雨が止んだ、その理由。|KOYO.RION 沖縄編 第5話
台風の影響が残る沖縄で迎えた、こうようとりおんの結婚式当日。
会場で家族が待つ時間と、雨が止んで空が変わった瞬間を父DECKYの目線で綴る第5話。
― KOYO.RION 沖縄編 第5話 ―
結婚式当日の朝。
空はまだ曇っていて、雨も少し残っていた。
このまま降るんかなと思いながら会場へ向かったけれど、
あの日の空は、あとから思うと少し不思議やった。
結婚式会場のホテルに着いた。
車を降りた瞬間から、
「さすがやな」と思わせてくれる落ち着いた雰囲気があった。
エントランスにはドアマンの方が立っていて、駐車場を尋ねると、
「2階へお停めください」
とのこと。
雨も降っていたし、近いならそれで十分やと思って、
みんなで2階へ車を停めてホテルへ向かった。
スロープを歩いている途中、ふと1階の駐車場が目に入った。
そこには障害者用の駐車スペースがあった。
その時、
「あっ、しまった」
と思った。
ちゃんと障害者用の駐車カードも持っているのに、
その場では普通に停めて、あとから気づく。
身体が悪くなってから、そういうことが時々ある。
今回も少し足を引きずりながら歩くことになった。
といっても、周りから見ればほとんど分からないくらいで、
自分でもつい忘れてしまう。
それも今の自分なんやろなと思う。

ホテルの中に入ると、
結婚式らしい案内がすぐに見えるのかと思っていたけれど、意外とそんな感じでもなかった。
りえだけは事前に場所を聞いていたので、
ひとまずそれまでは自由時間みたいな空気になった。
妹たちもまだ到着していなかったので、
「せっかくやし、コーヒーでも飲もうか」
ということになって、レストランでピザを頼んでゆっくり過ごした。
結婚式まで、まだ少し時間がある。
こういう時の待ち時間は、長いようでいて、あとから思うとあっという間やった気もする。
そのあいだ、りえは一人で美容室へ向かった。
ヘアセットをしてもらうためやった。

しばらくすると妹たちも到着して、
みんなで近況を話しながら過ごした。
こういう何気ない時間も、
家族が集まった日やからこそ生まれる時間なんやと思う。
一時間ほどして、りえが戻ってきた。
「おっ、きれいになったやん」
そう思って見ていたら、ふと気づいた。
「あれ、メイクは?」
聞いてみると、
「ホテルでメイクもしてもらえると思って、薄めにしてきた」
とのこと。
どうやら、してもらえたのはヘアセットだけやったらしい。
そんなところも、りえらしいなと思って、ちょっと笑ってしまった。
でも、十分きれいに仕上がっていた。

時間が近づいてきて、スタッフの案内で控室へ向かった。
そこでジュースをいただきながら、
りおんちゃんのご家族にご挨拶をした。
こういう場面になると、
それまで別々やった家族が、少しずつ一つにつながっていく感じがする。
しばらくして、こうようとりおんも控室へやって来た。
二人とも本当にいい笑顔やった。
緊張していないわけではなかったと思うけれど、
それよりも、今日を迎えた嬉しさの方が大きそうに見えた。
村中家、野田家。
兄弟、親戚、友人。
みんなで写真を撮って、笑い声が続いて、
控室の空気も少しずつやわらかくなっていった。
窓の外を見ると、
雨の向こうに沖縄の海が見えた。
雨の海も、それはそれで悪くない。
そんなことを思いながら、
いよいよチャペルへ向かう時間になった。

その時やった。
さっきまで降っていた雨が、
いつの間にか止んでいた。
空も、少しずつ明るくなっていた。
チャペルへ着く頃には、
目の前に青い空が見えていた。
沖縄の海と空が、そこでようやく一つにつながったみたいに見えた。
朝からずっと空模様を気にしていたぶん、
雨が止んだだけでも十分うれしかった。
しかも、その先にあんな青空まで待っていた。
その空を見ながら、
僕はふと、りおんちゃんのお母さんのことを思った。
きっと二人に、
ええ景色を見せてやりたかったんやろな。
もちろん、本当のことは分からない。
ただ、あの時はそんなふうに思えた。
理屈では説明しきれないことが、
人生には時々ある。
あの日の空は、
僕にとって、たしかにそういう空やった。
さあ。
いよいよ、二人の新しい時間が始まる。
