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鴉の3rdホールワンマンの話

【鴉というバンドの3rdホールワンマンライブについて語り散らかしているだけの雑文】

 2025年11月16日、日曜日。
 鴉が3回目のホールワンマンライブを決行した。場所はお馴染み、あきた芸術劇場ミルハスの中ホール。

 鴉。「秋田に住みながら全国で活動する」が口上の、スリーピースロックバンドである。
 そして私は、大阪に住みながら彼らを追い回している、ただの関西人である。

 今回のライブタイトルは、「生まれし場所が旅路に染まる」という。
 鴉の生まれた場所は私の旅路だ。そして彼ら自身の旅路でもある。私の根差す場所は彼らの旅路だ。
 染まったいくつもの旅路を思いながら、私は飛行機に乗った。伊丹発秋田行き、人生で40回目の秋田遠征である。

 事前物販のTシャツで正装して席につく。見上げたステージはやっぱり広くて大きくて、紗幕に映し出されたタイトルロゴが眩しかった。

 開演。

 暗闇と拍手の中、紗幕の内側にメンバーが現れたのがうっすらと見えた。
 ベースが鳴ると同時、紗幕に古谷さんの影が浮かぶ。次いで、ギターボーカル近野さん、ドラム千葉さん、そしてゲストキーボードの栗林聡子さんが浮かぶ。
 刻む音、リズム、聞き間違えるはずもない。
 黒髪ストレンジャー。
 鴉3回目のホールワンマンは、私のいちばん好きな曲から始まった。

 ひとつだけ決めていたことがあった。
 頭をからっぽにして臨もう。難しいことを考えるのはやめよう。
 経験上、終演後にセットリストが掲示されることはわかっていた。だからセトリを覚える必要はない。明日の朝、なにも覚えていなくたって構わない。ただ、目の前のステージを浴びるのだ。それだけに集中するのだ。

 ライトの印象が鮮やかだった。前回までは映像で惹きこまれたが、今回は照明に魅せられた。
 音と光に、ただ溺れた。

 茜色と群青色に染められた茜空。
 歌い出しの近野さんを、桜色と黄色の花びらが照らした桜。息を呑んだ。ラスサビの「一枚の桜 君と僕切り裂くように」で喉元をざっくりと掻っ切った仕草。あんなにドラマティックな桜は、知らなかった。
 あれは弧ノ儘だったか、間奏のギターに合わせてライトが収束と拡散を繰り返したのは。
 綺麗だった。音は眼でも聴けるのだ。

 この日リリースの新曲である戦いの歌と、今年4月にリリースしたばかりの序章が続いた。コール&レスポンスで、ラスサビ前の「ウォーオー」を何度も叫ぶ。そうして曲の一部になる。

 来たかったのにどうしても来られなかった人のために、と前置きした曲があった。待っていてください、だ。
 私は今、ミルハスに居る。「来られた」側の人間だ。けれど「来られなかった人」の中には、きっとコロナ禍に遠征を封じられていた頃の私がいる。
 あの頃の自分を、噛み締めた。

 本編最後の巣立ち。コルレスの最後でドラムの千葉さんが突然立ち上がったのには驚いた。普段、あまり大袈裟な動きをするタイプではないのだ。それほどの空間なのだ、と感じて嬉しくなる。なんというか、エモかった。
 コルレスといえば古谷さんも外せない。声を煽って、満面の笑みで客席をぐるりと指差す動きが映えた。ここはいつものライブハウスではない、ホールなのだ。会場の広さを、天井の高さを、全身で感じる。

 アンコールで出てきたのはリズム隊の2人だった。近野さんがなかなか出てこない‪、と思ったところで、突如、スピーカーから音楽が鳴り響く。――秋田名物ノーザンハピネッツ。
「どっちを向いて手拍子をしてるんだ!」
 見ると、近野さんがホール中央の通路を横切っている。やたらと目立つピンク色のユニフォーム。ハンドマイクで客席を駆け、花道で客とハイタッチしながらステージへ。まさか鴉で客降りが見られるとは思っていなかった。ついでにこの曲で合いの手を入れる夢が叶った。
 ぎらぎらのピンクライトにレーザービーム、最後は膝を折っての激唱。特盛りに派手な演出。格好良いのを通り越してもう面白かった。最高である。

 過去2回に比べて勢いのあるセトリだった。黒髪からの居場所なんて堪らない開幕だし、桜からの夢からの転落劇なんて引き摺り込まれるくらいに痺れた。最初から最後まで、時間を忘れて駆け抜けた。

 そしてしっかりと、秋田を踏みしめた。帰り道では、ゲストの栗林さんが歌声でも加わった。力強く誇り高く歌いあげたのは、秋田県民歌。秋田名物ノーザンハピネッツは、プロバスケットボールチームへの提供楽曲だ。それから、ふるさとを歌う北国の歌。
 生まれし場所、歌実りし場所。
 他のどこでもなく秋田の、ホールワンマンだった。

 終演。

 セットリストを写真に収めて、CDとグッズをバッグに詰めて、そうして、私にとっても3回目のホールワンマンは幕を閉じた。
 からっぽの頭が、満たされた。

 来年は、何度この地を踏むだろう。何度飛行機に乗るだろう。どれだけの旅路を、彼らと共にできるだろう。嬉しい知らせも、きっと聞くことができるはず。

 秋田発、伊丹行き。
 彼らの旅路がまだ続くように、私の旅路も、きっとまだまだ続くのである。



【おまけ】


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