矢印だけの散歩アプリ「Dokoka」で大切にしていること
「Dokoka」という散歩アプリを公開した。
まず3月にブラウザ版で出したあと、
4月にiOSアプリ版を公開。
それから先日、ようやくAndroid版も出した。
なんとなくAppleの審査が厳しいイメージがあったが、やってみたらAndroid版のほうが10倍大変だった。「出す前に12人以上にテストしてもらう」というルールが面倒すぎる。
ともかく無事に両アプリをリリースできたのだが、

iPhoneアプリのダウンロード数が1万を超えた!やったー!!!
Androidは1500ダウンロードくらいで、Web版は2ヶ月で10万アクセスくらい。
すごい個人開発アプリはもっと全然桁が違うし、そもそも無料で広告もないのでなんの収益にもならない。サーバー代やAPI料金だけがかかり続けている。それでも楽しい。
もともとは自分が遊ぶために、自分の端末専用で作ったものだった。以前から「どこを向いてるかかわからないコンパスが欲しい」ということを各所で発言していたのだが、生成AIの発展により自分で作れるようになった。
そもそもどういうアプリかを簡単に説明すると、

1.開くと、どこかへの矢印と距離だけが表示される
2.到着すると答え合わせが出る
以上である。簡単すぎる。
お散歩の距離を指定したり、写真や日記を記録できたりもするけど、基本的にはこの2ステップだけ。これが結構楽しくて、近所なのにミステリーツアーに連れて行かれるようなワクワクが味わえる。
距離が「直線距離」というのもポイントで、途中で川や路地に阻まれて大きく迂回することも多い。結果、知らない道がひとつは見つかるような散歩ができる。
5つの方針
このアプリを運営するにあたって、ふわっと持っている5つの方針がある。
1.遊び仲間をつくる
アプリを公開した理由は、アプリを出すところまで経験してみたかったのがひとつ。もうひとつが、遊び仲間を増やしたかったということだ。
SNSで「Dokoka」を検索すると、このアプリで遊んでいる人がたくさんポストしている。
出先からふと思い立ち、はじめて「Dokoka」を使って5キロほど歩いてみたら茗荷谷に着いた 方角だけが表示されて知らない街に行けるのかなり楽しい pic.twitter.com/x6ZvUhBFgb
— 生湯葉シホ (@chiffon_06) May 17, 2026
これを眺めるのがとても楽しい。知らない道を見つけた、みたいな感想が一番グッとくる。その瞬間って楽しいよね!!!って思う(生湯葉シホさん、ありがとうございます!)
日本中で毎日、実際にいろんな道を歩き回ったり、迂回している人たちがいる、というのは想像力を掻き立てられる。
小学生低学年のころ、「たか鬼(高いところへ逃げる鬼ごっこ)」と「こおり鬼(タッチされると動けなくなる鬼ごっこ)」という二大メジャー鬼ごっこが、マンネリ化を迎えていた。
そこで当時の僕は、「たかこおり鬼」という二つの鬼ごっこを混ぜたルールを考案した。するとひととき、他の学年まで流行るほどのブームになったことをよく覚えている。ただ組み合わせただけだし、一瞬で廃れたが、自分の考えた遊びに、知らない上級生までが夢中になっていて、なんだか遊び仲間が増えたような嬉しさがあった。
アプリを運営する楽しさって、これに近い。普段書いている「文章」という媒体は限りなく一方通行で、それが魅力でもあると感じているが、アプリはユーザーのアクションを伴う。するとなんだか、遊びの輪が広がっていくようで楽しいのだ。この感覚を大事にしたい。
2.収益化しない
収益化はしていない。広告も入れていない。たぶん今後もしないと思う。遊び仲間を増したいからだ。
それなりの時間も投じているし、費用もかかっている。端的に赤字である。しかしこれは、例えばゴルフ好きの人が、週末とお金を費やして友達とゴルフに行く感覚と変わらない。
とはいえ「費用をそれをトントンにするくらいの収益を得た方が、持続的にでは?」とは思う。たとえ大した金額でなくても、赤字でないことはとても重要だ。何事も楽しいうちはいいが、そうでなくなった時に、赤字はやめる理由のひとつとしてのしかかっている。
noteはメンバーシップをやってるからこそ続けられているし、収益化することで生まれる楽しさというのもあるだろう。でも遊び仲間が増える楽しさと天秤にかけると、まだまだ優先度は低い。
3.便利にしない
遊びは便利である必要がない。例えば「目的地を指定する」みたいな普通の地図アプリと同じことはしないのは当然として、便利なカスタマイズ機能もあまり入れていない。
このアプリはCaludeCodeで作ったのだが、最初にAIに作ってもらった時は、目的地のジャンルを選べたり、通知のタイミングをカスタマイズできたり……といった細かい設定機能がふんだんに盛り込まれていた。すごいなと驚嘆しつつ、全部削除した。便利すぎるから。また、個人的な好みとして、画面を極力シンプルに保ちたいという理由もある。
一方で、AIがこだわらない部分に、こだわったりもした。
例えば目的地のスポットは、見つけたときになるべくちょっとした嬉しさが味わえるような場所にしたり、同じ方向ばかり差さないようにしたり。便利さとは別のベクトルの、遊びとしての楽しさを重視した。
この辺の「AIが平均的な仕様を提案してきた時に、どう緩急をつけるのか」というのは、アプリに留まらず、AIと創作する際の重要なポイントだと感じている。(それもnoteに書きました)
4.旅の好みを込める
旅が好きだ。旅の愉しみの本質は、目的地そのものではなく、道中で寄り道したり、偶然なにかを見つけたり、道に迷ったりする過程そのものにあると思う。しかしスマホの普及で、そういった旅をすることはどんどん難しくなっている。
だからと言って、「スマホを捨てよう」のような方向に振り切ることには、個人的には抵抗がある。あまり自然ではないと思うし、頑張って時代に逆行するのはなんだか悔しい。
それよりは、テクノロジーがあるからこそ生まれる旅みたいなのを追求したい。それで「部屋でエアロバイクで日本縦断する」みたいないろんな試みをしてきた。そのうちの一つが、今回のアプリとなった。
Dokokaは目的地を目指すアプリではあるものの、旅においては、目的地に到着することはまったく重要ではないとも考えている。そこでDokokaには「保留」というボタンをつけた。
保留を押すと、散歩はそこで終わる。すると記録一覧に「どこか」への旅として、到着した旅と並列で記載されるのだ。

