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最後の3分、誰とバスケットがしたい?

長く指導をしていると、試合に誰を出すのか、その判断に迷うことがある。

上手な選手を出せばいい。

勝つためなら、それが当然なのかもしれない。

でも、僕は48年間指導をしてきて、

選手起用

というのは、それほど単純なものではないと思っている。

上手ではない。

でも、誰よりも声を出す。

誰よりも熱心に練習する。

話をしっかり聞き、仲間と一緒に頑張る。

そんな選手は、どのチームにも一人くらいいるのではないだろうか。

僕は、そんな選手を見ると、

「試合に出してやりたいな」

と思う。

でも、勝敗がかかった試合では出してやれないこともある。

逆に、練習態度や話を聞く姿勢を考えると、本当はあまり出したくない。でも、身長があったり、能力があったりして、勝つためには使わざるを得ない選手もいる。

どちらも経験した。

そして、そのたびに迷った。

「僕より、あいつを使ってください」


一度だけ、選手本人からそんなことを言われたことがある。

その子は、決して上手な選手ではなかった。

普段はおとなしい。

あまり自分から喋るタイプでもない。

でも練習になると一生懸命声を出し、話を聞き、ひたむきに頑張る選手だった。

上の大会がかかった大切な試合だったと思う。

ベンチで、その子が僕に言った。

「僕を使うより、あいつを使ってください」

その「あいつ」は、身長があり、それなりにプレーのできる選手だった。

僕は聞いた。

「お前、それでいいんか?」

本人の気持ちを確認して、僕はその申し出を受け入れた。

本当は試合に出たかったのかもしれない。

でも、自分よりあいつが出た方がチームは勝てる。

そう思ったのかもしれない。

今でも本人に会って聞けるなら、一つだけ聞いてみたい。

「あのとき、本当に自分よりあいつの方がいいと思ってたのか?」

どんな答えが返ってくるのだろう。

いや、やっぱりやめておこう。

48年間で、そんなことを自分から言った選手は、その子一人だった。

もう一つ、忘れられない選手起用がある


高校女子を指導していたときのことだ。

そのチームには、3年生が一人しかいなかった。

その一人がキャプテンだった。

仲間の3年生がいない中、辞めることもなく、3年間ずっと一人で頑張ってきた。

そして迎えた最後の大会。

負ければ引退。

残念ながら、そのチームには大きな力がなかった。

試合は負けていた。

残り3分を切っていたと思う。

現実的に考えれば、そこから試合をひっくり返すだけの力はなかった。

それでもキャプテンは、一生懸命ボールを追いかけていた。

僕はその姿を見ていた。

そして、僕がとったタイムアウトのベンチで自然に言葉が出た。

「お前、高校生最後の試合に誰とバスケットがしたい?」

事前に考えていたわけではない。

その場で、本当に自然に出てきた言葉だった。

彼女は何人かの名前を挙げた。

その中には、

「え? この子と最後にやりたいんだ」

と、僕が意外に思った選手もいた。

正直に言えば、指導者としては「あまり出したくないな」と思う選手もいた。

でも、その日は僕が決めなかった。

ずっと一人で3年生として頑張ってきた彼女が、一緒にコートに立ちたいと言った仲間を送り出した。

そして僕は言った。

「残り3分、楽しんでおいで」

指導者には3分。でも、選手には違った


それから何年も経った。

そのキャプテンから、あの試合の話を聞くことがあった。

「覚えています。嬉しかったです」

そう言ってくれた。

僕も嬉しかった。

「ああ、よかった」

素直にそう思った。

僕にとっては、長い指導生活の中の一つの選手起用だったのかもしれない。

でも、彼女にとっては違ったのだろう。

高校生活最後の試合。

たった一人の3年生として頑張ってきた最後の日。

自分が選んだ仲間たちと一緒にプレーした、最後の3分。

その試合は、もう二度と戻ってこない。

だからこそ、あの3分が彼女の高校時代の思い出の一つとして残っているのなら、あの選手起用はよかったのだと思う。

誰を出すのが正解なのか


48年間指導してきても、すべての試合で通用する答えを僕は持っていない。

勝たなければならない試合なら、勝つ可能性の高い選手を使う。

ここで負けても、自分たちが納得できると思える場面なら、ずっと頑張ってきた選手を送り出すこともある。

この試合を勝って次のステージへ行けば、そこで頑張ってきた選手にチャンスを与えられる。

そう考えて、今は別の選手を使うことだってある。

だから、

「頑張った選手は必ず試合に出すべきだ」

とも、

「勝つためには上手な選手だけを使えばいい」

とも、僕には言えない。

試合によって違う。

チームによって違う。

選手によっても違う。

そして、その瞬間によっても違う。

ただ一つ、長く指導してきて思うことがある。

試合に出す、出さない。その向こう側には、一人の選手の気持ちがある。

スコアだけを見ていたら、気づかないことがある。

ベンチにいる選手にも思いがある。

コートに立つ選手にも思いがある。

そして指導者も、その間で迷っている。

あの日、僕がキャプテンに聞いた、

「最後に、誰とバスケットがしたい?」

あれが正しい選手起用だったのかと聞かれれば、理屈ではうまく説明できない。

でも何年も経って、

「嬉しかったです」

と言ってくれた選手がいる。

それで十分なのかもしれない。

勝敗表には、ただの一敗として残った試合だった。

でも、一人の選手の中には、今もあの3分間が残っている。

指導者として残せるものは、勝ち星だけではない。

48年間を振り返ると、僕はそんなふうに思う。

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