2003年はバトルまみれの大晦日だった〜細田昌志著「格闘技が紅白に勝った日」
昨日、第20回NHK紅白歌合戦の再放送について書いたが、たまたま読んでいた本が、細田昌志の「格闘技が紅白に勝った日〜2003年大晦日興行戦争の記録」(講談社)だった。
これまで細田昌志は、「沢村忠に真空を飛ばせた男」(2020年新潮社)、昨年「力道山夫人」(小学館)と、格闘技の世界に生きた人々を生き生きと描いてきた。この二作を楽しんだ私は、当然にして本書を手に取った。
1996年から2003年まで、私はロンドンに駐在。その間にようやくインターネットが普及した時代で、自宅のテレビで見るのは現地の放送のみ。日本のニュースは、日経新聞程度で、いわゆる“流行りもの“の情報はあまり入ってこない。
したがって、本書の背景となる格闘技ブームを知らない。ボブ・サップなどの名前は聞いたことあったが、今回本書を読み進む際に、初めてその対戦姿をYouTubeで見た。
その頂点とも言える2003年の大晦日は日本にいたはずだが、“興行戦争“など感知しなかった。多分、大阪の実家に帰省していたと思うが、格闘技などにチャンネルを合わせようとしても、妻や母からブーイングをくらっただろう。したがって、私は本書を読みながら、抜け落ちた歴史を埋めていった。
本書のクライマックスは、瞬間視聴率でTBSの「K1 Premium 2003 Dynamite!!」が、NHK紅白歌合戦を超えた、テレビ史上に残る出来事である。本書はそこに至る道のり、暗躍する人々、格闘家たちを活写する。
格闘技の世界は、なにかダークなものが潜んでいるように感じる。リングの上以上に、その舞台裏は激しいバトルであり、ここに視聴率を求めるテレビ局という存在が絡んでくる。彼らのラスボスは、NHK紅白歌合戦なのだが、そこに挑むまでには、互いの戦いに勝たなければならない。
登場する局は、TBS・日本テレビ・フジテレビ。対峙しつつ協力することもある団体は、K1、PRIDE、プロレス界、引退したばかりのアントニオ猪木はその象徴である。格闘家は、ボブ・サップ、曙、ミルコ・クロコップ、吉田秀彦、ホイス・グレイシー、ヒョードル、そしてマイク・タイソンなどなど。
このバトルが面白くならないはずはない。そして、激しすぎる“戦争“の勝者は、本当の勝者なのか。格闘技とは一体何なのか? 多くの人が、今も熱狂する理由はどこにあるのか?
現在話題になっている“テレビ局の闇“も、ほんの少し垣間見られる。
前二作に続いて労作・表彰ものの「格闘技が紅白に勝った日」である

