【HR豆知識Vol.32】APTD&CPTD(ATD):HRのグローバル資格(人事キャリア・人事/組織開発/人材育成の資格)について
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において重要になる中、日本に住む約1億人にはグローバルでの最新の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。
「資格を取ったらどう?」
2018年の夏に渡米留学をした私は、HRの専門家でUCバークレーで40年教壇に立つCristina G Banksの授業をとる機会に恵まれました。最後のアサイメントも提出し成績が出たタイミングで、「将来どうしようかな」と思っていた私は、改めて彼女にキャリアのことを相談しに行きました。

「私はもっとこの人事や組織の領域においてもっと専門性を身に着けたい。どんな学びをするべきなのか?」
「チームビルディング(MBTIやストレングスファインダー)やコーチングに関する資格などはアメリカでも評価されるものか?」
「アメリカで人事のポジションにつくことを目標としたら何が必要か?」
そんなことを彼女に聞いてみました。
そこで
「資格を取ってみたらどう?アメリカにはHRCIやSHRMという団体が"人事"というポジションに関する資格を提供していて、あなたが私の授業で学んだ事とも繋がっているから"人事のプロフェッショナル"を目指すなら勉強する価値もあると思うし、就職などにも活きると思うよ」
これが私がHRの資格勉強をするきっかけとなる会話でした。
私が取得した資格は
2025年5月時点で、結果的に4つの公式資格(SHRM-SCP、SPHRi、GPHR、CPTD)を保有することとなりました。今回はATDの資格内容について解説をしていきたいと思います。

ATD資格とは?
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
2023年末時点で、100か国以上の専門家がこの資格を活用していると言われています(正式には非公開)。以下に特徴を3つ記載してみます。
特徴① キャリア段階に応じた2階層の資格体系
ATDの資格は、キャリアの発展段階に応じて以下の2種類が設けられています。

APTD(アソシエイト):実務経験3年以上の人材育成担当者向け
CPTD(プロフェッショナル):実務経験5年以上の上級TDプロフェッショナル向け
ATDの資格体系は、「人材育成」「組織開発」「戦略的パフォーマンス向上」などの包括的な分野をカバーしており、マネージャーやシニアHRBP、組織開発責任者など、幅広い職種に対応します。
特徴② グローバルスタンダードな組織開発を行いたい方向き
ATDの認定は、SHRMやHRCIと異なり、戦略的な人材育成とビジネス成果の関連性に重きを置いています。特にCPTDでは、経営的視点でのインパクト測定や、組織文化・変革管理といったテーマが強く問われます。これにより、単なる「教育担当者」から「戦略的人材開発責任者」へのキャリア転換が可能です。
※資格別に各領域での必要スキル定義が異なります。

特徴③ 試験範囲の網羅性と実務重視の出題
CPTD/APTD試験は、以下の3大ドメインから出題されます。
Building Personal Capability(自己能力開発)
Developing Professional Capability(専門スキル開発)
Impacting Organizational Capability(組織成果への影響)
試験問題はすべて多肢選択式で構成され、理論知識と実務応用力を問う実践的内容です。試験は英語で実施され、ビジネス文脈での英語リテラシーが求められており、TOEIC900点レベルの英語が必要かもしれません。

ATD認定資格のメリット(昇格・賃金)
「ROI Institute が ATD 認定機関のために 2022 年に実施した調査によると、認定者の 92.6% が認定を取得し、ATD 資格を維持した結果、人材開発に関する新たな洞察を得ました。」とレポートされています。

