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「ぷすーん」と「ニセルゴッド」。ママ薬剤師の毎日は「暗号解読」でできている

朝の食卓はミステリー。「ちゅーちゅーぺったん」を解読せよ

今日は薬の役立つ話は、一切出てきません。


「ママ、ぷすーん取って!」

朝ごはんの食卓で、娘(4歳)が大真面目な顔で言った。

ぷすーん。
一瞬、止まる。
…………スプーンだ。

娘の語彙は、3歳までに独自の進化を遂げていた。

「シュタトレ」=すべり台(何語???)
「ほいっほ」=保育園(なんとなくわかる)
「もに」=ニモ(…惜しい!)

これだけでも十分すごいのだが、 先日さらに強敵が現れた。

「ママ、あのね、『ちゅーちゅーぺったん』したの!」

……ちゅーちゅーぺったん。

なんだろう。 響きだけで判断するのは危険な気がする。
保育園で何かあったのか。
いや、落ち着け。
一つ間違うと、イヤイヤが発動する…

「どこで?」
と慎重に聞くと、
「お外で! みんなでやったの!」と満面の笑み。

……シャボン玉だった。

『ちゅーちゅーぺったん』
シャボン玉だとはわからないよ

セーフ…イヤイヤ発動なし!
なるほど。言われてみれば、そう聞こえなくもない。
全然聞こえないけど。

毎日のように暗号が更新され、
毎日のように解読が求められる。

親という生き物は、
気づけばこの暗号に完全対応した 専属翻訳家になっている。

24時間365日稼働。 もちろん、無報酬。
ブラックにもほどがある。

「そうか、ぷすーんね」とスプーンを渡し、
バタバタと保育園に送り届け、 ぐったりしたまま職場へ向かう。

白衣を着て 気持ちを切り替える。
さあ、プロの薬剤師の時間だ。


病棟のカルテもミステリー。降臨したラスボス「ニセルゴッド」

その日も、いつものように処方内容を確認していた。

カルテを開く。
医師の手書きメモに目を走らせる。
そこで目に飛び込んできた文字がある。

「バブロン使用歴あり」

……バブ。
赤ちゃんか!!

いや待て。落ち着け。
ここは病院だ。私は薬剤師。
赤ちゃんブランドが使用歴として記録される病院は存在しない。

パブロンだ。
総合感冒薬の、あのパブロンだ。

「バ」と「パ」の違いだけで、
ずいぶん違う世界が広がるものだなと思った。
・・・一瞬、麻雀用語かとも思ったよ。

そして同じ日。
別のカルテに目を走らせると、また来た。

「ニセルゴッド」

なんだと?……にせるごっど?
偽の神?

壮大すぎる。
というか、ラスボスの名前では?
それにしてもダサい。

間違うにしても、もっとなんかないのか…

でも私は冷静だった。なめてもらっては困る。
20年選手の病院薬剤師、この程度では動じない。

まず文脈を読む。
高齢の患者さん。
脳血管障害の既往。
用法と用量を確認する。

次に薬効を考える。
脳に関係する何か、か。

最後に、字の癖を思い出す。
この先生、「リ」と「ッ」の区別が危うい。
「ン」と「ル」も、筆圧によっては溶け合う。

……ああ、ニセルゴリンね。

脳の血流をよくする、ごくふつうの薬だ。

強そう。絶対ラスボス。
でも実のところ、ただの脳の薬。

こうして今日も、誰にも気づかれることなく、
静かに解読は完了した。

まったくもって地味。
でも、これも立派な薬剤師の仕事だ(…と思う)。

▶ 育児と仕事のカオス具合については、
娘の入院付き添いをした1ヶ月半がいちばんピークだったかもしれません。詳しくは別の記事で書いています。


【私の気づき】幼児語と手書きメモ、本質はまったく同じだった

帰宅して夕食を作りながら、私はふと気づいてしまった。

家での「ぷすーん」の解読と、
病棟での「ニセルゴッド」の解読。
これ、やっていることは完全に同じだ、と。

どちらも、発信者は大真面目。
どちらも、表現がおかしい。
どちらも、文脈と想像力で正解に辿り着くしかない。

「言葉をまだうまく操れない幼児」と、
「忙しすぎて文字が崩壊している医師」。

なんか、同じだ

ふたりの間に立って、
意味を汲み取り、橋渡しをする人間が必要だ。

私は家でも病院でも、 ひたすら暗号を解読し続けていた。
ずっとそうだったのに、今日はじめて気づいた。
…なんか、シュールだな。


なんの学びもないけれど

娘は4歳になって、
すべり台もシャボン玉も言えるようになった。

おかしな語彙はだいぶ減ったけど、
振り返ってみるとあの翻訳時代を懐かしく思う。

医学的な気づきも、育児のノウハウも、ここには何もない。

ただ、今日も私は
「ぷすーん」と「ニセルゴッド」に囲まれて、
元気に(?)生きています。

もしかしたらこれ、薬剤師のスキルというより、
「4歳児を育てた経験」がじわじわと
仕事に活きているだけかもしれない。

だとしたら、保育園への送り迎えも、
立派な業務経験として認めてほしい。
切実に。

皆さんの周りにも、解読不能な「子どもの謎ワード」や
「職場の手書きメモの迷言」はありませんか?
思い出し笑いしたいので、コメント欄で教えてください!

▶ どんなママ薬剤師が『ぷすーん』と『ニセルゴッド』に囲まれているのか、気になってくださった方は自己紹介記事もどうぞ。


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