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【14】第2章-第2話「またかよ!」  ファイルを開いた瞬間、頭が真っ白になった

みなさん、こんにちは。「タンポポはる」です。

かつての上司・Y部長から突然のSOSを受け、
「運行管理者が辞めてしまって現場が本当に困っている。
一度、見に来てほしい」

という言葉に押されるように、
私はまず状況を確認するため、
その会社を訪問することにしました。

久しぶりにワイシャツに袖を通し、
スラックスを履いて鏡の前に立つと、
現役時代の感覚が少しだけ蘇ってきました。

「あぁ、やっぱりこの感じが好きなんだな」

そんなことを思いながら車に乗り込みました。
とはいえ、緊張は消えません。

「どんな状況なんだろう」
「本当に自分にできるのだろうか」
そんなことを考えながら車を走らせます。

押し寄せる緊張感を少しでも和らげようと、
YouTubeのマイミュージックリストを開きました。
この日の気分は、大好きな明菜さん。

なじみ深い歌声とメロディが、
バクバクする心臓を少しだけ落ち着かせてくれます。

それでも目的地が近づくにつれ、
自然とハンドルを握る手に力が入っていました。

久しぶりの再会

「あ、タンポポはる! よく来てくれた!」

事務所の入り口で迎えてくれたY部長は、
最後に会った頃より少し痩せて見えました。
それでも再会の嬉しさは変わりません。

お互いに笑顔になり、力強く握手を交わしました。

「さあ、入ってくれ」

促されてオフィスへ足を踏み入れます。

そこには若い社員さんたちがいて、
一斉に明るく挨拶をしてくれました。

想像していた殺伐とした雰囲気ではありません。
活気もあります。

正直、

「これなら何とかなるかもしれないな」

そんなことさえ思っていました。

そう。

あのファイルを見るまでは――。

頭が真っ白になった

まず私はY部長にお願いしました。

「運行管理関係の帳票類を全部見せていただけますか?」
運送業にとって帳票類は会社の命綱です。

現在の状況を把握するためにも、まずは書類の確認が必要でした。

「これなんだけど……」

Y部長が持ってきた数冊のファイルを開いた瞬間。

私は言葉を失いました。

日付はバラバラ。
書類の分類もされていない。
何が最新なのかも分からない。

さらに、本来保管されていなければならない
重要書類が見当たりません。

ページをめくっても、めくっても出てこないのです。

「あの……部長。他に書類はないんですか?」

「いや、今あるのはそれだけなんだ……」

その瞬間、頭の中がスーッと真っ白になりました。

薄氷の上で動いていた現場


話を聞くと、現在は運行管理の資格を持つ社長が
最低限の業務だけを回しているとのことでした。

しかし客観的に見れば、かなり危うい状態です。
まさに薄氷の上を歩いているような状況でした。

私はファイルを見つめながら、ある記憶を思い出していました。

「またかよ!!!」


(……待てよ)
(この感覚、前にも味わったぞ)

それは以前の会社でY部長と一緒に
働き始めた頃のことでした。

当時も、

「準備は進めてあるから大丈夫」

と言われていたのに、

実際に行ってみると帳票類はほぼゼロ。

完全な手探り状態からのスタートでした。

そして今。

目の前には、あの時とよく似た光景があります。

私は心の中で思わず叫びました。

「またかよ!!!」

怒りというより、もはや笑うしかありません。

どうやらY部長は、ゼロから立ち上げる役として
私を思い出してくれるようです。

「できそうですか?」


その時、社長が戻って来られました。

挨拶を済ませると、さっそく質問が飛んできます。

「どうですか? できそうですか?」

期待のこもった視線でした。

しかし私は即答できませんでした。

今見たばかりの状況で、

「大丈夫です!」

などと言えるはずがありません。

「まずは全体を整理してみないと、何とも言えません」

私は正直にそう答えました。

そして、
「まずは整理整頓をして、
現状を把握できる環境を作ってください」

とお願いし、その日は会社を後にしました。

帰り道


帰りの車の中。

行き道で聴いていた明菜さんの曲も、
この時ばかりはほとんど耳に入ってきませんでした。

頭の中では、先ほど見た
ファイルの光景が何度も繰り返されます。

正直な感想は一つだけでした。

「とんでもない現場を見てしまったな……」

運行管理者が辞めた。
その言葉だけを聞いて来た私でしたが、
実際には想像していた以上の状況でした。

そして、この時の私はまだ知りませんでした。

本当に大変だったのは、ここからだったのです。

(第3話へつづく)

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