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【2026年3月15日】「知的資本の投資家」への進化:高橋俊介氏の提言を補完する“スキルデータの裏付け”

1. 「アセット(資産)」から「キャピタル(資本)」へ

本日は、慶應義塾大学の高橋俊介氏による講演レポート「人的資本経営とは何をすることなのか」 を取り上げます。

高橋氏は、従業員を会社の「持ち物(アセット)」として大切にするのか、それとも「借り物(キャピタル)」として尊重するのかという問い を通じて、我が国の人的資本経営の急所を突いています。

特に、「社員は知的資本の投資家である」 という考え方は、SP総研が開発した人的資本開示評価の独自指標SPI(Sustainable Performance Index)の哲学と完全に一致します。従業員は自らの時間と能力を会社に投資し、そのリターンとして成長と報酬を得る。この対等な関係性こそが、21世紀の組織の基盤です。

2. SPI的批評:投資判断を下すための「目論見書」はあるか

高橋氏は、会社主導で無理やり勉強させる「管理型のリスキリング」は利益相反を生むと警告し、個人の「キャリア自律」の重要性を説いています。

人的資本経営スペシャリスト、かつ人事ソリューション・エバンジェリストとして、私はこの提言に深く共鳴しつつも、現場での実装において決定的に足りない視点を指摘せざるを得ません。

「投資家(従業員)が、自分の投資価値を客観的に判断するための『データ』が提供されているか?」という点です。

  • 「スキルギャップ」の曖昧な提示:
    高橋氏は、会社の戦略と個人のスキルの乖離を埋めることを「会社主導」で行う危うさを指摘しています。しかし、そもそも「今、自分にどのようなスキル(KSAO)が備わっており、市場や組織のニーズとどこに差分があるのか」という精緻なデータがなければ、個人は自律的な投資判断(学びの選択)を下すことができません。

  • 「配当」の根拠となるエビデンス:
    投資した知的資本が利益を上げた際の「配当」を議論するにしても、その元手となったスキルがどれだけ伸長したのか、その「証跡」がデジタル化されていなければ、結局は従来通りの主観的な評価に収束してしまいます。

3. 「セルフジョブ定義」が真の知的投資を可能にする

高橋氏が説く「主体的ジョブデザイン(ジョブクラフティング)」 を実現するためのラストワンマイル。それこそが、私が提唱し続けている「セルフジョブ定義」です。

会社に定義されたジョブに自分を合わせるのではなく、従業員自らが自らの任務を言語化し、そこからテクノロジーで抽出された「スキルポートフォリオ」を自ら所有する。

「自分の人的資本(スキル)はこれだ」という明確な認識があって初めて、従業員は会社というプラットフォームに対して「どのスキルを投資し、どのようなリターンを得るか」という高度な投資家としての振る舞い が可能になります。

結びに代えて:人事は「投資支援インフラ」を整えよ

高橋氏の言葉通り、人的資本経営の本質はステークホルダーの利益を一致させるビジネスモデルの構築 にあります。

2026年、人事が取り組むべきは、従業員に「自律しろ」と精神論を解くことではありません。従業員という「投資家」が、自らの知的資本を最大化できるよう、精緻なスキル単位で可視化された「スキルのインフラ」を整備することです。

あなたの組織は、従業員という名の「投資家」に、納得感のある「投資判断の材料」を渡せていますか?

引き続きこちらの書籍もよろしくお願いいたします。


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