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sumisumi1102
ショートショート|信号機ぶどう味
子どもが独立して空いた部屋を秘密基地にして早二年。
休日にコツコツと作り続けたジオラマ「子ども時代の町並み」も大詰めを迎えていた。
きっかけは母の遺品にあった写真。
色あせた画像に写し出された幼少期の自分と日常の風景が懐かしく、記憶をたどりながら当時を再現した。
納得のいく信号機がようやく手に入った。
小さな集落に信号のある十字路はなく、隣町とつながる交差点はこのジオラマの重要な景観を担う。
仮設置していた消しゴムを取り上げる。
娘が集めていた香り付きそれは、今もかすかに甘い匂いを漂わせる。
「ぶどう味の信号機、これはこれでおいしいけどな」
下の茶の間が騒がしくなった。
長女が3歳になった孫娘を連れてきたようだ。
雑談が階段を上ってくる。
嫌な予感がした。
「じいじ~」
駆け寄る動線には信号機が入っていたビニール袋が落ちている。
「滑る」思った瞬間、孫の手の紙パックジュースから勢いよく中身が飛び出した。
交差点にぶどう色のにわか雨が降った。
