月と星のあいだに|第14話:星の落とし物

「うわー!シオン見てみて!星がいっぱい!」
流星群に飛び乗ったわたしは、はしゃぎながらシオンに話しかけた。
「大丈夫だよ、ヒカリ」
「え……?」
てっきり、「すごいよなっ!」「おもしれ〜な、これ!」なんて返ってくると思っていたわたしは、ちょっと拍子抜けしてシオンを見つめた。
そう言えば、流星群に乗って一番喜びそうなシオンは、ずっと、ただ静かに流れ落ちる先を見つめているようだった。
「ヒカリは、いつも不安や心配なことがあると、妙にはしゃぐからな」
クスクスとシオンが笑った。
「な、なによーっ! べ、別にっ! そんなこと……」
言いかけて、わたしは言葉を失う。
うん……不安。
この流星群が守り人の所に連れて行ってくれるとは限らないもの……。
うん……心配。
こうしている間にも、おばあちゃんや月の女神は無事なのだろうか……。
早く、早く会いたいよ……。
そう願ってしまう自分に気づいて泣きそうになり、慌ててシオンに話しかけた。
「——ねぇ、シオンってホントはいくつなの?」
「さぁな。ヒカリよりは少し長く生きてるかもなっ」
ニヤリと笑うシオンを見て、シオンはシリウナの息子だったと思い出した。
人間と時の流れが違うのに、聞いても無意味だったかもしれない。
「——それにしても、この流星群、随分と流れてるよな」
「そうだね。流れ星って、見てるとあっという間に流れちゃうから、ちょっとビックリしてる」
「ま……導いてくれてることを信じるしか——」
シュッ
シュシュッ
風を裂くような音が耳元をかすめてゆく。
シオンは持ってきていた弓矢にそっと手を伸ばした。
「シオン……」
「気をつけろ、ヒカリ」
シオンが、わたしを庇うように背を向け、弓を身構えた。
シュッ
シュシュッ
また飛んできた何かに向かって、シオンは迷わず矢を放った。
「ギャアアアア!!」
暗闇を突き破るような叫び声が聞こえたと思った瞬間——
ドザッ!
下から大きな矢が飛んできて、流星群に突き刺さった。
その衝撃でグラグラと揺れだした流星群は、ものすごい勢いで急降下していった。
「きゃあー!!」
バランスを崩したわたしは流星群から滑り落ちてしまった。
もう!
また落ちるの〜?
しかも——!
今度は海じゃないよね?
もうダメかも……。
落ちながら目を閉じたわたしの腕をグイッとシオンが掴んだ。
「——あっぶね〜」
小さな羽根を広げてシオンがわたしを支えながら、ゆっくり下へ降りてゆく。
「シオンー!!」
わたしは泣きながら思わずシオンに抱きついた。
「——わ! ま、待て! ヒカリ! あばれるな——」
わたしに抱きつかれてビックリしたシオンがバランスを崩し、ドスンと二人で地面に投げ出されてしまった。
「——っ、ヒカリ! 大丈夫か!」
心配して駆け寄るシオンに、
「うん、大丈夫!」
と、笑顔で立ち上がろうとしたわたしの足に激痛が走り、
「——いったい!」
あまりの痛さに、笑顔が一瞬で涙目に変わってしまった。
落ちた時の体勢が悪かったのかな……。
わたしは右足首が痛くて立ち上がれないでいた。
「待ってろ! 薬草を探してくる」
「え、ちょ、シオン! ま、待って!」
わたしは小さな子どものように、シオンの服の袖を引っ張った。
「な、なんだよ」
驚いて振り向くシオンに、
「一人にしないでよ〜!」
と涙目で訴えてみるも、
「さっきの矢を放ってきた奴らは気になるけど——」
「でしょ、でしょ!」
「でも、こんなに生い茂った森の中じゃ見つからないよ。大丈夫だ、ヒカリ。すぐ戻るからな!」
シオンは、わたしの手を優しく握りしめると、軽く頭をポンポン叩いて、足早に森の中へ消えて行ってしまった。
シオンは、わたしの手を優しく握りしめると、軽く頭をポンポン叩いて、足早に森の中へ消えて行ってしまった。
「——行っちゃった……」
不安な気持ちを抱えつつ、座りながら辺りを見回してみた。
大きな木々の隙間から、やわらかな陽射しが降り注いでいた。
わたしは、気持ちを落ち着かせようと目を閉じ、深呼吸をした。
パカパカ……
遠くから馬の駆けるような音が聞こえた気がして、わたしはゆっくり目を開けた。
キラッ
陽射しに反射して何かが眩しく光った。
「——お前か、矢を放ってきたのは」
わたしは、光を遮るように手をかざし、声のする方を見ようとして仰ぎ見た。
「——う、そ……」
わたしの目の前には、太く艶のある毛並みをした馬の足があり、視線を上げた先には、鋭く光る矢を向ける大男の姿があった。
逃げなきゃ!
そう思いつつも足が痛くて立ち上がれない……。
わたしは、座った姿勢のまま後ろへ下がろうとした。
「——ん? なんだ、お前、怪我をしているのか」
大男は構えていた弓をしまうと、しゃがみ込んで、わたしの足にそっと触れた。
「——いたっ!」
「……ふむ。骨に異常はなさそうだな。おおかた、流星群から落ちた時にでも挫いたんだろう」
——それ、あなたのせいなんですけど……。
なんて言えるわけもなく……。
その間にも、大男は腰に下げていた袋から薬草と包帯のような布を取り出し、手際よく処置していった。
わたしは、ただ、ただ、じっと大男を見つめることしかできなかった。
「——あ、ありがとうございます」
治療を終えた大男に、お礼を伝えようとしたわたしの声は、かすれてうまく声にならず、
「なんだ、喉も渇いてるのか」
大男は呆れたように、水が入っているらしい革袋を差し出してくれた。
「すみません……」
と、受け取ろうとしたその時——
ヒュンッ!
一本の矢が飛んできて、水袋に突き刺さった。
「ヒカリ!」
そこには、薬草を摘んで戻ってきたシオンが立っていた。
水袋から水が滴り落ちる音が森の中に静かに響き、大男がゆっくり立ち上がった。
「——シオン! この人は——」
「ヒカリから離れろ!」
シオンがゆっくりと弓矢を構えた。
「シオン! ちがうの! きいて——」
「この化け物!」
わたしの言葉を無視して、シオンは大男に叫びながら矢を放った。
🌙あとがき
いつも物語を読んでくださり、ありがとうございます。
みんなのコメントやスキから元気いっぱいもらえてます。
ありがとう☺️
いよいよ、新しい守り人との物語が始まります!
光とシオンはどんな守り人と出会えるのでしょうか。
また、この旅も一緒に見守っていただけたら嬉しいです✨
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