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『再生可能エネルギーと製造業』・・建前を脱して本音で向き合う 【第5話】東南アジアの再エネポテンシャル

製造業が再エネを「他人事」にしてきた理由


はじめに 第4話を振り返って

第4話では、米国のエネルギー転換を3つの視点で掘り下げました。シェール革命で天然ガス大国になり、IRA(2022年)で再エネへ投資を加速し、OBBBA(2025年7月)で政策が急変したこと。Microsoft 40GWのPPA契約、テキサスのデータセンター220GW申請、カリフォルニアのSB100で2025年に1日7時間の100%クリーン運用を実現していること。

振れ幅の大きい政策と、州ごとに異なる電力市場の集合体として、米国の現実を本音で書きました。

本日の第5話では、視点を東南アジア(ASEAN)に移します。

東南アジアは、日本の製造業のホームグラウンドです。

わたしも、AOTSの技術派遣プログラムでバリやジャカルタに滞在した経験、CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)でインドネシア協力チームリーダーとして関わってきた経験、ランプン州のPETリサイクル実証プロジェクトを進めてきた経験があります。だからこそ、東南アジアの再エネを語るときに、現場感覚を大切にしたいと考えています。

東南アジアは、「再エネポテンシャルの宝庫」でありながら、「化石燃料依存からの脱却に苦戦している地域」でもあります。

ベトナムは2017〜2021年に太陽光ブームを起こし、その後失速しました。インドネシアは石炭依存を深めながらも、シンガポールへの再エネ輸出を始めています。タイは分散型太陽光に活路を見出し、フィリピンは99GWの太陽光・風力ポテンシャルを抱えています。

そしてシンガポールは、国土の制約を「輸入」で克服する戦略を選んでいます。

それぞれの国に、まったく違う事情と戦略があります。「ASEANを一括りで語る」のは、本質を見誤ります。

本日は、3つの視点で東南アジアを掘り下げます。

第一に、ASEAN全体の現在地と2030年目標。
第二に、主要国の動向、3つの代表パターン。
第三に、シンガポールのASEAN Power Grid構想。
それでは、始めましょう。

第一章 ASEAN全体の現在地、2030年目標との距離

1.1 数字で見るASEANの再エネ

まず、ASEAN全体の再エネ動向を、最新の数字で押さえておきます。Enerdata、Ember、Global Energy Monitorの最新レポートを総合すると、以下のような姿が見えてきます。

設備容量ベース(2024年実績)
●    ASEAN全体の電源容量:約376GW
●    うち再エネ容量:約124GW(33%)
●    太陽光・風力(VRE)の稼働容量:約28GW

ASEANの2030年目標
●    一次エネルギー消費に占める再エネ比率:30%
●    電源容量に占める再エネ比率:45%

現状の課題
●    一次エネルギー消費の再エネ比率は、2015年21% → 2024年16%へとむしろ低下
●    2015〜2024年で電源容量+135GW、うち再エネ56GW、化石燃料79GW
●    インドネシアとベトナムが、エネルギー消費増の80%を占めている

つまり、ASEANは「再エネを増やしている」が、「化石燃料はもっと増やしている」という構造です。

電力需要の急速な伸び(毎年3〜5%)に、再エネの導入ペースが追いついていません。

1.2 太陽光・風力ポテンシャルは桁違い

ところが、ポテンシャルで見ると、ASEANは世界トップクラスです。

事業用太陽光・風力の計画中(prospective)容量
●    ASEAN全体:約220GW
●    フィリピン:99GW(世界第8位)
●    ベトナム:86GW(世界第9位)
●    両国合計:ASEAN全体の80%

洋上風力ポテンシャル
●    ASEAN全体:124GW(世界の運用中容量69GWの約2倍)
●    大半が陸上風力ではなく洋上風力に集中

LCOE(均等化発電原価)
●    ベトナム・タイの太陽光:$44〜50/MWh
●    フィリピン・タイ・ベトナムの陸上風力:$43〜73/MWh
●    ラオスの水力:$25/MWh(地域最安)
●    インドネシア・マレーシア・タイのバイオエネルギー:$59〜98/MWh

つまり、太陽光・風力のコストは、すでに化石燃料と同等または下回る水準にあります。

ポテンシャルもコスト競争力もある。それなのに、なぜ普及が進まないのか。

1.3 阻害要因、3つの構造的課題

わたしが現場で見てきた限り、東南アジアの再エネ普及を阻害する構造的な要因は3つあります。

第一に、送電網の弱さ
ASEANの多くの国は、島嶼や山岳が多く、送電網の整備が遅れています。ベトナムでは2020〜2021年に太陽光が急増した際、送電容量不足で大量の出力抑制が発生しました。インドネシアもジャワ島中心で電力需要が集中し、再エネ豊富な外島から送電する系統が脆弱です。

