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【9割が逆効果】我慢を捨てろ|壊れる介護職から続けられるプロへ

すり減った心では、守れないものがある 

「利用者様の尊厳を大切にしましょう」

介護の現場で働く僕たちは、この言葉を何度も聞いてきました。

  • 相手の気持ちを尊重する

  • 否定せずに受け止める

  • 忙しいときでも、できるだけ穏やかに声をかける

その大切さを、誰よりも分かっているのは現場のスタッフです。
だからこそ、無理をしてしまいます。

  • 人が足りなければ、自分が動く

  • 休憩に入れなくても、利用者様を優先する

  • 苦しくても、「大丈夫です」と答える

でも、利用者様の尊厳を守ろうとしているあなた自身の尊厳は、守られているでしょうか。

心がすり減り、感情を押し殺し、助けを求める力さえ残っていない状態で、誰かを大切にし続けるのは簡単ではありません。

利用者様を大切にするためにも、まず働く人自身が大切にされる必要があります。

この記事では、介護現場で見落とされがちな「職員自身の尊厳」について、私自身の経験をもとに考えていきます。

「大丈夫です」という言葉を、僕は信じてしまった

笑顔の奥にあった「助けて」に、僕は気づけなかった。

その職員は、責任感が強く、利用者様にも同僚にも自分から声をかける人でした。

忙しい場面でも周囲を気遣い、その人がいるだけで職場の空気が少し明るくなる。

そんな存在でした。

しかし、ある頃から少しずつ笑顔が減っていきました。
業務に必要な会話はできていました。
ただ、以前のような雑談はほとんどありません。

声をかけても短い返事で終わり、表情からも明るさが失われていくように感じました。

僕は、その変化に気づいていました。

「疲れていない?」
「少し休んだほうがいいんじゃない?」

そう尋ねても、返ってくるのは決まってこの言葉でした。

「大丈夫です」

そして僕は、その一言に安心してしまったのです。

忙しい時期だから仕方がない。
少し落ち着けば、また元に戻るだろう。

本人が大丈夫と言っているのだから、深く聞きすぎないほうがいいのかもしれない。

今振り返れば、それは本人を信じたというより、僕自身が安心するために受け入れていた言葉だったのだと思います。

「大丈夫です」の奥に、言えない苦しさがある

『大丈夫』の奥に、声にならないSOSがある。

責任感が強い人ほど、自分から「助けてください」とは言えないことがあります。

・自分が休めば、ほかの職員の負担が増えてしまう。
・弱いと思われたくない。
・利用者様に迷惑をかけたくない。

そうした思いを抱えた末に、苦しさを隠す言葉として「大丈夫です」を選んでしまうのです。

燃え尽きは、ある日突然始まるわけではありません。

笑顔が減る。
会話が少なくなる。
返事が短くなる。
以前なら楽しんでいたことにも、反応が薄くなる。

一つひとつは、小さな変化に見えるかもしれません。
しかし、その人の「いつもの姿」と比べれば、心が発している大切なサインであることがあります。

僕は、本人が限界を言葉にするまで待ってしまいました。

でも、本当に必要だったのは、訴えを待つことではなかったのです。

「以前より会話が減ったように感じるけれど、何か負担になっていることはない?」

そんなふうに、見えた変化を具体的に伝える。
そして、安心して話せる時間をつくる。

その一歩が必要だったのだと思います。

介護職は、感情まで使って働いている

介護は身体だけの仕事ではない。
心を使いながら支えている。

介護の仕事は、食事、排泄、入浴、移動を支援するだけではありません。

  • 不安を抱える利用者様には、安心できる表情で接する

  • 強い言葉を向けられても、感情をそのまま返さず、落ち着いて受け止める

  • ご家族の心配や不満に耳を傾けながら、自分の疲れや焦りは表に出さない

介護職は、身体だけでなく、自分の感情まで整えながら働いています。
これが、感情労働です。

  • 本当は疲れている。

  • 余裕がない。

  • 少し一人になりたい。

そう感じていても、利用者様の前では笑顔をつくり、穏やかな声で話しかける。

それは、専門職として大切な力です。

ただ、感情を抑える日が続き、その苦しさを誰にも話せなくなると、心は少しずつすり減っていきます。

笑えなくなったのは、やさしさがなくなったからではありません。
冷たくなったわけでも、介護職に向いていないわけでもない。

長い間、感情を使い続けた結果、心を守る力が残っていなかったのかもしれません。

壊れるまで耐えることは、プロ意識ではない

限界まで我慢することは、美徳ではなく危険信号かもしれない。

介護の現場では、我慢できる人ほど「責任感がある」と見られることがあります。

  • 急な欠勤が出れば、自分の予定を変える

  • 休憩に入れなくても、仕事を続ける

  • 体調が悪くても、「人がいないから」と出勤する

誰かを支えようとする姿勢は、確かに尊いものです。

しかし、壊れるまで耐えることを、プロ意識と呼んではいけません。

自己犠牲とは、自分の限界を無視して、周囲の期待に応え続けることです。

