雷が鳴るたびに思い出す友達
私は雷が苦手だ。
空が暗くなり始めて、
遠くでゴロゴロと音がすると、
胸の奥がざわつく。
その理由は、
小学2年生のある日の出来事にある。
その日、
私は仲良しだっためぐちゃんと
一緒に学校から帰っていた。
学校から家までは、
歩いて25分ほど。
帰り道の途中で、
空が急に暗くなり、
雷が鳴り始めた。
ポツポツと降り出した雨は、
あっという間に本降りになった。
でも私たちはまだ7歳か8歳。
雨宿りをするなんて発想もなく、
ただ家へ帰るしかないと思っていた。
傘もない。
逃げ込む場所も知らない。
ただ、
どんどん近づいてくる
雷の音だけが怖かった。
歩き続けるうちに、
気づけば二人とも泣いていた。
帰り道の三分の一ほどまで来た頃には、もう大雨だった。
雷は空を割るように鳴り続け、
私たちは二人して大泣きだった。
手をぎゅっと握り合いながら、
泣いて、
また泣いて。
どうやって帰ったらいいのかも
分からなかった。
そんな時だった。
向こうから、
めぐちゃんのお父さんが
歩いて来るのが見えた。
たまたま仕事が休みで、
心配になって
私たちを探しに来てくれたらしい。
その姿を見た瞬間、
安心したのを今でも覚えている。
お父さんが真ん中に立ち、
私たちは両側からしがみついた。
雷が鳴るたびに、
さらに強くしがみついていたと思う。
こうして私たちは、
無事に家へ帰ることができた。
でも、
あの日の恐怖は消えなかった。
それ以来、
私は雷が大嫌いになった。
大人になった今でも、
雷の音を聞くと
あの日の気持ちを少し思い出す。
そして、
めぐちゃんとの思い出も。
めぐちゃんは小学4年生の時、
遠くへ引っ越してしまった。
引っ越しの日、
私はもう一人の友達と一緒に
見送りに行った。
笑顔で手を振ったけれど、
家に帰った途端、
私は大泣きした。
それくらい大好きな友達だった。
高校生になった頃、
突然めぐちゃんが
私の家を訪ねてきてくれたことがある。
久しぶりの再会だった。
けれど、
また時が流れ、
連絡は途絶えてしまった。
そして一昨年。
あの日一緒に見送りに行った友達が、
どうにかしてめぐちゃんを探し出し、
再会の場を作ってくれた。
30年以上ぶりの再会。
少し緊張していたのに、
会った瞬間にそれは消えた。
そこにいたのは、
あの頃と変わらない笑顔の
めぐちゃんだった。
話しているうちに、
めぐちゃんが突然言った。
「覚えてる? あの雷の日」
もちろん覚えている。
忘れられるはずがない。
めぐちゃんも、
あの日のことが
ずっとトラウマになっていたと
話した。
やっぱりそうだったんだ。
二人とも同じだった。
そして、
お父さんが今でも
私のことを覚えてくれていると
聞いた。
それがなんだか
とても嬉しかった。
私にとって雷は、
今でも大嫌いな存在だ。
できれば鳴らないでほしいし、
近づいてほしくもない。
でも不思議なことに、
あの日の雷がなければ、
こんなふうに何十年も経ってから
同じ思い出を語り合うことも
なかったのかもしれない。
大嫌いな雷なのに。
気がつけば、
私たちの友情を
ずっとつないでくれていた。
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