二月のとある朝 (短編小説と裏話)
冷凍庫をがさごそとしていると、壮真が起きてきた。
「おはよう。」
「おはよう。」
「窓につららできてた。」
なんということだ。雪の滅多に降らない地で、それほどにも冷え込んでいるとは。
「え、そうなの。道と電車どうなってるんだろ。」
「電車遅れてるっぽい。」
「うわー。ひとまずパパと悠くん起こしてきて。」
「わかった。」
早く起きられたし少し凝ったものをと思っていたが、作戦変更だ。すぐ揚がるエビフライにしよう。
じゃがいもを洗ってレンジへ入れ、玉子焼きを作り始める。プチトマトやブロッコリーもあるし、なんとかなる。
お弁当は、長男の壮真が幼稚園へ通い始めた頃から作っている。息子達がよく食べるようになったのもあり、レンチン調理のお弁当用冷食はほとんど買わなくなったけれど。
彼らが自分で身支度をできるようになるにつれ、私のお弁当作りのスピードも早くなっているのか。つくづく、親も子どもに育てられているのだと気付かされる。
レンジから出して切ったじゃがいもとエビフライを揚げるそばで、男性陣3人がそれぞれ自分の朝食を準備する。いつの間にか消えることがあるので、できたおかずはすぐにカウンターへ持って行く。
「電車遅れてるみたいだし、道も凍ってるかも。
早めに出て、歩いて行きなよ。」
「はーい。」
揚げ物に中まで火が通っているのを確認し、コーヒーを淹れる。第一ラウンド終了!そんな言葉が浮かぶ。
3人が起きた順に食べ終え、洗面所へ向かって行く。平日朝の大半は、台所でその光景を眺めながら食べるのがお決まりだ。
悠真が洗面所から出てきたのを見て、トーストをお皿に置く。お弁当を詰め始めると、通学鞄を担ぎ、エナメルバッグをさげた壮真が玄関へと向かって行った。
「行ってきまーす。」
「ちょっと待ってー!」
大急ぎでお弁当を詰め、お箸やナフキンと共にランチトートへ入れ、壮真へ差し出す。
「はい、忘れ物。」
「あ。」
壮真がどこか気まずそうな顔をする。
「今日要らなかったっけ?」
「いや、昼はいるんだけど…。」
そこへ、悠真がニヤニヤしながらやってきた。
「もしや例の彼女と食堂で食べるとか?
先輩から聞いたよ。兄ちゃんが告られてて、OKしてたって。
兄ちゃんが食べないなら、俺の早弁用にさせてもらうよ。」
「誰から聞いたんだよ。まぁその通りなわけで…。」
どうりで、うちでは見かけない可愛らしい包み紙がゴミ箱にあったわけだ。
「おめでとう!パパよりだいぶ早いじゃない。また写真見せて。行ってらっしゃい。」
2人から見下ろされると、三輪車のペダルにさえ足の届かなかった頃の壮真と悠真を思い出す。今や、彼らの肩が私の頭を悠々と越えている。「行って来ます」の声も、すっかり低くなった。
「どうかした?」
後ろから、2人とそっくりな声がした。
夫は早弁経験がないらしい。背の低い私と10cmほどの身長差だ。
ここまで大きくなれば、息子たちから「身長が欲しかった!」と恨まれることはないだろう。まぁ本人たちがどう思うかはさておき、声は似てくれてよかった。
「そういや、バレンタインどうだった?」
うるさがられるだろうが、フィードバックの大切さは今晩にでも息子たちに伝えておこう。
※下記コンテスト及び2つの企画への参加記事です。
<コンテスト>
<企画>
フォローさせていただいている方の、2週間以上前の記事を読むという日々が続いておりました。
ようやく追いついてまいりまして、久々にコンテストやお題企画への参加が叶いました。
私の息子たちは幼稚園児と乳児ですが、こんな関係になれたらと思い、書いてみました。
昨年、長男が幼稚園へ通い始めてから、週3前後でお弁当を作るようになりました。
出来上がったら長男に確認してもらい、「OK」をもらうのがお決まりです。
撮影していても誰かに見せるという機会はなかなかないので、年中になってからの長男のお弁当の写真を載せてみます。




年少のときと中身はさほど変わりませんし、超地味弁ですし、同じようなものばかりです。
ただ、幼稚園児はまずお弁当を完食できることが大事で、それが大きく育つきっかけにもなるかなと。
また、私は時折お弁当を題材に記事を書くのですが、それは母が毎日お弁当を作ってくれていたというのもあるかもしれません。
学生時代は大してありがたみをわかっておりませんでしたが、自分で作るようになってから、母はよくぞ毎日作ってくれたなと思うようになりました。
幼稚園から高校まで偶然お弁当の園や学校でしたし、弟もおりましたから、母は一体いくつお弁当を作ったのだろう、と。
お弁当に対して、どことなく親子や時の流れを感じるゆえ、ネタが思いつきやすいのでしょう。
息子が作ったお弁当をちゃんと見てくれるのは、せいぜい幼稚園まで。
その後は、今以上にこちらの言うことを聞いてくれなくなるでしょう。
大きくなればなるほど、悩みや衝突が増えたり深刻になったりするに違いありません。
ただ。
その山を親子共々乗り越えて、お互いが穏やかに語り合えるときがおとずれればよいなと。
そして、まだまだ先でしょうけれど…。
身長を越され、(あわよくば学生時代に)彼らに彼女ができる日も、待ち遠しいです。
