『逮捕地獄~終わらない再逮捕。』【逮捕・服役体験記3】
俺は、まだ自由にはなれなかった。
むしろ──
これから数ヶ月、さらに「逮捕→勾留質問→調べ→検事調べ→起訴→移送待ち」という地獄のループを繰り返すことになるなんて、この時はまだ知らなかった。
しかも、これを 県ごとに4回 繰り返す。
つまり、逮捕の回数が増えるほど、出られる日は遠のいていく。
たとえ同じ容疑であっても、「○○県でも、△△県でも事件がありました」と言われれば、それぞれの県で1からやり直しだ。
人生は一度きりでも、地獄は何度でも更新される。

移送と、繰り返される絶望
起訴されると、通常は拘置所への移送を待つだけ。荷物検査と聞いたとき、てっきり拘置所への準備か、もしくは一縷の望みで釈放か?と期待した。しかし、その希望は一瞬で打ち砕かれた。
検査中に聞こえてきたのは「A県○○警察署へ移送」の声。別件での逮捕が決まっていたのだ。起訴後も、こうして新たな逮捕が発生する場合、検察側から事前に弁護士へ「追起訴の可能性」などの連絡が入ることもあるが、俺の場合はまったくの寝耳に水だった。
この瞬間に理解した。「しばらく出られない」── 目の前が真っ暗になった。移送される前、警察に弁護士との接見を希望したが、国選弁護士は来ることはなかった。
そして俺は、5ヶ所の留置場をたらい回しにされることになる。

1ヶ所目:A県○○警察署
ここがすべての基準となった。雑談禁止、暗い照明、古びた施設、蚊が多い。ラジオは録音されたニュースがラジカセで20分。音質は最悪。だが、官本は話題作が揃っており、「永遠のゼロ」や「下町ロケット」など名作も読めた。
2ヶ所目:B県○○警察署
雰囲気は一転してフレンドリー。カップラーメンが買えるレアな場所で、本の交換も無制限。少し人間らしさを取り戻せた感覚があった。
3ヶ所目:C県○○警察署
寒冷地で、季節は冬。部屋は極寒、水も冷たい。買えるお菓子はセブンのどら焼きくらい。本は週刊誌もOK。ここで初めてやくざと二人部屋になる。約1ヶ月の共同生活を経て仲良くなり、釈放後には差し入れや面会にも来てくれた。
4ヶ所目:D県○○警察署
新しい施設で驚くほど清潔。食事は温かく、おいしい。漫画も揃っており、One Pieceを読破。一日3回、1回につき3冊まで本を交換できた。警察官もフレンドリー。
5ヶ所目:E県○○警察署
最新設備が整い、まるで“更生施設”のような印象を受けた。温かい食事が毎回提供され、精神的にも落ち着く空間だった。漫画は「キングダム」や「ブルーピリオド」なども揃っており、唯一炭酸飲料も買えた。

「移送あるある」
移送手段は車と電車が半々。電車の場合は手錠と腰縄付きでの移動。目立つので恥ずかしさもあるが、久々の外界に触れる機会でもある。移送中に見かけるコンビニや飲食店、可愛い女の子たちに「普通の生活がどれほど幸せだったか」と痛感する。
移送中に希望すれば、コンビニ弁当を買ってもらえる場合もある。俺はノリ弁をリクエストしたが、人生で一番美味く感じた。
刑事によっては気を利かせて、手錠が隠れるようにバッグで目隠しをしてくれる人もいた。その気遣いが、たとえ一時でも救いになった。

弁護士との接見が叶わない不安
留置場から留置場へと移送される中、国選弁護士との接見希望は何度も出したが、連絡はつかず、会えないまま次の場所へ移動。各県で新たな弁護士が国選で付くが、若い先生とベテランでは方針が全く異なる。
若い先生は「否認事件ならまずは黙秘が基本」と断言。対してベテランは「知らないなら知らないなりに話した方が良い」と言う。
俺は最終的に、「余計なことを言って取り返しがつかなくなるより、黙秘から始めるのが無難」という結論に至った。これは初心者にとって特に重要な視点だと思う。
弁護士との接見が頼みの綱だ。接見禁止と言って面会に制限が掛けられる場合も多いが、その時でも弁護士だけは面会ができる。
親族の人とだけ面会できるように接見禁止一部解除の申請も弁護士にいえばやってもらえるので覚えておくといつか役に立つかもしれない。

雑談禁止の地獄と、部屋の外の現実
雑談禁止の留置場では、同室者と一言交わすだけで怒鳴られる。ならば独居にしてほしいと思うほどのストレス。
下着ドロの男と同室になった時は、精神的に最もきつかった。異常な熱量で下着の話をしてくる。貸したくない本を「読ませて」と迫ってくる。こういう人間と共同生活をしなければいけない現実に絶望した。
ホームレスのような人も同室になったが、風呂に入っていなかったのか垢が大量に浮いていて不衛生そのものだった。
留置場ごとの“当たり”と“はずれ”
【当たり】
温かい食事(飲食店の委託など)
本や漫画の品揃え豊富
警察官がフレンドリー
カップラーメンや炭酸飲料が買える
【はずれ】
雑談禁止
風呂が2週間に3回(特に夏場はきつい)
購入できる本が文春だけ

繰り返される逮捕とプロセスの地獄
ここで読者に理解してほしい重要なことがある。逮捕され、勾留質問・取り調べ・検事調べ・起訴・移送待ちという一連のプロセスは、1回の事件ごとに数ヶ月単位で発生する。つまり、逮捕が2回あれば、最大23日間の勾留が2回、さらに移送待ちの数ヶ月も繰り返される。
これは体験した人間にしか分からない、果てしなく長く苦しい時間の積み重ねだった。出られるかもしれないという希望が打ち砕かれ、またゼロから始まる現実。時間だけが過ぎていく。
次章では、拘置所での生活──そして懲役へと進んでいく。だが、そこにはまた新たな現実と衝撃が待っていた。
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