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続・旅に本を持参するということ

午後、時間ができると、ふらりと旅に出る。
と言っても、日帰りの小さな旅だ。
せいぜい千円くらいで行ける場所。
文庫本を一冊持って行く。

地方ロケが多かった頃は、光文社文庫の「異形コレクション」シリーズが旅のお伴だった。
ホラー短編を新幹線で読み耽った。
平山夢明もその時の知った。
ただ、分厚い本なので、小さな旅には不向きだ。
薄い文庫本。
殿山泰司『JAMJAM日記』が最多同伴。
殿山さんのいろんなロケ先に旅をしていた。

その日は、S県K駅前のコーヒーショップに潜伏。
この駅もなにもないわけではないが、なにがあるというわけでもない。
ラーメン屋と喫茶店が一軒づつ、大きめのスーパーもあるし、生活には困らんだろう、という町だ。



エスプレッソを注文したら、砂糖と小さなチョコレートが付いていて、
俺は水とコーヒーを交互に飲む。

『JAMJAM日記』を数日分読む。
エスプレッソを飲む。
椎名林檎が唄うような感じでAVを撮れば気持ちいいやろなぁ、とふと考える。
或いは、椎名林檎が叫ぶような感じで喘ぐ女優がいたらね。



代々木さんのチャネリングFUCK時代に現場でよくチューニングの話を聞いた。
波長を合わせることね。
波長が合うと、すごく気持ちいいし、深いところへ行ける。
俺は波長が合えば、昔は徹底的に追い込んだ。
今はどうやろ。
心地よさを味わうかな。
現場は工事みたいなのが普通だと思ってたほうがいい。
やっぱり椎名林檎ではないわけ。



エスプレッソを飲むうちに苦味が効いてきて、
チョコレートを少しかじって、
また飲んで、
『JAMJAM日記』数ページ、
外を眺めて、
今月の仕事の準備を考えて、
ち上がろうとして、また座って。

この町は並にもないから、椅子から立ち上がったら帰るしかない。
それでまたセックスのこと考えて、
エスプレッソの残りを飲んで、
チョコレートの残りをかじって、
水を飲み干して、
文庫本を閉じた。



ラーメン屋と喫茶店が一軒づつあっても、
きっと退屈だと別れた女に教えたくなり、
何もなくなったテーブルの前に座り続ける意味はないから、
そろそろこの町とオサラパするかとコートを着て。

駅の階段を昇るときは風が吹いてないハードボイルドでないから、
風が吹くまでポストの前で待とうかと思った。
しかし、アッサリと切符を買って、ホームに転がり込む。

刺し違えずに現場を後にすると、余力はくつろぎにならず、
邪意がざわめく。
俺はあの日の女のコードを解読できなかった。
まあ、そういうこともある。
殿山さんと帰ろう。
今日の潜伏はこれでおしまい。

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