五色湯の感動とレバニラの余韻〜サウナリーマン日記172話〜
目白の住宅街に立つ五色湯に、
3年ぶりに帰ってきた。
仕事と生活に追われる日々の中で、
ふとした瞬間に思い出すのは、
この銭湯の温もりと静けさである。
地下からくみ上げた井戸水をたたえた浴槽、心地よく整えられたサウナ、16℃の水風呂、
そして外気浴。
どれもが懐かしい記憶を呼び覚まし、
心身の疲れをゆっくりほどいていく。
そんな場所に再び足を運ぶとき、
心は自然と弾む。
五色湯は、宮造りの銭湯が持つ広々とした空間に負けないよう、脱衣所から浴場まで余裕のある造りで迎えてくれる。
高い天井と開放感のある構造は、忙しさで凝り固まった体にゆとりを与え、背筋を伸ばすだけで気持ちがすっと軽くなる。
湯船には地下水が使われており、その肌触りの柔らかさは上水道とはまったく違う 。
湯口から絶えず流れ落ちる井戸水に手を差し出すと、指先にぬめりがなく、ほんのりとした温かさが伝わる。この柔らかさが、五色湯が長く愛されてきた理由なのだろう。
サウナに入ると、薬草の香りが満ちていた。
100℃の熱気のなか、じんわりと体が温まり、鼻腔に広がるほのかな薬草の香りが疲れた心をほぐす。
汗が滴る頃合いを見計らって扉を開け、浴場中央の水風呂へ。
地下水を16℃に冷やした水風呂は、ペンキ絵と岩石に囲まれて自然の渓流のよう。
火照った体をすっと包み込み、思わず声が漏れるほど気持ちが良い。
そして外気浴へ。
五色湯には外気浴スペースが設けられており、椎名町の静かな風を感じながら深呼吸できる。
高いビル群の間を縫う風が肌をなで、冷えた体をじんわりと温め直してくれる。
この「サウナ→水風呂→外気浴」の基本を
おさえた黄金ルートが、私のととのい方だ。
湯上がりにふと建物の外に出ると、
向かいにある町中華「喜楽」が目に入る。

暖簾をくぐると、昔ながらのテーブルがあり、近所の常連客で賑わう。
私は迷わずB定食と呼ばれる
レバニラ定食を注文した。
目の前に運ばれてきた皿から湯気が上がり、レバーの香ばしい匂いとニラの強い香りが広がる。シャキシャキした野菜とやわらかいレバーの炒め具合に驚き、どこか懐かしい味付けに箸が止まらない 。レバーのコクとニラの苦みが絶妙に調和し、食後には心地よい満腹感と安心感が残った。

五色湯で心身を整え、喜楽でレバニラを頬張る――これが私なりの休日の定番だ。
五色湯の歴史は昭和27年(1952年)から続く 。かつてこの周辺には工場が立ち並び、働く人々にとって銭湯は必要不可欠な存在だった。
時代の流れと共に住宅街となり内風呂が普及しても、五色湯は変わらず地域に寄り添い続けてきた。令和4年にリニューアルオープンし、設備を一新しながらも、昔からの湯治文化や温かい接客を大切にしている。
浴槽やサウナに掲げられた説明文はシンプルで、スタッフの方々が「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と声をかけてくれる姿に心が温まる。
銭湯はただ汗を流す場所ではない。
疲れた心をそっと解放し、新しいエネルギーを取り戻す場所である。
五色湯に身をゆだね、薬草の香りに包まれ、井戸水の冷たさに震え、外気浴で風を感じる。そこには時間がゆっくりと流れ、日々の喧騒を忘れることができる。
そして湯上がりに訪れる喜楽のレバニラは、心身の充電を完璧に仕上げてくれる最高のご褒美だ。どちらも派手ではない。
しかし、凡人サラリーマンである私にとって、こうした小さな幸せこそが生きる力になる。
忙しい毎日に疲れたときは、五色湯と喜楽で深呼吸をしよう。また明日から少しだけ頑張れるはずだ。

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