【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.17】1.2 Emotional Intelligence 統合・実践編ーーー感情知性を「個人の内面」から「組織を動かす力」に変える
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発*を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域に興味を持って頂ける方が増えたら嬉しいです。
1. Emotional Intelligenceを改めて定義し直す
1.2 Emotional Intelligenceでは、以下のテーマを扱ってきました。
Self-Awareness(自己認識)
Triggers & Emotional Patterns(感情の引き金と反応パターン)
Self-Regulation(自己調整)
Empathy(共感の誤解と本質)
Emotional Intelligence & Leadership
これらを一言でまとめると、EIとは、
感情を「感じる力」ではなく、
感情を“情報として扱い、行動に変換する力”
です。
2. EIは「内省スキル」では終わらない
EIはしばしば、
自分を見つめる
感情に気づく
優しくなる
といった内向きの能力だと誤解されます。
しかしCPTDの文脈では、
EIは、組織に影響を与えるための能力
です。自己認識も、自己調整も、共感も、
すべては「組織との関わり方」を変えるためにあります。
3. EIの5要素は「循環構造」を持っている
EIは直線的なスキルではなく、循環するプロセスとして機能します。
自己認識する
トリガーに気づく
行動を選び直す
他者を理解する
関係性に影響を与える
この循環が回り続けることで、
組織の感情的成熟度
が少しずつ高まっていきます。
4. 実務で使うための「EI統合フレーム」
組織開発の現場でEIを使う際、次の5つの問いを自分に投げかけます。
① 今、自分は何を感じているか(Self-Awareness)
その感情は、判断にどう影響しているか
② 何が引き金になっているか(Triggers)
過去のどんな経験とつながっているか
③ 反応しているか、選択しているか(Self-Regulation)
今の行動は、衝動か意図か
④ 理解と同調を混同していないか(Empathy)
境界線は保たれているか
⑤ この感情は組織に何をもたらしているか(Leadership)
安心か、緊張か、学習か
この5つの問いは、EIのセルフチェックリストとして使えます。
5. EIが低い組織で起きる典型パターン
EIが個人に委ねられ、組織として育てられていない場合、次のような兆候が現れます。
会議で感情が語られない
不満が裏で噴き出す
正論が多く、対話が少ない
問題が「人のせい」になる
これらは、スキル不足ではなく感情を扱う構造がない組織の症状です。
6. HR自身のEIが、組織の上限を決める
組織開発において、HRは「感情のハブ」になります。
経営の不安
現場の怒り
自分自身の葛藤
これらをどう扱うかによって、
組織が扱える感情の範囲
が決まります。HR自身のEIは、そのまま組織のEIになります。
7. EIを育てる組織開発の実践ポイント
EIを組織に埋め込むには、次のような実践が有効です。
フィードバックと感情を切り離さない
問いの中に「感情」を含める
リーダーが感情を言語化する
判断プロセスを共有する
EIは、研修よりも日常の対話設計で育ちます。
8. Communicationとの統合
― EIがなければCommunicationは機能しない
1.1 Communicationで扱った理論は、EIを前提としています。
自己認識がなければ真正性は生まれない
自己調整がなければ感情対応はできない
共感がなければ対話は続かない
つまり、
EIはCommunicationのOS
です。
9. 1.2 Emotional Intelligenceのまとめ
EIは性格ではなく能力である
EIは内面ではなく影響力の話である
EIは組織文化を形づくる
HRのEIが、組織の成長上限を決める
ここまでが、CPTDが定義する感情知性の全体像です。
次回予告
次回からは、
1.3 Collaboration & Leadership(協働とリーダーシップ) に進みます。
なぜ「協働」はスキルではなく構造なのか
個人のEIが、どうチームに波及するのか
組織開発としてのチームづくりとは何か
を、EIと接続しながら解説していきます。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座を展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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