高校生が広島で声を上げた!?署名活動のリアル
Hope Press ひろしま高校生ジャーナリスト
記者: Konatsu
導入
本記事では、国連に届ける核兵器廃絶を求める署名を集める高校生の活動を取材しました。「ビリョクだけどムリョクじゃない」というスローガンのもと全国各地の街頭で、高校生自らが活動をしています。
今回は地元である広島県で行われている「高校生1万人署名活動」に実際に参加した経験とともに、高校生平和大使の方へのインタビューや活動を支える大人の声も紹介しながら若者が核廃絶に向けてどのような思いで行動しているのかを伝えます。
核兵器をめぐる現場
現在世界を取り巻く核兵器の情勢は緊張が続いています。広島県の「へいわ創造機構ひろしま」によると、2025年1月時点で世界の核兵器保有数は12,241で、2024年1月時点の12,405と比較して164発減少しています。

一方で、核兵器を実際に運用可能な状態で保有する国は9カ国あります。
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は2025年6月、ロシア、米国、中国、フランス、英国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国が配備し、いつでも使用可能な「現役核弾頭」が計9615発に達するとの推計を公表しました。これは前年から32発増加しています。
取材のきっかけ
核兵器をめぐっては、廃絶を求める声がある一方で、安全保障の観点などから抑止力の必要性を指摘する意見もあり、国際社会では議論が続いています。
こうした状況の中で、高校生を主体とした核兵器廃絶に向けた署名活動が行われています。世界では核の脅威が高まる中、被爆から81年を迎える今、このまま原爆が使われていない今の社会の尊さや、これからも使われない未来を改めて考える必要があると感じました。
私は今回、この活動に参加するとともに、高校生平和大使や活動を支える大人への取材を通して、「なぜ若者たちはこの問題に向き合い、行動しているのか」、そしてどのような思いで行動しているのかを探ろうと考えました。
署名活動の現場で私が感じたこと


署名活動に参加するのは今回で3度目でした。初めのころは人に声をかけること自体にかなり勇気が必要で、回を重ねるうちに次第に慣れてきたものの、それでも当時は強く緊張したのを覚えています。
原爆資料館や平和記念資料館を訪れる人の多くは平和を願っています。しかし、その実現の方法は一様ではなく、必ずしもすべての人が核廃絶こそが平和への道だと考えているわけではありません。そうした声に触れる中で、平和を実現するために何が必要なのかを、改めて考えさせられました。
一方で、署名用紙に名前が書き込まれるたびに、活動を後押ししてもらっているように感じ、自然と励まされました。今回特に印象に残っているのは、アメリカから訪れ、署名をしてくださった方の言葉です。「アメリカ人として知っておかなければならないと感じたから、広島を選びました」と語っていました。日本国内にとどまらず、海外からの来訪者が多いことにも、大きな希望を感じました。

署名活動の後には、高校生の参加者や活動を支えてくださっている大人の方々と、平和について話し合う時間もありました。なかでも印象的だったのは、広島の戦後復興の歩みについての議論です。広島県がどのように現在の姿へと再生してきたのか、戦争を経験していない若い世代がなぜこの地で活動を続けているのか。戦後の日本の統治や人々の団結、路面電車の早期再開など、多角的な視点から意見が交わされ、その一つ一つが強く心に残りました。
こうした現場の状況を踏まえ、私は今回、実際に活動を担う高校生平和大使への取材を行いました。
取材・インタビューの内容
※本記事の取材は2026年1月25日に実施。
第28代広島県高校生平和大使の下田梨央さんを取材しました。
Q1.この署名活動に参加しようと思った理由と、活動前の気持ちはどうでしたか?


この署名活動を始めたのは高校1年生の4月からです。学校で世界史の授業を受けたり、リアルタイムで起きているウクライナの紛争を目の当たりにする中で、「自分にもできることはないかな」と考えるようになりました。調べていくうちに、たどり着いたのがこの署名活動でした。
私の2つ上の先輩がすでにこの活動をしていて、話を聞きに行ったんです。
そこで、この活動のモットーである「微力だけど、無力じゃない」という言葉を教えてもらいました。
どういう意思で頑張って活動してるかというのを聞いて、高校生なのに自分から平和のためにアクションを起こしてる姿がすごくかっこいいなと思って、「私もやってみたい」と思って、参加を決めました。
Q2.活動中に印象に残ったことや、参加して気づいたことは何ですか?
最初は正直、「平和活動」と聞いて少し怖いイメージがあって、すごくドキドキしながら参加しました。でも実際はそんなことはなくて、みんながそれぞれ平和について考えて、「自分にできることならやってみたい」と話しているのを聞いて、想像していたよりずっと素敵な活動だなと思いました。
実際に街を歩いている人に自分から声をかけるのはすごく勇気がいることだと思っていましたが、県外の方や海外の方など、本当にさまざまな人が応援してくれて、「頑張ってね」と声をかけてもらえたのが強く印象に残っています。SNSなどいろんな活動の形はありますが、署名を直接お願いする対面の活動もやっぱり大事だなと、そのとき強く感じました。
Q3.署名活動を通じて、同じ高校生に向けてのメッセージはありますか?
これまで、広島に生まれながらも、「平和のためにできることはあるだろうか。できることがあったらやりたい」と漠然と思いながら、なかなか一歩踏み出せなかったり、何をしたらよいのかわからなかったりすることがありました。
けれど、こうした活動があると知れば、自分は何をしたいのかが少しずつ明確になっていきます。そうやって、活動のことをより多くの人に伝え、署名に限らず、行動の一歩につながるよう発信していきたいと思っています。
Q4. 署名活動を通じて、社会に伝えたいことはありますか?

