【第8回】シャンプーや頭皮ケアで、髪は増えるのか?
消防設備屋の社長が、薄毛の原因を一から勉強してみた。
最初に結論。「頭皮にいい」と「髪が増える」は、同じではありません。
今回、最初に覚えておきたいのは、これです。
シャンプーやヘアケアは、髪と頭皮を清潔に保ち、傷みを減らすために役立ちます。でも、それだけで薄毛の原因が解決するとは限りません。
洗う。
もむ。
いい成分を塗る。
どれも、何となく髪によさそうですよね。
ただ、「すっきりした」「手触りがよくなった」という実感と、「新しく髪が増えた」という変化は別です。
前回は、食事や睡眠を整えることと、発毛の効果を分けて考えました。
今回は、そのヘアケア版です。
毎日やることだからこそ、頑張る方向を間違えないようにしたいですね。
シャンプーの仕事は、まず洗うこと
シャンプーの基本的な役割は、頭皮や髪の汚れ、余分な皮脂、整髪料などを落とすことです。
頭皮を清潔に保つためには大切です。
でも、「汚れを落とす力が強いほど、髪もよく生える」という話ではありません。
第2回で勉強したAGAには、遺伝やホルモンへの毛包の反応が関係します。
毛包は、毛を作る器官でしたね。
そこに起きている変化を、表面の汚れを落とすだけで解決できるとは言えません。
「頭皮環境を整える」という言葉も、よく見かけます。
悪い言葉ではないんですが、それが、フケを減らすことなのか、乾燥を防ぐことなのか、発毛を指しているのか。
何に対する効果なのかを、一段具体的に見たいところです。
皮脂は、全部落とした方がいいの?
皮脂というと、何となく悪者にされがちですよね。
ベタつくし、においも気になる。
だから「毛穴の脂を根こそぎ落とす」と言われると、すごく仕事をしてくれそうに聞こえます。
でも、皮脂はもともと皮膚にあるものです。ゼロにすることを目標にする必要はありません。
余分な皮脂や汚れを落とすことと、繰り返し強く洗って刺激を与えることは違います。
また、脂っぽい頭皮と薄毛が一緒にあっても、「脂が毛穴をふさいだから抜けた」とは決められません。
第5回で勉強した脂漏性皮膚炎も、皮脂だけでなく、皮膚にいる菌や皮膚の反応などが関わります。
皮脂を落とせば、薄毛の原因も全部流せる。そんな単純な仕組みではないんですね。
力を入れた分だけ成果が出るなら分かりやすいんですが、頭皮には、その理屈は通用しません。
毎日洗う? 洗わない方が髪は残る?
洗うと抜け毛が見えるので、「洗わない方がいいのかな」と考える人もいると思います。
ただ、洗髪のときには、すでに抜ける段階にある毛や、髪の間にとどまっていた毛が、まとまって見つかることがあります。
そこで見えた本数が、そのまま「シャンプーに抜かれた本数」ではありません。
一方、乱暴にこすったり、絡まった髪を強く引っ張ったりすれば、傷みや切れ毛につながります。
洗うこと自体と、洗い方の負担は分けたいですね。
頻度も、全員が同じでなくて構いません。
皮脂の多さ、汗や汚れ、髪質、乾燥の程度によって違います。
「絶対に毎日」
「絶対に数日おき」
というルールより、自分の状態に合わせることが大切です。頭皮の病気で治療中なら、医師からの洗い方の指示を優先します。
値段が高いほど、髪にいい?
ここも、気になるところですよね。
ただ、シャンプーの値段だけで、発毛効果や自分の皮膚との相性は判断できません。
「天然」「植物由来」と書いてあっても、刺激やかぶれが起きない保証にはなりません。
また、清涼感で頭がスーッとしたからといって、毛が増える証拠でもありません。
気持ちよさは、気持ちよさとして楽しめばいい。でも、治療効果とは別なんですね。
使うたびにかゆい、赤くなる、しみる。
そんなときに「高かったから、もう少し使おう」と我慢する必要はありません。使用をやめ、症状が続くなら相談してください。
値札より、自分の頭皮の反応を見たいところです。
フケ用シャンプーは、意味がないの?
ここまで読むと、「じゃあ、シャンプーなんて何でも同じ?」と思うかもしれません。
そういうわけでもありません。
フケや脂漏性皮膚炎などでは、原因や症状に合った成分を含むシャンプーが、ケアや治療の一部として役立つ場合があります。
ただし、その目的は、フケや炎症などを抑えることです。
それを、そのまま「AGAにも発毛効果がある」と広げてはいけないんですね。
何を改善するために使うのか。
この目的がはっきりしていれば、シャンプーにも期待する役割が見えてきます。
強い赤みや痛み、膿、脱毛の広がりがあるときは、商品を次々に試すより、先に皮膚科で確認したいところです。
帽子をかぶると、薄毛になるの?
