熱帯夜と金魚 #シロクマ文芸部【短編小説】
熱帯夜が来た。あっという間に猛暑となってしまったこの頃。寝苦しい夜。こういう日に限ってエアコンが故障してしまった。
扇風機が風を一生懸命に送ってくれるが、汗が止まらない。汗が顔を伝っていくのがわかる。伝う感覚で首筋を掻いた。眠れない。なんだか息も苦しくなってきたと思って、目を開ける。
頭の上をスーっと何か通っていく。金魚みたいな。見間違いか?いや、金魚だ。ベッドの上にいる自分のさらに上、いるはずのない空間に確かに優雅に泳いでいる。息苦しいのはそのせい?
ベッドの上で眠れないと悩む度、頭上で泳ぐ金魚は増える。赤い金魚。黒い金魚。デメキン。あんまり種類はわからない。段々色とりどりになってきた。こんな暑苦しいのに、よく優雅に泳げるなぁ、とぼんやり眺めた。ゆったりと、でも優雅に金魚たちは泳いでいく。見ているとなんだか眠くなってきた。身体も冷えてきて、身体が船を漕ぐようにゆらゆらし始めた。
朝焼けの空。朝の光で目が覚める。なんだか妙な夢を見たなと目を擦り、身体を起こした。あの金魚たちはいなかった。何気なくテレビをつけると、「姿を眩ませた金魚?無事に元に帰る」と謎のニュースがやっている。
「次の日の祭りで出そうとしていた金魚達がいなくなってしまって、初めは盗まれたと思ったんです。そしたら、朝方には元に戻っていて。いやぁ、ひとまず、無事に帰ってきてくれて良かったですよ。」ホッとした顔で店主がインタビュアーの質問に答えていた。
テレビの画面が金魚達を映す。
もしかして、昨日の金魚って…。
真相は不明だが、テレビに映る金魚達は今日も優雅に泳いでいた。
小牧幸助さんのシロクマ文芸部
お題「熱帯夜」に参加しました。