第二に、政策の不連続性
ベトナムのFIT制度は2017年導入、2020年で打ち切り。その後3年以上、後継制度が確定しませんでした。インドネシアは2025年に再エネ目標を23%から17〜19%へ下方修正。「政府が方針を決めても、実行されるかどうか分からない」という状況が続いてきました。

第三に、化石燃料への依存と既得権益
インドネシアの2024年の石炭生産は7.75億トンで過去最高、3分の2は輸出向けです。ベトナムも電源の約半分が石炭火力。国営電力会社(PLN、EVN等)と石炭産業の癒着が、再エネ普及の構造的な障壁になっています。

これらの3つの課題は、2026年5月時点でも、完全には解消されていません。ただし、変化の兆しは確実に見え始めています。

第二章 主要国の動向、3つの代表パターン

ASEANを語るには、国別の事情を押さえる必要があります。ここでは、対照的な3つの代表パターンとして、ベトナム、タイ、インドネシアを取り上げます。

2.1 パターン① ベトナム 「ブームと反動、そして再加速」

ベトナムは、ASEANの再エネで最も先行している国です。

2017〜2021年の太陽光ブーム

2017年、ベトナム政府はFIT制度を導入し、太陽光発電を9.35セント/kWhで買い取る方針を打ち出しました。これが、爆発的な太陽光投資を生み出しました。

●    2018〜2022年の5年間で、ベトナムは38GWの再エネ容量を新規導入
●    そのうち44%が太陽光
●    ASEAN全体の再エネ追加の57%をベトナムが占めた

ベトナムの太陽光・風力稼働容量は、2024年時点で19GW。これは、ASEANの中で圧倒的なトップで、2位のタイ・フィリピン(各3GW)の約6倍です。電源構成に占める比率は25%、ASEAN平均の9%を大きく上回ります。

2022年以降の失速

ところが、2020年でFIT制度が打ち切られた後、後継制度が確定しないまま3年以上が経過しました。コロナ禍によるサプライチェーン混乱も重なり、新規プロジェクトが滞りました。さらに、送電網の容量不足で、すでに導入された太陽光発電所の出力抑制が常態化しました。

2024年7月、DPPAでの再加速

2024年7月、ベトナム政府はDPPA(直接電力購入契約、Direct Power Purchase Agreement)を許可する政令を承認しました。

これにより、大企業が再エネ発電事業者から直接電力を購入できるようになりました。グローバル製造業(Samsung、LG、Foxconn、Apple)が、ベトナムでの再エネ調達を本格化させる地ならしです。

Power Development Plan 8(PDP8、2023年5月承認)は、2030年までに再エネ比率31%、2050年までに再エネ比率71%を目標に掲げています。ただし、洋上風力(86GWのポテンシャル)の本格活用には、海域空間計画や許認可の透明化が必要であり、これからの課題です。

2.2 パターン② タイ 「分散型太陽光と着実な政策運営」

タイは、ベトナムのような爆発的成長はないものの、着実な政策運営で安定的に再エネを増やす国です。

現状(2024年実績)

●    太陽光・風力の稼働容量:約3GW
●    うち約67%が陸上風力(東南アジアで珍しい)
●    ASEANで2番目の経済規模、低リスク投資先として評価が高い

2024年の制度改革

2024年、タイ政府は分散型太陽光(屋根上、商業施設)の規制を大幅に緩和しました。

●    許認可手続きの簡素化
●    FIT制度の更新(2030年まで)
●    分散型太陽光の純額計量(net billing)スキームの導入
●    加速度償却、所得税免除、輸入関税免除などの税制優遇

これにより、2024〜2028年の5年間で、追加の4GW程度の分散型太陽光導入が見込まれています。

特徴:商工業需要家の屋根上

タイの再エネは、いわば「タイ流の自家消費」を進めています。

●    バンコク周辺の工業団地(Amata、WHA等)で、屋根上太陽光が急増
●    日系製造業(自動車、電子部品、食品)も積極的に導入
●    大手商業施設(Central Group、CP Group)の屋根活用も拡大