「蒸れるから髪によくない」
そんな話も聞きますよね。
でも、普通に帽子をかぶることを、それだけでAGAの原因とする十分な根拠はありません。
気をつけたいのは、帽子という名前より、実際にどんな負担がかかっているかです。
強くこすれる。
髪が引っ張られる。
皮膚がかぶれる。
汗や汚れで不快な状態が続く。
そうした問題は見直したい。ただ、蒸れたことと、毛包が失われることを、そのまま結びつけないようにします。
サイズや清潔さを確認し、痛みや擦れがあれば調整する。
仕事で必要なヘルメットは、薄毛が心配だからと外すものではありません。必要な保護を保ちながら、装着状態や皮膚のトラブルを確認する話ですね。
カラーやパーマで、毛根が全部傷む?
カラーやパーマ、ブリーチは、髪を傷めたり、頭皮に刺激やかぶれを起こしたりする場合があります。
ただし、毛の表面が傷むことと、毛包が壊れることは同じではありません。
髪が途中で切れてボリュームが減ったのか。
頭皮に炎症が起きているのか。
別の原因で抜けているのか。
ここでも、分けて考えます。
短期間に強い施術を重ねたり、高温のヘアアイロンを繰り返し使ったりすれば、髪への負担は増えます。
施術中に強くしみる、痛むときは、我慢せず伝えること。以前にかぶれた製品を、自己判断で再使用することも避けたいところです。
おしゃれを全部やめるという話ではありません。
髪や皮膚から出ている変化を無視しない、ということですね。
頭皮マッサージで、髪は生えるの?
気持ちよさそうですよね。では、発毛についてはどうでしょうか。
頭皮マッサージと毛の太さなどを調べた小規模な研究はあります。
ただ、薄毛の人に広く確かな発毛効果があると結論づけるには、根拠が十分ではありません。
研究が一つあることと、誰にでも勧められる効果が確かめられたことは違います。
「血行がよくなるから生える」という説明も、それだけでは、実際に髪が増えることの証明にはなりません。
リラックスのために気持ちよい範囲で触れることと、薄毛の治療として効果を期待することは分けて考えたいですね。
痛いほど押す、爪を立てる、赤くなるまでこする。
それを頑張った証拠にする必要はありません。炎症や傷がある頭皮に、さらに刺激を足すことも避けます。
毎日のケアで、大切にしたいこと
特別な道具を増やす前に、基本を整理します。
・爪を立てず、優しく洗う
・髪を強くこすったり、無理に引っ張ったりしない
・タオルで乱暴に擦らず、水分を吸わせる
・ドライヤーなどの熱を、同じ場所に当て続けない
・刺激やかぶれが出る製品を、我慢して使わない
これらは主に、髪や頭皮への負担を減らすための工夫です。
「この方法で洗えば、必ず生える」という手順ではありません。
ケアを丁寧にしても薄毛が進むなら、やり方が下手なのだと自分を責めず、原因を確認してください。
今回、私が感じたこと
髪を増やしたいと思うと、洗う力も、もむ力も、買う商品の数も増えそうです。
でも、頑張った量と結果が、そのまま比例するわけではないんですね。
むしろ、刺激を減らした方がいいこともある。
それと、「さらさらになった」「ふんわり見える」「かゆみが減った」。こういう変化にも、それぞれ意味があります。
発毛しなければ全部無駄、ということではありません。
ただ、手触りがよくなった話を、髪の本数が増えた話にすり替えない。
何がよくなったのかを、きちんと分ける。それだけでも、商品との付き合い方が変わりそうです。
今日覚えるのは、これだけ。
髪と頭皮を守るケアと、薄毛の原因に対する治療は、役割を分けて考えよう。
次回予告
【第9回】薄毛はいつ皮膚科へ? 治療や育毛剤はどう違うのか?
次回は、受診の目安と、診察で確認することを整理します。
「育毛剤と発毛剤は同じ?」
「男性の薬を、女性が使ってもいい?」
「サプリは治療になる?」
名前の印象だけで選ばないために、違いと注意点を勉強します。
補足・参考資料
頭皮の病気がある場合は、一般的なヘアケアだけで対処できないことがあります。マッサージなどで受診を先延ばしにしないでください。
・米国皮膚科学会「健康な髪のためのケア」「髪を傷めないために」「髪を引っ張る髪型と脱毛」
・英国皮膚科学会「脂漏性皮膚炎」
・頭皮マッサージと毛の太さに関する小規模研究(2016年)
運営 有限会社水越設備
https://www.sp-mizukoshi.jp/
