あなたは自分のことが好きですか?
最近、新たな交友関係が広がってきて「この人に興味があるな」「もっと知りたいな」と思うことが多々ある。
そしてその興味がある人のことを思い浮かべた時にふと思いついた質問がある。
「あなたは自分のことが好きですか?」
この質問に対しての相手の返答やその返答に対してのこちらの受け答えを通じて相手のことがかなり分かるのではないかとふと思うのである。
そこでまずはこの質問に対して想定できる返答を、フロイトの局所論と構造論に基づいて解釈しながら記載してみようと思う。
【局所論】
心を意識・前意識・無意識という3つの領域に分ける
・意識→今自覚している部分
・前意識→注意を向ければ自覚できる領域
・無意識→自覚できない領域
【構造論】
心の機能を役割ごとに分ける
・エス(イド)→本能的な欲求や衝動そのもの
・超自我→「こうあるべき」という道徳
・自我→エスと超自我の間の現実的調整役
ではこれらを踏まえて具体的にどんな返答が想定できるのかについてパターンを考察してみよう。
【好き・嫌いと返す場合】
①素直に「好きです(嫌いです)」と返す
→意識、エスと自我が一致
②自分で自分を「好き(嫌い)」というのもどうなのかと思い、恥ずかしさなどにより抵抗を示すものの「好きです(嫌いです)」と返す
→意識、超自我が軽く干渉
③好きな部分(嫌いな部分。あるいは好きな部分と嫌いな部分の両方)を挙げてその上で「好きです(嫌いです)」と返す
→前意識から意識化するプロセス
④自分で自分を嫌って(好いて)いるが、それを悟られるのが嫌なので「好きです(嫌いです)」と返す
→意識、超自我優位で自我が好き(嫌い)であるかのように演じている
⑤無意識では自分を嫌って(好いて)いるが、自分自身でそれに気づいておらず自分は自分が好き(嫌い)だと思っていると思い込んで「好きです(嫌いです)」と返す
→無意識に気づくことへの恐れ、好き(嫌い)であった方が都合が良いという気持ち、など
【中立】
①「どちらでもない」「好きでも嫌いでもない」等と返す
→意識にある感覚を素直に伝えているか、エス自体の感覚が薄いか、無意識にある感情に自覚が持てない、など
②「時と場合による」「日による」「こういう時は好きでこういう時は嫌い」など部分的な感想を返す
→矛盾した感情をそのまま自我が正直に受け止めているだけ、状況次第で変化しやすいために混乱して受け止めきれず部分的な話をしている、など
【その他】
①すぐに「分からない」と返す
→無意識にアクセスすることへの拒絶反応、考えたことがなく分からないので咄嗟に分からないと返答した、など
②しばらく考え込んで「分からない」と返す
→前意識に自我が接近したが意識まで上がらなかった、無意識に触れることを恐れて抵抗している、本当は分かっているが何らかの理由で公言したくない、など
③話を逸らす、誤魔化す、話題を変える等
→無意識からの逃避•抑圧、そもそも関心がない、など
④「あなたはどうなの?」と返す
→無意識に触れないために話を逸らしている、相手の意見に委ねてから返答したい、分からないからいったん相手に聞いてるだけ、など
想定できる反応を以上のようにざっくり分けてみたが、この反応だけでも随分相手のことがよく分かるような気がしてくる。
そもそもなぜ私がこの質問に着目するのかという理由は3つある。
一つは適度に思いもよらない質問であることにより取り繕いようのない純粋な反応が出ること、もう一つは自分で自分をどう思うかという自分というものが問われる質問であること、そしてもう一つは相手からどう思われるかということが若干気になってしまいそうな質問であることである。
これらの3つの要素によって、その人が自分自身とどのような関係性であるかが示されるのである。
しかし同時にこれらの3つの要素が揃っている質問というのは心理的に葛藤を抱える人にとってはややしんどい質問である可能性もある。
聞かれたくないことや目を背けたいことを聞かれているような感覚に陥る人も少なくない質問かもしれないことには注意が必要である。
またもう一つ注意が必要な点として、あくまでこの質問は文章などでやり取りするには不向きということである。
文章だとあれこれ頭で考えて返答を準備できること、かつその場の五感的な反応(声色やリズムや表情など)が得られないという点を踏まえると、できるなら対面でした方が良い質問であると考えている。
このような注意点が多いものの、やはりこの質問には大きな意味があるように感じてならない。
実際には、好きか嫌いか、あるいはそのどちらでもないのか、その答え自体が重要なわけではない。
それ以上にその答えに至るまでの表情や言葉の選び方などに現れる葛藤の有無や意識と無意識との関係性にその人が自分自身とどれだけ向き合えているかが表れるのである。
新しい人と深く関わっていきたいと思った時、この質問は相手を評価する為の道具ではなく、相手を理解する為の一つの手がかりとして、使えるのではないかとそのように考えているのである。
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