経理が分からないのに、税理士さんにお願いしなかった理由

確定申告は税理士さんにお願いする。

そんな話は、よく聞く。

それにもかかわらず、経理の知識がほとんどない私は、税理士さんにお願いも、具体的な相談もしなかった。

手を伸ばせば、助けてくれるところは目の前にあったのに。

◆懇親会の席で、ちょっと相談した


長らく正社員として働いてきた。働き方を変えた今も、給与をいただいている。

その会社の懇親会で、長く顧問をされている会計士の先生に、少し相談したことがある。

堅実で、しっかりした先生だ。
先生は「料金はいいよ」と言ってくれた。
それは良くないから、ちゃんと払います。

そう言ったら、

「相談はいいけど、高いよ。」

と返ってきた。

正直な人だと思う。曖昧にせず、ちゃんと言ってくれた。
お願いすれば、きっと相談には乗ってくれたと思う。

それなのに私は、そこから先へ進まなかった。

◆ほかの相談先も探していた


他にも、私が使っているマネーフォワードのHPで税理士・会計士が紹介されていて、地元の先生も調べてみた。

地方自治体の無料相談会があることも知った。

税務署でも相談できると知った。

相談する場所がなかったわけではない。

それでも、税理士さんにお願いするところまでは動けなかった。

理由の一つは、料金だった。

会社を経営している知人から、税理士さんとの顧問契約にかかる金額をなんとなく聞いたことがあった。

法人と個人事業主で違いがあるのかも分からなかった。ただ当時の私は、聞いた金額に対して、それだけのお金を支払う価値をまだ理解できていなかった。

だから、正直に高いと思った。

でも、理由はそれだけではなかった。

◆知らない人より、知っている人の方が恥ずかしかった


当時の私は、会計ソフトに取り込まれた明細は、全部仕訳をしなければならないと思っていた。

何を買ったのか。いくら使ったのか。そんなところまで全部見せることになると思っていた。

それだけではない。

売上に対して、経費はどのくらいなのか。税金はいくらくらいになるのか。

「この人は、自分の仕事のお金のことを分かっているんだろうか」

そう思われるんだろうかと考えたら、相談できないと思った。

知らない人でも同じことだ。

結局、誰に相談するにしても、自分のお金と向き合うところからは逃げられなかった。

◆会社員のお金の感覚のまま、個人事業主になった


私は随分長く会社員だった。給与が口座に入ってくる。そのお金で生活する。
貯金をしてもいいし、買い物をしてもいい。

もちろん家計をどう管理するかは自分次第だけれど、少なくとも私は、自分で所得税を計算して納めることを意識しながら給与を使ってきたわけではなかった。

給与からは所得税などが源泉徴収され、多くの場合は会社が年末調整までしてくれる。

それが、私にとって長い間「働いてお金をもらう」ということだった。

ところが個人事業主になると、入ってくるお金の意味が変わった。

売上がある。

そこから事業に必要なお金が出ていく。

税金のことも考えなければならない。

そして、その先に自分の生活がある。

働き方と一緒に、入ってくるお金の意味も変わった。それなのに私は、会社員のころと同じ感覚で、そのお金を使っていた。

個人事業主になったからといって、次の日から急に「事業のお金」を俯瞰して見られるようになるわけではなかった。

私は、その切り替えができていない自分を人に見せることが、恥ずかしかったのかもしれない。

◆売上、期限、経費


個人事業主になった以上、確定申告は避けて通れない。

でも、知識がない私は、間に合うのか不安だった。

期限に間に合わないことへの恐怖が大きくて、何から手をつければいいのか分からなくなりそうだった。

だから、一度やることに順番をつけた。

売上は必ず入れる。
期限は守る。
経費は、その次。


と決めた。

税務の知識があって、この順番を決めたわけではない。

当時の私は、どうしても時間が足りなくなったら、経費は自分で判断できるものだけ入れようと考えていた。

本当は経費にできるものでも、私が分からなくて入れられなければ、その分、自分が多く税金を払うことになる。

それでも、売上の抜け漏れがないこと。期日を守ること。

ここは絶対守る。

全部を一度にちゃんとやろうとするのをやめて、順番を決めたら、少し気持ちが楽になった。

知識が圧倒的に足りない当時の私が、それでも前に進むために決めた、自分なりの順番だった。

◆確定申告って、自分で税金を計算するの?


私の中で確定申告は、「税金の額を決めてもらうもの」という認識だった。

この原稿を書くにあたり、改めて確認したところ、日本の所得税は「申告納税制度」という仕組みで、納税者が自分で所得金額と税額を計算して申告し、納税する。

自分で計算して、国に申告する。

だった。

とても驚いた。

確かに「申告納税制度」。漢字を見れば、その通りだ。

自分で決めるんだったら、みんな安くしたいと思うんじゃない!?

でも、ルールは国が決めてるよね?

国が決めたルールに沿って、自分で計算して申告する。

問題は、当時の私がそのルールをほとんど知らなかったことだ。
自分が必要なルールをちゃんと拾えているのか。
自分の判断は合っているのか。

それを確かめる相手がいないまま、自分で「これでいい」と判断して申告する。

申告した内容に間違いがあれば、あとから訂正が必要になる。場合によっては、加算税や延滞税がかかることもある。

これ、難易度高くない?!

なるほど。だから、みんな税理士さんにお願いするんだろうな。

そう考えると、漠然と感じていた不安の正体が、少し見えた気がした。
私は、少しでもルールを知っておいた方がいいと思った。
そこでようやく、確定申告というものの見え方が少し変わった。

◆それでも、今も分からない


ここまで書いていると、ずいぶん分かるようになった人みたいに見えるかもしれない。

全然そんなことはない。

恥ずかしながら、私は今でも税金の種類をきちんと説明できない。

「確定申告で計算しているのって、所得税だよね?」

まだ、そのくらいのところにいる。

ただ、去年とは少し違う。

一年分の経理をやってみて、売上はどのくらいだったのか。経費はどのくらい使っていたのか。税金のためのお金は、どう考えればいいのか。

そんなことに、ようやく意識が向くようになった。

経費だって、まだ計画的に使えているわけではない。

一年が終わってから、
「あー、これくらい使ってたんだ」
と分かるくらいだ。

それでも、何が分からないのかも分からなかったところから、自分が何を知りたいのかが、少しずつ見えるようになってきた。

まだ入口に立ったばかりだと思う。

◆自分でやったことは、無駄だったのか。


税理士さんにお願いしていれば、もっと早く、もっと安心して終わらせられたのかもしれない。

最終的に一人で進めて、実際に申告を終えたときには、やり切ったという達成感があった。

かなりAIを使った。

伴走してもらいながら、調べて、入力して、行き詰まる。また調べる。

毎日のように寝不足になりながら、その繰り返しで、ほんの少しずつ見えるものが増えてきた。

でも、一つだけ。

答え合わせが、できていない。

自分の仕事のことを一番知っているのは、自分だ。
これからどうしていくのかを決めるのも、自分。

それでも、自分でやってみて良かったと思う。

私は、税理士さんと答え合わせをしたかったのかもしれない。

もしこれから税理士さんと関わるなら、横並びになれなくても、自分起点で関わりたい。

あのとき、もし、そういう関わり方ができていたら。
何か違っていたのかもしれない。

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※この記事は、個人事業主である私自身の経験と、この原稿を書くにあたり改めて調べたことをまとめたものです。税務上の取扱いは個々の状況によって異なります。判断に迷う場合は、国税庁・税務署・税理士等の専門家にご確認ください。

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