タイの再エネは、「政府の野心的目標」より「現場の経済合理性」で動いている、という特徴があります。

日本の製造業がタイ工場で再エネを調達する場合、屋根上太陽光が標準的な選択肢になっています。

2.3 パターン③ インドネシア 「課題山積も、変化の兆し」

インドネシアは、ASEAN最大の経済規模を持ちながら、再エネで最も遅れている国です。わたしが現場で関わってきた経験を踏まえて、率直に書かせていただきます。

現状の厳しさ

●    太陽光・風力の稼働容量:1GW未満(ASEAN総容量の3%以下)
●    電源構成に占める太陽光・風力:1%未満
●    計画中容量19GW、うち16.5GWが太陽光、ただし建設中は0GW
●    2024年の石炭生産:7.75億トン(過去最高)
●    2025年に再エネ目標を23%から17〜19%へ下方修正

これだけ見ると、インドネシアは「再エネ後進国」です。ただし、変化の兆しは確実にあります。

ジャワ島での太陽光プロジェクト

わたしの取り組んでいるランプン州(スマトラ島南部)のPETリサイクル実証プロジェクトでは、リサイクル工場の屋根上太陽光と組み合わせる構想を検討しています。中央ジャワ州ではPT Infra Hijau Arkeplagoとの協力で、リサイクル工場のオンサイト太陽光導入を進めています。

こうした個別の動きは、政府統計には反映されていませんが、確実に積み上がっています。

シンガポールへの輸出という新しい収益源

後述しますが、シンガポールへの再エネ電力輸出が、インドネシアの再エネ投資を活性化させ始めています。シンガポールが2035年までに6GW輸入する計画のうち、2GWはすでにインドネシアからの条件付ライセンス(Conditional License)を取得済みです。

地熱という固有の強み

インドネシアは世界最大級の地熱資源を持っています。

●    現状の地熱稼働容量:約3GW(ASEANで圧倒的トップ)
●    24時間安定供給可能で、ベースロード電源として価値が高い
●    日本の三菱重工、住友商事、東芝エネルギーシステムズが深く関与

インドネシアの本質、「行く先は決まっている、ただし時間がかかる」

わたしが現場で感じるのは、インドネシアは方向性は決まっているが、実行のスピードが遅いということです。

2060年カーボンニュートラル目標、JETP(Just Energy Transition Partnership)への参加、シンガポールへの輸出、これらは確実に進みます。ただし、日本の製造業がインドネシアで操業する場合、「あと10年は化石燃料中心」という前提で、短期戦略を組む必要があります。

第三章 シンガポールのASEAN Power Grid構想

ASEANの再エネを語る上で、もう一つ外せないのが、シンガポールの輸入電力戦略です。これは、東南アジア全体のエネルギー構造を変えうる構想です。

3.1 シンガポールの制約と戦略

シンガポールは、人口約600万人、国土面積は東京23区程度の都市国家です。国内に再エネを展開するスペースがほぼありません。

●    風速が低い(風力に不向き)
●    潮汐レンジが小さい(海洋エネルギーに不向き)
●    地熱資源なし
●    太陽光導入は進めているが、2025年時点で約1.7GWp、限界あり
●    電力の93%を天然ガス(LNG輸入)に依存

そこでシンガポールが選んだ戦略が、「国境を超えて再エネを輸入する」というものです。

3.2 6GW輸入計画、4ヵ国から

シンガポールエネルギー市場局(EMA)は、2035年までに約6GWの低炭素電力を輸入する計画を掲げています。これは、シンガポールの2035年予測電力需要の約3分の1に相当します。

2025年10月時点で、すでに11プロジェクトに条件付承認が出ており、合計約8.35GWの輸入計画が動いています。

主要な輸入元
●    インドネシア:複数プロジェクトが「条件付ライセンス」(Conditional License)に進展、計2GW以上
●    ベトナム:太陽光・蓄電池の組み合わせ
●    カンボジア:水力・太陽光
●    マレーシア(サラワク州):水力1GW(2025年に条件付承認)
●    オーストラリア(北部準州):太陽光1.75GW、4,300kmの海底ケーブル経由(SunCable社)

特にオーストラリアからの輸入は、4,300kmという世界最長級の海底ケーブルを建設する計画です。2035年以降の運用開始を目指しています。

3.3 ASEAN Power Grid(APG)構想

シンガポールの輸入計画は、「ASEAN Power Grid(APG)」という地域大の電力網構想の一部です。

●    2024年9月、ASEANエネルギー大臣会合で海底電力ケーブル枠組みに合意
●    2045年までにAPGを実現する目標
●    域内10ヵ国の電力網を相互接続
●    必要投資総額:約2,900億ドル(IRENA推計)