高校生の力は限られていて、お金や政治的な権力もありません。でも、署名は思いが数となり、形になります。そしてこれらを平和大使が国連に届けることができる。この署名活動にはすごく大きな意味と力があると思っています。
一人ひとりの力は微力かもしれませんが、こうして活動を積み重ね、世界に大きなうねりを起こすような活動にしていきたいです。
続いて、この活動を支えてくださっている「高校生平和大使派遣委員会」の共同代表である小早川健さんにお話を伺いました。
Q1. この署名活動を高校生に任せる理由はなんですか?
核兵器の拡散が進み、パキスタンによる核実験が行われたことを受けて、大人たちの間で「こういう世の中だからこそ、もっと核兵器廃絶を訴える必要がある」という話になりました。その中で、自分たちよりも若い世代に気づいてもらいたいという思いから、高校生を国連に派遣しようという動きが始まったんです。
これが高校生平和大使の始まりです。
高校生に活躍の場を広げたい、若い世代にも核兵器廃絶を訴えてほしい、という思いで続けてきました。
さらに、高校生平和大使だけではなく、署名活動に集まった高校生たちが「自分たちにも何かできないか」と考え、高校生1万人署名活動が始まりました。この活動は、高校生が始めた活動で、高校生が中心となって進めてきたもので、もう20年以上続いています。
Q2. この活動を通して、高校生にはどんなことを学んでほしいと思っていますか?
平和の思いをしっかり持って、それを自分の言葉で伝えてほしいと思います。
署名活動では、いろいろな意見を持つ人に出会うことがあると思いますが、そうした経験を通じて、自分の考えをしっかりと持つことが大切だと思っています。
核兵器廃絶運動を広めるということが、きっと最終的には核兵器のない世界に繋がると信じています。だからこそ、自分たちの思いを強く訴えてほしいです。
私自身、中学生の時に原爆資料館に行き、「こんなことは許されない」と感じました。活動している高校生たちも、きっと同じような思いを持って活動しているはずです。そうした気持ちを大事にしながら、他の人の意見にも耳を傾けて、自分の意見も確立していってほしいですね。
Q3. 高校生の活動を見ていて印象に残ったことはありますか?
本当にたくさんあります。みんなよく頑張っていると感じます。
特に印象に残っているのは、署名活動の際に涙を流していた高校生の話です。
「どうしたの」と聞くと、「『高校生がこんなことして何になるんだ、高校生は勉強しなさい』」と言われて、悲しくなったのではなく、言い返せなかった自分が情けなくて泣いた」と話してくれました。その高校生は翌年、平和大使になりました。さまざまな困難に直面しながらも、それを受けて、高校生はみんな強くなっていくのだと感じました。
また、日頃から「署名活動を楽しい」と言ってくれる人もいて、そうした姿を見ると、続けてきてよかったと思います。
お二方とも、急な取材にもかかわらずご協力いただきました。なお、掲載にあたっては、発言の趣旨を変えない範囲で文体を整えました。
まとめ
広島で活動する高校生、そしてそれを支える方々の思いから、広島という地で活動することの意義を改めて感じました。被爆から80年を迎え、戦争や原爆の記憶を被爆者から直接聞く機会が限られてきています。だからこそ、私たちの世代が意識を高め、次世代に伝え続けていくことが求められています。
平和はただ願うだけでは実現しません。自ら行動することこそが、平和の形を現実に近づける第一歩です。高校生平和大使や支援者の方々の切実な想いと真摯な取り組みと揺るぎない希望が胸に深く響きました。
記者あとがき
取材を通して、高校生平和大使や支援者の方々が平和について日常的に話し合い、意見の異なる相手とも対話を重ねながら行動している姿から、自分のできる範囲で行動することの重要性を改めて感じました。こうした一歩一歩の積み重ねが、平和を形作ることにつながっていくのだと思います。
出典
・広島県・へいわ創造機構ひろしま(HOPe)「世界の核兵器保有数」2025年1月
・長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)『世界の核弾頭データ』2025年
https://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/topics/48367?doing_wp_cron=1770374485.6853830814361572265625