世にある旅行の記録アプリは、どれも着いたことが前提にされている。Dokokaでは、着いた旅と着かなかった旅、どちらも並列に扱いたいと思った。
(ちなみに保留した旅は、また再開することもできる。やり残したことを再訪する旅が、最も豊かだと考えているためだ。)
5.以上を無視して毎日アップデートする
ユーザーからのフィードバックは、なるべく全て対応するようにしている。
不具合報告は今のところ数日以内に全て反映しているし、要望も9割くらいは反映している。アップデートが日課になっている。朝起きて、まずどんなフィードバックが来ているのかを見て、反映するのが、まるで植物に水をやるような感じがして楽しい。

たとえば、目的地の距離を指定できる機能は、要望の多かったものだ。
この距離指定、実は最初はあえて作らなかった。「3.便利にしない」に反すると考えたためだ。距離も完全ランダムの方が、楽しいだろうと思った。だがあっさり対応した。
そう、これまでの5つの「大切にしていること」には優先度がある。2~4で長々と書いたこだわりは、1の「遊び仲間を作る」ためには、全部無視してもいいと思っている。
前職では業務ソフトのプロダクトマネージャーをやっていたが、プロダクト作りでは、「ユーザーの声を全て聞いてはいけない」という鉄則がある。フィードバック全部に対応はしていられないし、逆に全部に対応してしまうと、特徴のない平凡なプロダクトになってしまう。誰でも使えるようなプロダクトは、誰も使わないのだ。
だがDokokaはプロダクトというよりは、小学生の時に考えた「たかこおり鬼」のような遊びに近い。一緒に遊ぶためには、「こうやって遊びたい」という参加者の声をできるだけ反映すべきだと思う。遊びのルールをみんなで考えることで、どんどん面白く過ごせればいいと思っている。
今後やりたいこと
1万ダウンロードを記念して、新しい機能を作った。

目的地を友達と共有できる機能だ。
コードを発行して、それを入れれば、発行した人と同じ場所を目指せる。一緒に散歩してもいいし、全然違う場所からそれぞれ向かってもいい。サイクリングやツーリングなどにも使えるのではないか。
これを使って、誰が最初にたどり着けるか?という企画をやったら面白いと思います。オモコロチャンネルさん、どうですか!?
他にもやりたいことはたくさんある。
近頃、海外からの利用が多い。といっても日本語にしか対応してないので、旅行先や、(たぶん)現地在住の日本人の方が楽しんでいるのだと思う。それにしてもシリコンバレーからオーストラリア、フィンランドやチャドまで、場所がかなり多様だから、海外版に対応したい。散歩はグローバルなはず。
あるいは、長期的にはたくさんの人が歩き回っているというこのこと自体が、「なにか」にならないかなと思っている。
ユーザーがこれまで歩いた距離を合算すると、余裕で地球一周を超えている。しかもみんな、多かれ少なかれ、道中で迷っているはずなのだ。この「迷い」の記録が貯まると、人はどう歩くのか —— ひいては人はなぜ歩くのか?という壮大な問いに、どこかで合流しないかなと、ひとりで妄想している。
遊びを外に開くと、そんなふうに勝手な想像を膨らませられる。
Dokoka、よければ一度遊んでみてください!
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