APGが実現すれば、再エネ豊富な国(ラオス、インドネシアの島嶼部、フィリピン)から、需要地(シンガポール、マレーシア半島部、タイ南部)への送電が可能になり、各国の再エネ投資が加速し、製造業の調達選択肢が大幅に拡大します。

3.4 Cross-Border REC、再エネ証書の越境流通

2025年10月のAsia Clean Energy Summitで、シンガポール政府はCross-Border REC Framework(越境再エネ証書枠組み)の草案を発表しました。これは、ASEANの国境を超えて再エネ証書(REC)を流通させる仕組みです。

製造業にとっての意味は大きいです。

●    ベトナム工場で消費した電力を、インドネシアで発電された再エネ証書でカバー
●    マレーシア工場でカンボジアの水力RECを購入
●    シンガポール本社でオーストラリアの太陽光RECを購入

国境を超えた最適な調達が、これから可能になります。

第四章 日本の製造業に何を学ぶべきか

ここまでの議論を踏まえて、日本の製造業がASEANの動きから学ぶべきポイントを5つに整理します。

4.1 学び① 国別の最適調達戦略を持つ

ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール。それぞれの国で、最適な再エネ調達戦略が違います。

●    ベトナム工場:DPPA(2024年7月新制度)の活用、Samsung・Apple等のサプライチェーンRE100要求への対応
●    タイ工場:屋根上太陽光(自家消費)が標準、Net Billing活用
●    インドネシア工場:地熱・水力PPA、シンガポール輸出向け案件への参加
●    マレーシア工場:サラワク水力、Renewable Energy Tariff活用
●    フィリピン工場:Green Energy Auction Program(GEAP)参加
●    シンガポール拠点:輸入電力RECの活用

「アジア全社一律のエネルギー戦略」は、もはや最適解ではありません。

国別、工場別、業種別の最適化を進めるべきです。

4.2 学び② 現地の制度変化を機動的に追う

ASEAN各国の再エネ制度は、頻繁に変更されます。ベトナムのFIT制度は2017年導入、2020年打ち切り、2024年DPPA制定。インドネシアの再エネ目標は2025年に下方修正。タイのFIT制度は数次にわたって改定。

日本の感覚で「3年に1度、規制動向を確認すれば十分」という前提では、追いつけません。

●    半年ごとの制度動向のレビュー
●    現地法律事務所、コンサルティング会社からの定期情報提供
●    現地の業界団体(JETRO、各国日本商工会議所)への参加

これらを通じて、機動的な対応ができる体制が必要です。

4.3 学び③ 地熱・水力という「固有の強み」を活用する

東南アジアには、太陽光・風力以外にも、地熱・水力という固有の強みがあります。

●    インドネシア・フィリピン:世界最大級の地熱資源
●    ラオス:水力電源中心、周辺国への輸出大国
●    マレーシア(サラワク):豊富な水力

これらの24時間安定供給可能なベースロード再エネは、製造業のRE100対応にとって極めて価値が高いです。

「太陽光だけ」ではなく、「地熱・水力との組み合わせ」を、調達戦略に組み込むべきです。

4.4 学び④ シンガポール経由の調達という新しい選択肢

シンガポールの輸入電力構想は、日本の製造業にとっての新しい調達ルートを生み出します。

シンガポールに地域本社や物流拠点を持つ日系製造業は、シンガポール経由の再エネRECを、ASEAN全体の事業所のRE100対応に活用することが、これから可能になります。Cross-Border REC枠組みが整備されれば、国境を超えたRE100マッチングが実現します。

これは、すでに欧州で実現しているバーチャルPPAの、ASEAN版です。

早めに調達網を確保した企業ほど、有利な条件を引き出せるでしょう。

4.5 学び⑤ CLOMA連携の延長として、再エネに目を向ける

最後に、わたし自身がCLOMAワーキンググループでインドネシア協力チームリーダーとして関わってきた経験から、お伝えしたいことがあります。

CLOMAは、海洋プラスチック対策のための官民連携です。インドネシアでのプラスチック資源循環、PETリサイクル、廃棄物発電(WtE)などのプロジェクトを進めています。これらのプロジェクトは、実は再エネと密接に関連しています。

●    リサイクル工場の電力は、屋根上太陽光と組み合わせれば、低炭素リサイクルに
●    WtEは、ベースロード再エネ(バイオエネルギー)として位置付けられる
●    資源循環+再エネのセット提案が、現地政府にも受け入れられやすい

