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サグラダ・ファミリアは、なぜ何度も「完成」するのか

How Many Times Has the Sagrada Família Been "Completed"?

最近、「サグラダ・ファミリアが完成した」というニュースが大きく報じられた。

そんなニュースの見出しを見て、
「ついに完成してしまったのか」
「未完成なのがサグラダ・ファミリアの一番の魅力だったのに」

と思った人も少なくないのではないだろうか。

でも、実は完成したのは、サグラダ・ファミリア全体ではない。

高さ172.5メートルの「イエス・キリストの中央塔」、そしてその頂上に設置された高さ17メートルの十字架が「完成」し、これによってサグラダ・ファミリアは世界一高い教会となった。

一方で、正面入口となる「栄光のファサード」はまだ完成しておらず、工事は2030年代まで続く見込みだという。

つまり、完成したというニュースは間違ってはいないけれど、実はまだ完成していない。

2022年にサグラダ・ファミリアを訪れたときの写真。
絶賛工事中。

実は、「サグラダ・ファミリアが完成した」のは、今回が初めてではない。

1885年には、クリプト(地下礼拝堂)が「完成」し、最初のミサが行われた。

2010年には、教会内部が礼拝できる状態まで「完成」し、教皇ベネディクト16世によって教会として正式に使用を始める宗教儀式が行われた。

2021年には、「聖母マリアの塔」が「完成」した。

そして2026年には「イエス・キリストの中央塔」が完成した(イマココ)。

ニュースは「完成」と報道し、建築家は「まだ工事中」と言い、教会は2010年から使われている。
これがサグラダ・ファミリアの通常運行なのだ。

「栄光のファサード」が完成したときも、おそらくまた「ついに完成」という見出しがニュースメディアに踊るだろう。

「受難のファサード」の頂上も、足場や資材で散らかっていた。
正面に見えるのがつい先日完成した「イエス・キリストの中央塔」。
頂上からはバルセロナの街並みが一望できる。
果物のモザイクの装飾がなんともガウディらしい。

一体、サグラダ・ファミリアは何回「完成」するのだろうか。

MEMO|完成予定時期の変遷
公式の完成予定時期は、これまで下記のように変更が重ねられている。
2000年代に入ってからは、2026年に「完成」とされていたが、
2024年になって「主要部分のみ」と完成予定が変更になった。

もうひとつ大きな疑問がある。

1882年に建設が始まったサグラダ・ファミリアだが、なぜこんなにも完成まで時間がかかっているのだろうか。

理由はひとつではない。

まず、そもそも設計者であるアントニ・ガウディ(1852〜1926)は、完成時期を気にしていなかったと言われる。

本当に本人が言ったのかは定かではないが、完成時期を問われ、
"My client is not in a hurry."
「私の依頼主(=神)は急いでいません」
と言ったという逸話も残っているらしい。

これだけ大掛かりな建設事業である。
現代の常識で考えたら、完成時期がわからないまま建て始めるなんてありえないが、サグラダ・ファミリアは、「いつ完成するか分からない」ことを前提に建て始められている。
これがサグラダ・ファミリアという建築の異質なところでもある。

また、建設資金は基本的に寄付だけで賄われてきた。
そのため、寄付が集まらない時期には工事は縮小され、ときにはほとんど止まることもあった。

近年は、世界で最も有名な「未完成の建築」として世界中から観光客が訪れるようになり、その入場料収入を建設資金に充てられるようになったことで、工事が一気に加速した。

淡い光が降り注ぎ、柱が森のように広がる
空間の美しさは言葉にならない。

1926年にはガウディが死去する。

ガウディ自身は、自分の生きている間に完成しないことを見込んでいたと言われる。
そのため、完成図だけではなく、石膏模型や逆さ吊り模型などを残し、後世の建築家がプロジェクトを引き継げるよう準備していた。

つまり、この建築は最初から、ガウディと、後世の建築家たちによる「共同プロジェクト」だったのだ。

しかし、1936年のスペイン内戦で工房が焼失し、図面や模型、写真の多くが失われた。

さらに、ガウディ特有の複雑な曲面は当時の建築技術では再現が難しく、
本格的に建設が加速したのは、CADや3Dモデリングなどの技術によって
ガウディが石膏模型で考えていた複雑な曲面をデジタル化できるようになってからだという。

全体は未完成なのに、生誕の塔は並行して修復工事中。
外壁をよく見ると、いかに複雑な曲面かが分かる。

現在建設を進めている建築家たちの多くは、ガウディ本人を知らない。
でも、彼らは「ガウディならどう考えるか」を考えながら建築を進めている。

サグラダ・ファミリアは、ガウディの作品ではなく、ガウディから「始まった」作品と表現するほうが正確なのかもしれない。


私たちは、「完成」は一度だけ訪れるものだと思っている。
しかし、サグラダ・ファミリアは違う。

礼拝できるようになった日も、ひとつの完成。
世界一高い教会になった日も、ひとつの完成。
そして「栄光のファサード」が完成する日も、きっとまたひとつの完成になるだろう。


サグラダ・ファミリアは、一度も完成していない建築ではない。
1885年にも、2010年にも、2021年にも、2026年にも完成してきた。
そして、おそらく2030年代にも、また完成する。

「完成」とは、工事が終わることではない。
「ここまで来た」と人が意味を与えた瞬間に、新しい「完成」が生まれる。

ファザードの頂上までは細い螺旋階段を登る。
なんだかカタツムリみたいだけど、これもガウディの意図なのかな?

私たちは、「完成」を一度だけ訪れるゴールだと思いがちだ。

でも、サグラダ・ファミリアを見ていると、「完成」とは終わりではなく、
その時々で意味のある節目なのだと思えてくる。

人生にも、たった一つの完成形があるわけではない。

英語で初めて冗談が通じた日。
一人旅が怖くなくなった日。
諦めていた挑戦にもう一度踏み出せた日。
世界の見え方が少し変わった日。

そんな、自分だけの「ここまで来た」がいくつもある。
その一つひとつが、自分だけの「完成」なのかもしれない。


最後にひとつだけ。
もし、「いつか観に行きたいと思っていたのに、完成してしまったのか」と残念に思っていた人がいたら、安心してください。
サグラダ・ファミリアは、まだ完成していません。

写真や映像でも美しい建築ですが、その空間に身を置いた瞬間、感動は何倍にも膨らみます。
そのためだけにバルセロナへ行く価値がある建築だと、私は思います。


Key Idea in English
Antoni Gaudí's Sagrada Família is not simply an unfinished building. It has reached different forms of "completion" in 1885, 2010, 2021, and 2026—and will likely do so again. Its 140-year journey reflects Gaudí's vision, donation-funded construction, the loss of original plans during the Spanish Civil War, and modern technologies such as CAD and 3D modeling that made his complex designs possible. Perhaps completion is not when construction ends, but when we recognize that something meaningful has been achieved. Life may be much the same—not one final destination, but many moments when we can quietly say, "I've come this far."

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