【問われる動物福祉】猛暑で動物園のライオン3頭が亡くなった件(獣医師解説)
こんにちは!
世界中の動物たちの幸せと健康を願うホリスティック獣医Saraが、イギリスからお届けしております ʕ•ᴥ•ʔ
皆さんお久しぶりです!
日本とイギリスを行ったり来たりでバタバタしておりました。
しかも、日本の暑い夏を避けてイギリスに戻ったのに、イギリスもめちゃくちゃ暑く・・避暑地になっていない感じで(汗)
エルニーニョによって世界各地で真夏日や猛暑日が続いていますが、日本の多摩動物公園で3頭のライオンが1週間でたて続けに亡くなり、解剖の結果、脱水症状と多臓器不全を起こしていたことから、熱中症が死因である可能性が高いという報道がされていました。
今回の件については、動物園にいるライオンが熱中症とみられる症状により亡くなったということで、英国BBCニュースでも大きく報道されていました。
熱中症の多くは「予防可能」?
多摩動物公園によると、3歳の雌ライオンのムギちゃんは食欲不振になって、立ち上がることができなくなっていたとのことです。
他のライオンたちの一部(雄2頭と雌1頭)も体調が悪く立ち上がることが状態になっているため、点滴やお薬、ビタミン剤などによる治療が行われているとのことでしたが・・
本来、熱中症や熱による体調悪化は「予防が可能」です。
私は、以前から動物園や水族館における動物福祉(アニマル・ウェルフェア)の問題について、VoicyやStandfmでも取り上げてきたことがありました。
気候変動による猛暑・酷暑に対応できないのであれば、この機会に、日本の動物園で大型動物を飼育することの代償について考えてみて欲しいなと思うのです。
私が診察してきた熱中症症例のうち、助けられなかった犬で覚えているのは、目が血走って涙ぐんで苦しんでたということです。
そのこは、嘔吐・血便にまみれ、泣き叫びたくても声も出せないような状態でもがき苦しんで、痙攣も起こし亡くなっていきました・・
今回の件でも、熱中症になりやすい高齢ではなく、若い雌ライオンが亡くなったことには驚きを隠せません。
熱中症になった場合、すぐに意識が失われた場合はまだ良いのですが、意識を保ったまま症状を出すと、かなり苦しむことがあります(特に若い場合)。
熱中症になると、身体ではどのような変化が起きているのでしょうか?
今一度、確認していただくことで、改めて予防の意識を高めていただければ幸いです。

熱中症になった時に起こる変化(5段階)
以下の1-5段階に分けて考えることができます。
◆第1段階:体温上昇と脱水
高温の環境や運動で生産される熱が放熱を上回る
☛ 皮膚血管拡張などで対応しようとする。
(※犬猫・動物は発汗よりもパンティング(速い呼吸)やグルーミングによる気化熱がメイン)
体液と電解質が失われ、循環血液量が減少する。
◆第2段階:循環の破綻
脱水により心臓に戻る血液量が減り、皮膚へ血液を送って冷やす機能と、脳・内臓へ血液を送る機能が両立できなくなる。
深部体温が40℃に達すると、高体温と循環不全が重なって多臓器の機能障害が始まる。
◆第3段階:中枢神経障害
深部体温40℃超が続き、意識障害・けいれん・異常行動などの中枢神経症状が出てくる。
脳が上手く機能せず体温を調整できなくなり、体温がさらに上がる悪循環に入る。
◆第4段階:細胞傷害と全身性炎症
ミトコンドリアの熱損傷と過剰な酸化ストレスが細胞のアポトーシス・壊死を引き起こす。
細胞や腸管のバリアが壊れ、腸内細菌由来のエンドトキシンが血中へ漏れ出す。
炎症性サイトカインが大量放出し、炎症と凝固の亢進が進む。
☛ ココで冷却しても、止めるのが難しくなる
◆第5段階:多臓器不全と死亡
播種性血管内凝固(DIC)、横紋筋融解による急性腎障害、肝不全、脳浮腫が起こり、組織障害から多臓器不全を経て、最終的に死亡する。
熱中症を見つけた時、最初にやるべきことは?
皆さん、知っておいてください。
熱中症を見つけたら、最初にやるべきことは『冷却』です。
ー時間が勝負ですー
水を利用してください。
特に、第3段階までに始めることが重要です。

