ワンピースを着て土手を歩く。
なんだか股の間がスカスカして落ち着かないなと思ったが、誰にも会わないし、まあいいかと、大して気にせず駅まで着いた。
そこから、なんだか違和感を覚えだす。
「本当にこんなの着て来ちゃってよかったのだろうか……」
コンサートではないのだぞ?
本屋と、いつものカフェだ。
なぜこんな格好をしている!と急に恥ずかしくなってきたのである。
駅にはちらほら人がいて、皆が
「おばさんがワンピース着てる〜」
と冷ややかな目を向けているような気がしてきたのである。
でも、ここまで来て引き返すわけにもいかず、サングラスで顔を隠し、キャスケット帽を深くかぶり前に進む。
目的地の駅に着くと、後ろから
「やべー」と若者の声がする。
「えっ?それは私の事ですか?!」
とドキドキしたが、恥ずかしくて振り返ることすらできない。
だから、誰に向けたものなのか、その真意はわからない。
「まずいぞ〜、これはまずいぞ〜!!」
と思いながら本屋を覗いてみる。
本の背表紙をみている風だが、一切集中できない。
ただ目を泳がせているだけで、頭の中は恥ずかしさで一杯になっていた。
なぜか400円で売ってた百人一首の本を買うと逃げるようにいつものカフェに行く。
本来、ここでは珈琲を飲みながらエッセイを書く予定だった。
しかし、ワンピースが気になりすぎてエッセイのネタがなんにも浮かばない。
もう帰りたくて帰りたくて仕方がないのだ。
結局私は、エッセイの筆が1ミリも動くことなく、そそくさとカフェを後にした。
家路につく途中、
私は一体何をしに来たのだと思うのであった
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