CPTD試験範囲の詳細

1. Building Personal Capability(個人能力の構築)
● Communication(コミュニケーション)
組織内外のステークホルダーと効果的に意思疎通する能力。口頭・書面・非言語による表現力、対話力、フィードバックの提供と受容が含まれます。
● Emotional Intelligence and Decision Making(感情知性と意思決定)
自己と他者の感情を理解・活用し、適切な判断を下す能力。自律性、共感、感情調整、倫理的判断力などが求められます。
● Collaboration and Leadership(協働とリーダーシップ)
チームや部門を超えて連携し、信頼を築きながら影響力を発揮する力。インフルエンス力やサーバントリーダーシップなどが含まれます。
● Cultural Awareness and Inclusion(文化的理解とインクルージョン)
多様な文化・背景を持つ人々との効果的な協働を実現する能力。バイアスの認識、多様性の尊重、公平な対応力などが問われます。
● Project Management(プロジェクトマネジメント)
プロジェクトを計画、実行、完了まで導く能力。進捗管理、スコープ管理、リスク管理、リソース配分などを含みます。
● Compliance and Ethical Behavior(コンプライアンスと倫理行動)
法令順守および倫理的基準を遵守し、信頼される職業人として行動する力。個人・組織の誠実性を維持するための行動規範の理解が必要です。
2. Developing Professional Capability(専門能力の開発)
● Learning Sciences(学習科学)
人がどのように学ぶかという理論的背景への理解。成人学習理論、モチベーション理論、記憶定着、スキャフォールディングなどが含まれます。
● Instructional Design(インストラクショナルデザイン)
効果的な学習体験を設計するプロセス。目標設定、カリキュラム設計、教材開発、学習成果の整合性などが含まれます。
● Training Delivery and Facilitation(トレーニング提供とファシリテーション)
対面・オンライン問わず、効果的な学習セッションを実施する能力。参加型学習、受講者の巻き込み、インストラクション技法などが求められます。
● Technology Application(テクノロジーの活用)
LMS、eラーニング、AIなどのデジタル技術を人材開発に応用する力。学習効果と効率の向上を図る技術リテラシーが必要です。
● Knowledge Management(ナレッジマネジメント)
組織の知的資産を収集・保存・共有し、再利用可能にするシステム設計と運用力。ナレッジシェア文化の促進も含まれます。
● Career and Leadership Development(キャリアとリーダー開発)
従業員のキャリア設計やリーダー育成を戦略的に支援する力。継続的成長の支援、パイプライン構築、ロールモデル設計などが含まれます。
● Coaching(コーチング)
目標達成や成長を支援するための対話技法。質問力、傾聴力、フィードバック力、変革促進力が問われます。
● Evaluating Impact(インパクト評価)
学習・開発プログラムが組織成果に与えた影響を測定・証明する力。KirkpatrickモデルやROI算出、ダッシュボード設計などが含まれます。
3. Impacting Organizational Capability(組織成果への影響)
● Business Insight(ビジネスインサイト)
自社ビジネスの戦略・財務・マーケット構造への深い理解に基づき、学習施策と経営目標を整合させる力。
● Consulting and Business Partnering(コンサルティングとビジネスパートナー)
社内外の関係者と信頼関係を築き、戦略パートナーとして提案・合意形成を行う力。ニーズ分析、ソリューション提案、ファシリテーション技術が求められます。
● Organization Development and Culture(組織開発と文化)
組織の構造やプロセス、文化を戦略に基づいて整え、変革を実現する力。サーベイ設計、エンゲージメント向上、文化診断などが含まれます。
● Talent Strategy and Management(タレント戦略と管理)
人材の採用・配置・育成・リテンションを戦略的に行う力。Succession PlanningやD&I戦略との連動も重要です。
● Performance Improvement(パフォーマンス改善)
業務プロセス・スキル・環境を分析し、組織の成果向上を図る介入策を設計・実行する力。HPI(Human Performance Improvement)に基づく分析が必要です。
● Change Management(チェンジマネジメント)
変革の推進・受容・定着を組織全体で実現するためのリーダーシップと戦略。ADKAR、Kotterなどのフレームワーク活用が含まれます。
● Data and Analytics(データと分析)
データを活用して意思決定を行い、学習・人材開発の効果を可視化する力。ダッシュボード設計、因果関係分析、予測モデリングが含まれます。
● Future Readiness(未来への対応力)
AI・ハイブリッドワーク・スキルシフトなど、変化する未来に備え、組織と個人が柔軟に対応できる準備力。スキルギャップ分析や未来スキル設計が含まれます。
どんな問題が出るのか?
さてここで実際にどんな問題が出るのかを少しご紹介していきたいと思います。問題は日々アップデートされますので、あくまでもイメージとして参考にして頂けると幸いです。
APTDサンプル問題(実務者レベル)
問題例:
Which of the following best describes the use of Kirkpatrick's Level 3 evaluation?
a)Learning retention
b)Behavior change at the workplace
c)Business impact
d)Participant satisfaction
正解: b)Behavior change at the workplace(職場での行動変容)
CPTDサンプル問題(戦略・上級レベル)
問題例:
A TD leader is implementing a new competency model across departments. What is the most critical first step?
a)Announcing the model company-wide
b)Aligning the model with organizational goals
c)Conducting a post-implementation review
d)Developing individual learning plans
正解: b)Aligning the model with organizational goals(組織目標との整合)
CPTD/APTD試験の特徴
受験方式:全問CBT(コンピューター上での選択式)
受験言語:英語のみ
試験時間:
APTD:3時間(115問)
CPTD:3時間(150問)
合格ライン:非公開(200-800点で500点以上が合格 ※70〜75%が目安とされる)
資格取得までの流れとおすすめの勉強方法
一般的には3〜6か月の準備期間が推奨されます。特にCPTDは実務経験と論理的思考が問われるため、単なる暗記では合格できず、様々なケースにおいても理論と実践を翻訳しながら適切な回答を選択する必要があります。
従って、CPTD/APTDの準備には「英語」「理論」「実務応用」の3軸が不可欠です。
英語による体系的な学習講座(e-learning)
各資格レベルに応じた模擬試験(解説付)
英語リーディング力を高めるための演習

「資格もいきなり英語だと大変そう」と思った方、もしHRとしてのキャリアアップや資格取得にご興味をお持ち頂けた方は、ぜひこちらでも資格取得に向けた学習が可能です。ぜひ参考にしてみてください。

著者:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座を展開している。
保有資格:
・SHRM-SCP(SHRM)
・CPTD(ATD)
・Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
・Global Professional in Human Resources (HRCI)
・The Science of Happiness(UC Berkeley)、他
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