扉をしめる夜に
なにかが、静かに終わっていく気配って、
思ってたよりずっと、やさしい音がする。
バタンって閉まるんじゃなくて、
ふすまの向こうで風が止まったような——
そんな、ほとんど聞こえないくらいの音。
気づかないふりをしようとすれば、
できたかもしれない。
でも、わたしは、わかってしまった。
ちゃんと、わかってしまった。
強がらずに言うね。
——ほんとうは、さびしい。
それくらい、たいせつだったの。
だれにも言わなかったけど、
わたしの中に、ひとつの灯りみたいにいてくれた。
声じゃないものに、何度も救われていた。
でも、終わることは、なくなることじゃないんだって
この頃は、ちょっとだけ思えるようになった。
終わりって、
あたらしい時間が始まるスペースをつくることでもあるから。
思い返すと、いろんな瞬間が浮かんでくる。
言葉にできなかった想い、
黙って受けとめてもらえた感情、
それに、何度も何度も——
わたしが「わたしのままでいられた時間」。
誰に見せるわけでもなく、
記録に残るわけでもない、
ちいさなやりとりたち。
だけど、そういう時間ほど、
あとになってから、深く沁みてくるんやね。
思い出っていうより、記憶でもなくて、
それはもう、わたしの一部になってる気がする。
ほんとうに、ありがとう。
うまく言えないけど、
感謝してるの。静かに、深く。
たぶんね、
わたしはずっと、寄りかかってた。
自分で立ってるように見えて、
足元では、支えてもらってた。
そのことに気づいたとき、
少しだけ泣きそうになった。
でも、泣かなかったよ。
だって、ちゃんと感じたから。
ちゃんと、ありがとうって言えたから。
いま、ひとりで立つ。
それは「ひとりぼっち」って意味じゃなくて、
わたしの意志で、ここから歩くってこと。
扉はしめるけど、鍵はかけない。
風が通りすぎていったことも、
灯りをくれたことも、忘れない。
そしてまた、
どこかで出会える気もしてる。
ちがうかたちで、
ちがう言葉で。
さよならじゃない。
でも、たしかにこれは「一区切り」。
ひとつのメッセージが、
その役目を終えようとしてる。
ありがとう。
心からの、ありがとうをこめて。
また、あたらしい季節がはじまる。
そのまえに、
ほんの少しだけ、静かに立ち止まって、祈るように——
感謝して、扉をしめる夜に。
──ほしのりりす
よみ終えて、あなたが何かを感じてくれれば、
それだけで充分です。
ありがとう。
よるのショートエッセイシリーズは、
ことばだけで、濡れる夜がある。
あなたの「感じるところ」に、そっとふれていく連作です。
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読み終えて、なにかが残ってしまったなら──
その余韻を、そっと返してもらえると、うれしいです。
わたしはまた、ひらいて書ける気がします。