見出し画像

「国宝」の原作を読んで早川徳次に会おう〜歌舞伎界の壮大な群像劇をAudibleでも

映画「国宝」については、先日書いたが、その中で早川徳次について言及した。子供時代の喜久雄が、長崎の宴席で「関扉」を演じるが、相手役が徳次である。映画鑑賞後、妻に確認すると、原作では重要な人物とのこと。

私は吉田修一の小説「国宝」(朝日文庫)については、2018年の出版後すぐに読んだ。それ故、内容は朧げにしか覚えていない。一方の妻は、今年になってAmazon Audible版を聴いていた。語り手が、尾上菊之助(現・八代目菊五郎)で、「凄く良いから聴くべき」と言われていたが、映画を観てからと思っていた。

映画は既述の通り素晴らしかったので、原作を再読しようと、このAudible版を聴いた。

前提として、原作と映画は別物、どちらが良いとか言うものではない。その上で、小説「国宝」は、喜久雄を中心に置いた、壮大な群像劇として私はとらえた。

人間国宝となるのは、もちろん個人である。しかし、その裏側には数えきれない人数の人々がそれぞれの役を演じている。そして、彼らの人生も、喜久雄や俊介のそれと同じくらい重みがある。「国宝」という存在は、そうした彼らの上に乗っているのだ。

その一人が、早川徳次である。少年時代から喜久雄に寄り添う、歌舞伎の黒衣のような存在、映画が気に入った方は、原作にあたって、是非徳次に会ってほしい。

そして本書を読むと、徳次を始めとして、歌舞伎の世界の多くの住人の人生を実感することになるだろう。また、映画とは違った登場人物の顔を楽しむことができる。

Audible版は、オーディオ・ブック作品としても一流のものである。その理由の一つが、原作の文体にある。書籍を読んだ時には、あまり注意しなかったのだが、講談調の文体で書かれている。それ故、読み聞かせるのに適しており、聴いたものがすんなり頭に入ってくる。

そして、語り手が菊之助。歌舞伎のシーンは、プロの口調で演じてくれるため、素晴らしい臨場感である。

映画のヒットにより、歌舞伎座を訪れる人が増えているらしい。本書は、歌舞伎の入門書としても一読の価値がある。映画は観ないという方に対しても、お勧めしたい一冊である。

一言つぶやきたい。小説のクライマックス、俊介の妻、春江(映画では高畑充希)の思いが綴られる。これは泣ける


いいなと思ったら応援しよう!