見出し画像

私はインターネットにビビビときた

私はインターネットにビビビときた。よく結婚相手と出会ったときの表現であるが私の場合は人ではなかった。心底すごいと思った。胃袋が下から持ち上がるような高揚感があった。「これは世の中を変えるよ、え?私って今まさに時代のまっただ中にいるの!?」



2010年、私はWeb専門学校に入学した。「手に職をつけて生きていくならWebの技術があるといい」と弟に勧められたのがきっかけだ。それまでWebが好きかと言われれば全くそんなことはない。サーバーは地下倉庫のことだと思っていたし、一体全体パソコンの奥底で何が起きているのか薄気味悪いとさえ思った。



ところが、学び出したらこれはすごいと思った。情報がフラットになる!少し前までマスコミに在籍していたので余計この衝撃は大きかった。これまで情報は特権階級だと感じた。知っているもの知らないもの。ここに格差があった。けれどもインターネットで発信をすると、一人一台テレビ局を持つようなものではないか。これまでの社会の構造が大きく変わる予感が、ゾクゾクするほど楽しかった。



世界中のどこにいても誰でもどんな状況でも、自己表現ができる時代がやってきた。過去どのような人生を歩もうとも、今ここから表現することは自由だ。私、なんて幸せなんだろうか。宝くじに当たるよりも今の日本に生まれたことは幸運だと感謝した。


インターネットで表現をすると、いいね!と言ってくださる方と繋がれる。住んでいる場所、年齢を超えて人と繋ぎ直すことができる。地理的に近いお友達、血縁関係などを超えて人間関係を再構築できる。


頭も心も自由に表現することができることがすごいと思っていたが、私は全然自分を表現できなかった。「本音を話す?パンツ一枚じゃ歩けない」と思った。怖いし、何よりも恥ずかしい。誰が私の表現なんて見るんだろうか。自由に表現できる世界に感動しながらも、できなかった。


でも諦めたくなかった。私だとわからないイラストのプロフィール写真をセッティング、身バレしないように仕事のノウハウばかり書いていた。こんなスタートでも、人と出会った。時間がかかったが、繋がりは少しずつ増えていった。


今、私は3人の息子を育てながら在宅で仕事をしている。かつてサーバーが地下倉庫だと思っていて、インターネット用語を見るとお腹が痛くなっていた私が。人生はわからない。ただ、あの日のビビビは間違っていなかった。


#文藝大賞2026 #エッセイ部門