熱中症は想像以上の「苦痛」を与えるため、イギリスでは、飼育下で熱中症を起こしたら「動物虐待」に相当すると訴えられています。
◆飼育される動物たちは生活環境を選べない・・
日本では、動物の飼育の模範となるような動物園でライオンが熱中症疑いで3頭も亡くなり、他の動物も体調不良を起こしているというのは、非常に残念なことです。
動物福祉(アニマル・ウェルフェア)が考慮されず適切な飼育ができないのであれば、飼育するべきではないと思います。
資金が足りないのであれば、縮小することを検討してほしいです。
大型動物であるライオンだけの話ではありません。
他のゾウやトラ、ヒグマ、ホッキョクグマにも巨大なスペースが必要。
野生環境では見られない異常行動 「常同障害」も、動物園ではよく見られます。
◆動物園にいるライオンたちを見たことはありますか?
狭い場所でウロウロ同じ場所を行ったりきたりして、ずっと同じ行動を繰り返している。
それは野生環境では見られない行動なのです。
「常同障害」と呼ばれることがあります。
人の「強迫性障害(OCD)」に近い精神的な病と見なされ、自分の身体を噛んだり舐めすぎるなどの異常行動が見つかることも。
自分が動物の立場だったら?と想像してみてください。

毎日、狭い場所で食事と水だけ与えられ、運動不足で何も刺激のない生活を一生送るとしたらどうなるでしょうか?
動物園にいる動物たちは一生閉じ込められた・自由のない生活を強いられることで、肉体的・精神的な苦痛を感じている可能性が高いと、研究論文でも示されています(1-4.)。
改めて、動物福祉(アニマル・ウェルフェア)や動物園の在り方についても合わせて考えてみてもらえたら嬉しいです。
イギリスでは「動物園で動物を飼育する必要があるのか?」長年議論されています。
理由は、動物にとって適切な環境を保てないから。
イギリスの水族館にイルカやシャチはいません。
ゾウの飼育も段階的に廃止する方向へ検討されています。
(※移動式サーカスでトラ・ゾウ・ライオンなどに芸を強いることも禁止です)
今はデジタル技術が発達しているので、そのような技術を利用することで動物たちを間近で見ているかのように体験することができます。
日本も考えるべき時ではないでしょうか・・
動物たちや一緒に暮らしている愛犬愛猫たちのために、今回の情報が参考になれば幸いです。
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参考文献
Clubb, R., Mason, G. Captivity effects on wide-ranging carnivores. Nature 2002; 425, 473–474.
Clubb R, Rowcliffe M, et al. Compromised survivorship in zoo elephants. Science. 2008;322(5908):1649.
Serres-Corral P, Almagro V, et al. Noninvasive Assessment of Stress and Reproduction in Captive Lions (Panthera leo) Using Fecal Hormone Analysis. Zoo Biol. 2025;44(3):248-261.
Doyle C, Rally H, et al. Continuing challenges of elephant captivity: the captive environment, health issues, and welfare implications. PeerJ 2024; 12:e18161.
日頃から動物や犬猫の健康情報に関して、Voicyやスタエフ(Standfm)でお伝えしてます。お料理しながら、掃除しながら、通勤中など、ながら作業しながら学べる!音声から情報を確認できます☆彡
◆Voicy【第104回、動物園・水族館の動物は果たして幸せなのか?TED動画を日本語で解説(動物福祉:アニマル・ウェルフェア)気候変動に関連したお話】
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