単語は全部知ってるのに、意味が分からない。①|「お尻にハチがいるの?」🐝
ドイツで大学院を卒業し、社会人として働き始めてから、「ドイツ語が分からない」というより、「単語は全部知っているのに、意味が分からない」という瞬間が増えた。
「お尻にハチがいるの?」
「朝ごはんにピエロを食べたの?」
「引き出しの中で一番鋭いナイフじゃないね。」
もちろん、誰も本当にハチやピエロやナイフの話をしているわけではない。
これは、私がドイツの職場で出会った、ちょっと不思議で、妙に印象に残っている言葉たちの話。
ドイツで働き始めて。
私の職場は、患者さんも仕事仲間も、年齢層がかなり幅広く、特に中高年の方が多い。
そして、強めの方言もある。
ドイツで大学院にいた頃は、多少分からない言葉があっても雰囲気でなんとなく理解していた。
でも、社会人になってからはそうもいかない。
目の前で普通に会話が進んでいく中で、知っている単語ばかりなのに、なぜか文章全体の意味が分からない。
最初の半年くらいは、とにかく耳を慣らすのに時間がかかった。
そんな中で、毎日いろいろな言葉を聞いているうちに、「今の表現、なんか面白いな」と思ったものをメモに残すようになった。
気づけば結構な量が溜まっていたので、復習も兼ねて、ここに少しずつ書き残してみようと思う。
今回は、まず「直訳すると何の話をしているのか分からない」表現から。
Hast du Hummeln im Hintern?
「お尻にハチでもいるの?」

これは、誰かが落ち着かず、何度も立ったり座ったり、あちこち動き回っているようなときに使う表現。
つまり、
「そんなにソワソワしてどうしたの?」
「じっとしてられないの?」
くらいの意味。
日本語にも「落ち着きがない」「そわそわしている」という表現はあるけれど、「お尻にハチがいる」という発想はない。
しかも、個人的には Hummeln が好きだ。
日本語で「ハチ」と聞くと、なんとなく細くてシュッとしたハチを想像するけれど、Hummel は丸っこくてモフモフしたマルハナバチ。
「お尻にマルハナバチがいる」と想像すると、なんだかちょっと可愛い。
Hast du einen Clown zum Frühstück gegessen?
「朝ごはんにピエロでも食べたの?」

(インパクトある方が覚えやすいよね🫢)
朝から冗談ばかり言っている人や、妙にテンションが高くて明るい人に対して使う。
「今日やけにふざけてない?」
「朝から絶好調だね(笑)」
くらいの感じ。
職場で言われたとしても、基本的には本気で怒っているというより、「今日どうしたの(笑)」という軽いツッコミに近い。
それにしても、なぜピエロを食べるのか。
ドイツ語には、ときどきこういう「なぜその組み合わせ?」と思う表現が出てくる。
Du hast nicht alle Tassen im Schrank.
「棚のカップ、全部そろってないよ。」

もちろん、カップの数を確認しているわけではない。
これは、
「ちょっと変じゃない?」
「頭のネジが何本か外れてるんじゃない?」
というような意味。
つまり、「ちょっと頭がおかしいんじゃない?」を、カップを使って遠回しに言っている。
なかなか容赦がない。
そして、似たような「直接バカとは言わないけれど、まあまあ失礼」な表現がもう一つある。
Du bist nicht das schärfste Messer in der Schublade.
「引き出しの中で、一番鋭いナイフではないね。」

これももちろん、ナイフの切れ味の話ではない。
要するに、
「そんなに頭が切れるわけではないね。」
「まあ、あまり賢いタイプではないね。」
ということ。
面白いのは、どちらも結局は「頭がよくない」と言っているのに、ドイツ語ではカップやナイフを使って、妙に遠回しに表現できてしまうこと。
日本語にも「頭の回転が速い」「頭の切れる人」という表現はあるけれど、「引き出しの中で一番鋭いナイフではない」とは言わない。
こういう表現に出会うと、単語や文法を勉強するだけでは分からない、その言語の「言い回しの癖」みたいなものが少し見えてくる気がする。
そして、こういう言葉を職場で突然聞くと、
「……今、ナイフの話してた?」
となる。
今回はここまで。
また次回、ドイツらしい皮肉の効いた言い回しや、職場で覚えた便利な言葉たちをまとめようと思います。
「なんでそんな言い方するの?」と思う表現もあれば、「これ、便利だから覚えておこう」と思った表現もたくさんあります。
では、また!