「資源循環」と「再エネ」は別のテーマではなく、表裏一体なのです。

日本の製造業が東南アジアで資源循環を進める場合、再エネとセットで考えることが、現場での効率も経済性も向上させます。

第五章 現場からの3つの問いかけ

第5話を終えるにあたって、3つの問いを投げかけたいと思います。

5.1 問い① 「ASEAN各拠点のエネルギー戦略を、国別に設計していますか」

ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール。これらの拠点を、すべて同じ調達戦略で運用していないでしょうか。

国別に違うエネルギー制度・送電網・コスト構造に、機動的に対応できる体制を持っているでしょうか。

5.2 問い② 「主要顧客のサプライチェーンRE100要求、現地で具体化しつつあるとお聞きでしょうか」

Apple、Samsung、Microsoft、Googleといったグローバル企業は、すでにASEAN各国のサプライヤーに対して、現地でのRE100対応を要求しています。

「あと2〜3年で、自社の現地工場にもこの要求が来る」と想定して、現地での再エネ調達網を準備しているでしょうか。

日本本社で考えるだけでは、現地の機動性に追いつけません。

5.3 問い③ 「資源循環事業と再エネ事業を、別々に進めていませんか」

日本の製造業が東南アジアで資源循環事業(リサイクル、廃棄物処理)を進めるとき、しばしば再エネとは別組織、別予算で運営されています。

ところが、現場では両者は表裏一体です。

統合的な現地事業戦略を組むことで、効率も経済性も大幅に向上します。組織の壁を超えた発想を、本気で持つべき時期に来ています。

おわりに 次回予告

次回の第6話では、「水素・アンモニア・合成燃料、製造業の脱炭素第二の波」というテーマで、再エネ電力では脱炭素しきれない領域を掘り下げてまいります。

製造業の中には、電力化が困難なプロセスが多く存在します。

●    高温熱プロセス(鉄鋼の電炉、セメントの焼成、ガラスの溶融)
●    大型輸送(船舶、航空、長距離トラック)
●    化学原料(アンモニア、メタノール、エチレン等)

これらを脱炭素するには、水素、アンモニア、合成燃料(e-fuel)といった選択肢が必要です。日本政府が推進する水素社会推進法、AZEC(アジアゼロエミッション共同体)、サウジアラビアやオーストラリアからのグリーン水素輸入計画など、最新動向を整理してまいります。

ホルムズ封鎖の影が長く伸びる2026年5月、東南アジアの動向を踏まえて、次は脱炭素第二の波を見つめましょう。

それでは、次回でお会いしましょう。

引用文献・参考資料

●    Enerdata「ASEAN Energy Transition: Renewables & 2030 Targets Outlook」(2025年)
●    Ember「ASEAN's clean power pathways: 2024 insights」(2025年6月)
●    Global Energy Monitor「A Race to the Top Southeast Asia 2024」(2024年)
●    Southeast Asia Public Policy Institute「Southeast Asia's Energy Transition: Policy and Deployment」(2025年1月)
●    43rd ASEAN Ministers on Energy Meeting(AMEM)「APAEC 2026-2030」(2025年10月)
●    Vietnam Power Development Plan 8(PDP8、2023年5月承認)
●    Vietnam DPPA Decree(2024年7月承認)
●    Indonesia 2025年再エネ目標下方修正(2025年)
●    Singapore Ministry of Trade and Industry「Low-Carbon Electricity Import」(2025年10月)
●    Singapore EMA「Regional Power Grids」(2025年)
●    Singapore COP30 National Statement by Min Grace Fu(2025年11月)
●    ASEAN Energy Ministers「Subsea Power Cables Framework」(2024年9月合意)
●    IRENA「Accelerated Partnership for Renewable Energy in Southeast Asia(APRESA)」
●    Cross-Border REC Framework draft(2025年10月、Asia Clean Energy Summit)

著者プロフィール

畠山 達彦 株式会社DCTA 代表取締役
大手ケミカルHDの事業会社にて機能性樹脂事業の責任者を務め、素材開発・加工技術・工場設計・生産管理に至るバリューチェーン全体の意思決定を担う。30カ国以上の事業運営を統括した後、2014年11月に独立し株式会社DCTAを設立。製造業の環境規制対応(PFAS・EU CRA等)、IoT/AI/デジタルツインを活用したスマートファクトリー構築、アジアでの資源循環ビジネス開発を中心としたコンサルティングを展開。湘南・横浜を拠点に、東南アジア・中東・インド・欧州・米国で活動中。CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)ワーキンググループ・インドネシア協力チームリーダー。NewsPicks EXPERT AWARD ベストフラッシュオピニオン賞2024/2025年連続受賞。
会社URL https://www.dctainc.com/

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