就農1年目、お金はこう動いた(1)初売上まで4か月、収入ゼロで何が出ていったか
私たちは関東で施設きゅうりを中心に作っている新規就農の農家です。
別の連載では、新規就農一年目の出荷実績——反収・単価・売上——を公開してきました。あちらは「売上をつくる側」の話です。
この連載は、その手前の話をします。就農1年目、お金がどの順番で動いたか。
売上が立つまでに何が出ていき、いつ借りて、いつ払って、補助金がいつ入ってきたのか。金額そのものより、順番と時間を把握することが大事だと私たちは思っています。就農前に私たちが知りたくて、どこにも書いていなかったのがこの部分でした。
先に前提を置きます
この連載で出す数字には、はっきりした限界が3つあります。最初に書いておきます。
1. 仕訳帳ベースです。 数字は2026年1月〜6月の仕訳帳を、科目×月で私たちが集計し直したものです。伝票の束ではなく、会計に載った形の数字です。
2. 半年分です。 1年分ではありません。「就農1年目の1〜6月」であって、「就農1年目の全部」ではない。以降も必ず「2026年1〜6月」と書きます。
3. 円単位の実額は出しません。 丸めた総額と、比率と、月ごとの形だけを出します。このシリーズあまり内容を細かくせず桁と順番で話を進めようとおもいます。
もう一点、別連載を読んでくださっている方向けの注記です。別連載では2026年の半促成きゅうり1作の売上を754万円(精算確定分)として書きました。この連載では会計ベースで通すので、2026年1〜6月の売上は約770万円になります。差の約12万円は、会計上は前作の最終分が1〜6月に入るためです。定義が違うだけで、どちらかが間違っているわけではありません。
なお減価償却は概算で計上しています。確定申告で動きうる数字です。
順番に見ていきます

1月——借りるところから始まる
最初に動いたお金は、売上でも費用でもありませんでした。借入です。
2026年1月、日本政策金融公庫から約3,600万円を借りました。施設をつくるためのお金です。条件は公庫の制度どおりで、ここでは触れません。
この月、現金で出ていった費用はごくわずかでした。まだ何も動いていないからです。自己資金は少し入れています。
1年目の最初の月にあった事実は、「3,600万円の残高がある」ということだけでした。収入はゼロです。
2月——ハウス代を一括で払う
2月に、設備の代金を払いました。約3,300万円を一括です。
一月に口座にあった借入は、2月にハウス施工費を払うためだけに存在していた為。借りた翌月に、は出ていく構造です。
この月の現金費用はまだ小さい。売上はゼロです。
3月——費用が跳ね、自己資金の投入が最大になる
3月に、3つのことが同時に起きました。
ひとつ、補助金が入りました。 国の新規就農者向けの補助事業で、約380万円が3月末に入金されています。
ふたつ、現金で出る費用が跳ねました。 種苗、重油、資材。作付けに向けた支払いが重なって、月の現金費用がそれまでの月とは別の水準になりました。1月は「ほぼゼロ」、2月は「小さい」、3月は「中くらい」——といっても、収入がゼロの月の「中くらい」です。
みっつ、自己資金の投入がこの月に集中しました。 1月から4月にかけて入れた自己資金は合わせて約230万円。うち約165万円が3月です。7割強がこの1か月に集まっています。また、前年のハウス施工前にも必要な道具等をかっているため、実際はさらに100万程度はかかっています。
補助金が入った月に、自己資金をいちばん入れている。矛盾しているようですが、そうではありません。
借り入れや補助金は施設導入のために申請しており、ほかの用途には使えなかったため、農業を始めるための機械、資材等は自己資金で回す必要がありました。
補助金と支払いの時間差は、およそ1か月半でした。その期間施設建設費を立て替える必要があります。 今回は借入額を補助金が無い想定の額で借り入れをしており、ここをまたいでいます。
(この「つなぎ」の話は、金額の動きも含めて別の回で詳しく書きます)
4月——4月23日、初売上
2026年4月23日、初めての売上が立ちました。
1月1日から数えて、4か月です。
この4か月、収入はゼロでした。その間に現金で出ていった費用は、約105万円です(減価償却を除く)。設備投資とは別に、これだけが出ていきました。上記しているとおり、前年等に事前に準備していた資材や道具は含まれていません。
4月の売上はまだ小さい。本格化するのは5月からです。
この4か月を1枚にすると
(図を挿入予定:借入→投資→補助金→返済→初売上のタイムライン)
2026年1〜6月。金額ではなく、動いたものと向きだけを並べます。
月|出来事|現金で出る費用|売上
1月|借入(約3,600万円)|ごく小|0
2月|ハウス代を一括で支払い(約3,300万円)|小|0
3月|補助金入金(約380万円)/種苗・重油・資材で費用が跳ねる/自己資金の投入が最大(約165万円)|中|0
4月|4/23 初売上|小|小
5月|売上が本格化/借入の一部を返済(約370万円)/雇人費が立ち上がる|大|本格化
6月|—|大|本格化
※2026年1〜6月、仕訳帳を科目×月で集計。減価償却を除く現金ベース。総額は丸めています。
並べてみると、はっきりしていることがあります。
収入が1円も入らない区間が、最初に4か月ある。 そしてその区間に、設備投資と、準備の費用と、自己資金の投入が全部詰まっています。5月以降のグラフだけ見れば普通の経営に見えますが、その手前にこの平坦な4か月が必ずある。
もうひとつ。お金の動く順番は先行投資です。
借りる → 建てて払う → 補助金が来る → 一部返す → ようやく売上。
支払いが先で、補助金は後です。売上はもっと後です。この順番は、私たちが選んだものではありません。農業に限る話ではありませんが、投資の前に売り上げを立たせることは難しいです。そのため順番に合わせて資金を用意するしかない、というのが1年目に必要な準備です。
読んでくださっている方への持ち帰り
「就農にいくら要りますか」という問いには、正確な数字を私たちは答えられません。面積も作型も施設の規模も違うからです。
ただ、計算の順番なら共有できます。私たちが後から振り返って「これで逆算すればよかった」と思ったのは、次の形です。
準備資金 =(初売上までの月数)×(その間の月あたりの費用)+(設備の自己負担分)
私たちの2026年で当てはめると、初売上までの月数は4か月、その間に現金で出た費用は合計約105万円。設備の自己負担分は、設備投資に対する自己資金の割合が約7%でした(残りは借入で賄っています)。
この式は、どの項も自分の条件で置き換えられます。作型が違えば初売上までの月数が変わる。面積が違えば月の費用が変わる。施設の規模が違えば自己負担分が変わる。金額をそのまま真似する必要はありません。
逆に、この式で見落としやすいのが2つあります。
ひとつは、補助金を「入金される月」で数えること。交付が決まっていても、入るのは支払いの後です。私たちの場合は約1か月半後でした。決定した時点の金額を資金計画の「収入」に置くと、その1か月半が抜け落ちます。
もうひとつは、自己資金がいつ必要になるか。私たちの場合、自己資金の7割強は3月の1か月に集中しました。金額は作付けに間に合うタイミングでなければ途中で資金不足になります。
次回
第2回は、設備投資と借入のタイミングをもう一段細かく見ます。1月に借りて2月に払う、というのが具体的にどういう資金の動きなのか。そして「借りられるか」ではなく「借りた後に月々の現金がどう動くか」を、どう見ればいいのか。
質問や「うちはこうだった」というコメントは歓迎します。数字で返せる範囲でお答えします。
※記事の作成にはAIによる解析を取り入れています。
