【U-NEXT】『宝島』(2019)映画感想文・郷愁を感じました
見たいと思っていたギョーム・ブラックの作品がU-NEXTに来ていました。
苦手な夏が少しいいなと思えた映画です。

あらすじ
「女っ気なし」「やさしい人」などのギョーム・ブラック監督が、パリ近郊の街セルジー・ポントワーズにあるレジャー施設「レジャー・アイランド」でのひと夏を切り取ったドキュメンタリー。
エリック・ロメール監督作「友だちの恋人」の舞台として知られ、ブラック監督自身も幼少時に頻繁に訪れたというレジャー・アイランド。バカンス客で溢れるその施設には派手なアトラクションは一切なく、水と緑の土地が広がっている。
美しい陽光が降りそそぐ中、施設に忍び込もうとする少年たちや、女性をナンパする青年たち、過去を懐かしむ老人、施設の管理や警備をする従業員たちなど、老若男女さまざまな人々の自然な姿を映し出していく。
監督 : ギョーム・ブラック
2019年製作/97分/フランス
原題または英題:L'Ile au tresor
配給:エタンチェ
劇場公開日:2024年7月27日
感想(ネタバレ含む)
今作はパリ近郊のレジャー施設を舞台に、さまざまな来場者の夏のひとときを描いた作品です。
一見すると何の変哲もない夏の記録なのですが、鑑賞後に心が豊かになる感覚がありました。
この映画の魅力は、「ドキュメンタリー」としての事実性と、「演出」としての構成が絶妙に融合している点にあります。
登場するのは、子どもたち、若者たち、家族連れ、恋人たち、独りで過ごす高齢者、そして施設の警備員たちといった、実に多様な人々。
彼らが語る言葉やしぐさには、自然なリアリティが宿っており、それだけで観客の心を惹きつけます。
しかし、よく観ていると、いくつかの会話や視線には、偶然とは言い切れない計算や構成が感じられます。
ブラック監督は、即興性と構成力の中間にある「演出されたリアル」を丁寧に追求し、そのことがこの映画に独特の風情をもたらしています。
さらにこの映画には、どこか懐かしさを覚える感覚がありました。
その理由のひとつとして、撮影地であるフランス・パリ郊外の「気候」があるのではないかと私は感じました。
8月のパリ近郊は、最高気温が25〜27度程度で湿度も低く、風が心地よい乾いた空気に包まれているそうです。
今の東京の夏よりも10度も低いとは羨ましい限り。そして緯度が高いので日没は21時頃。そういえば若者が夜7時の約束をして、明るい内に会っていたので不思議に思いました。
長い夕暮れが続くため、人々はのんびりと時間を過ごすことができますし、夕暮れの郷愁もたっぷり感じます。
この気候条件は、かつての日本…たとえば1970年代から1980年代初頭の夏と似ているのではないでしょうか。
当時は、今よりも湿度が低く、夜には涼しい風が吹き、日中も木陰に入ればほっとひと息つけるような空気がありました。
家の外で夕涼みをする光景や、水辺に集まる子どもたちの声…そうした記憶の断片が、『宝島』の静かな映像と重なり合い、見る者に郷愁を呼び起こすのかもしれません。
さきほども書きましたが、パリと東京の緯度の違いは印象に大きく関わっています。
パリ(およびシャン=スール=マルヌ)は北緯48.8度に位置し、日本の稚内よりもさらに北。
これにより、夏は日が長く「白夜に近い日照感覚」が生まれます。この長い昼が、人々の時間感覚や動作をゆったりとさせ、映画全体に「急がない夏」「終わらない夕暮れ」のような印象を与えているようです。
日本のような蒸し暑く息苦しい夏では、屋外でここまで自然にふるまうのは難しいです。こうした違いが、作品全体の呼吸をゆったりとさせているように思います。
『宝島』は、単なるドキュメンタリーではなく、現実の人々を被写体にしながらも、どこか演劇的で、詩的な構成です。
その中で描かれる夏の光や風、人々の何気ない会話やまなざしが、国は違っても「かつての日本の夏」への記憶を刺激するかのようでした。
それぞれの年代の一瞬一瞬を丁寧にすくい上げたこの映画は、気づかぬうちに私たちの「記憶のなかの夏」へと連れ戻してくれる、不思議な力を持っていると感じました。
今作を見て、ギョーム・ブラック監督の作品をもっと見てみたいと思いました。
それでは、また次の映画で!
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