一方でプロ意識とは、自分の状態を冷静に把握し、安全で質の高いケアを続けるために、必要な支援を求めることだと思います。

「今は一人では対応できません」
「少し休憩が必要です」
「この業務量では、安全に行えません」

そう伝えることは、甘えでも無責任でもありません。
むしろ、自分の状態を隠したまま無理を続ければ、判断力や注意力は少しずつ落ちていきます。

その影響は、利用者様の安全にもつながりかねません。

プロとは、壊れない人ではありません。
壊れる前に、自分の状態を伝えられる人です。

「困ったら相談して」だけでは守れない

支える側に必要なのは、言葉より先に気づく力と仕組み。

ただし、助けを求める責任を、本人だけに押しつけてはいけません。

「何かあったら相談してください」

この言葉だけでは、責任感の強い人ほど相談できないことがあります。

  • 休憩は取れているのか

  • 残業や休日出勤が、一部の職員に偏っていないか

  • 同じ職員ばかりが、難しい対応を抱えていないか

  • 表情や会話に、以前との違いはないか

管理者やリーダーは、本人からの申告を待つだけでなく、具体的な事実を見ていく必要があります。

人員不足や業務の偏りは、私たちの現場でも今なお続く課題です。

すべてをすぐに変えることはできません。

それでも、「誰かが我慢すれば現場が回る」という状態を、当たり前にしてはいけないはずです。

職員の尊厳を守るとは、やさしい言葉をかけることだけではありません。
無理をしなくても働き続けられる仕組みを、職場として整えていくことなのだと思います。


▶ 前回の記事はこちら

利用者様の尊厳を守る取り組みを、現場スタッフ一人ひとりの我慢や努力だけに背負わせてはいけません。

前回の記事では、身体拘束ゼロを単なる技術やルールとして捉えるのではなく、迷いや不安をチームで支え、別の方法を探し続けるために必要な「組織の覚悟」について書きました。

利用者様の尊厳と、そこで働く職員の尊厳。

この2つは、決して別々の問題ではありません。

今回の記事とあわせて読むことで、誰かの自己犠牲に頼らず、
尊厳あるケアを続けるために必要な視点が、より深く見えてくるはずです。

今日も現場を支えているあなたへ

見えないところで踏ん張っているあなたの努力は、確かに誰かを支えている。

人が足りない中でも、利用者様の前では笑顔を絶やさない。

事故が起きないよう周囲に気を配り、ご家族の不安にも丁寧に向き合う。

今日も現場を支えている皆さんの努力は、決して当たり前ではありません。

  • 誰にも見られていないところで飲み込んだ言葉

  • 休憩を後回しにして動いた時間

その一つひとつが、利用者様の安心につながっています。

本当に、毎日お疲れさまです。

だからこそ、自分の苦しさまで「仕事だから」と飲み込まないでください。

自分を守ることは、利用者様を後回しにすることではありません。

明日も相手の話に耳を傾けるために。
穏やかに声をかけるために。
安全なケアを続けるために。

今日の自分を守ることも、大切なケアの一部なのだと思います。

今日、誰か一人の変化に目を向けてください

その小さな変化に気づくことが、誰かの心を守る第一歩になる。

この記事を読み終えたら、職場にいる誰か一人の顔を思い浮かべてみてください。

以前より、笑顔が減っていないでしょうか。
会話が少なくなっていないでしょうか。
「大丈夫です」という言葉が増えていないでしょうか。

気になる変化があれば、「大丈夫?」だけで終わらせず、
見えた事実を言葉にして伝えてみてください。

「最近、前より会話が少なくなっているように感じるけれど、何か負担になっていることはない?」

その一言で、心が少しほどける人がいるかもしれません。

そして、あなた自身が苦しいときは、今日中に一人だけでも構いません。
信頼できる人へ、今の状態を伝えてください。

利用者様の尊厳を守りたいと願うなら、自分自身の尊厳も同じように大切にする。

すり減った心では、守れないものがあります。


なぜ、僕がこの記事を書いたのか

僕は介護の現場で20年以上、人の人生と、その支援を担う職員の姿を見てきました。

うまく支えられた経験だけではありません。
気づけなかったこと、踏み込めなかったこと、後悔もあります。

その経験を言葉に変え、同じように悩む誰かへ届けたい。
僕が介護と文章に向き合う理由を、自己紹介記事にまとめています。

▶ 僕の経歴と、発信を続ける理由はこちら

次回予告

【やむを得ないを疑う勇気】本当にそれしか方法はないのか

人手不足だから。
転倒が心配だから。
本人が理解できないから。

介護現場では、「やむを得ない」という言葉を使わざるを得ない場面があります。

でも、その言葉の中に、僕たちは考えることを止めてしまう理由を隠していないでしょうか。

次回は、身体拘束や行動制限につながる「仕方がない」を、もう一度立ち止まって見直します。

本当にそれしか方法はなかったのか。
別の関わり方は考えられなかったのか。

利用者様の自由と尊厳を守るために、現場で問い続ける意味について書いていきます。


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