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the pillowsが夏だった

こんにちは、イダショウゴです。
イダショウゴ's Dexter Head というバンドをやってます。聴いてください。


 ギターを手にしたばかりの中学2年生に、それは衝撃だった。

 「誕生日プレゼント、プレステ3とエレキギターの初心者セットだったらどっちがいい?」
 中学1年生の12月、就職した兄貴が来たる1月の我が誕生日にむけて聞いてきた。随分迷った記憶があるが、俺はギターを選択した。
 元旦にデカい段ボールが届いた。ギターだった。
 それから毎日練習した。教本を一通りやって「チョーキングって何のためにあるんだよ笑」とか「FよりBの方が押さえ辛いやないか」とか、今では考えられないことを思ったり、当時大好きだったポルノグラフィティやBUMP OF CHICKENのコードを調べてみて「なんて難しいことをしているんだ…」と絶望したり、そんなテンプレートなギター初心者期間を過ごした。

 中学2年生になって、ギターの腕がある程度上達してからは、BUMP OF CHICKENの様々な楽曲を練習した。「次はあれだ、次はこれだ」とがむしゃらにYouTubeで聴いては練習した。それに大体半年を費やした。
 その最中に”ハイブリットレインボウ”という、どのアルバムにも入っていない楽曲を見つけた。レア音源かと思った。the pillowsのカバーだった。

 BUMPがカバーした”ハイブリットレインボウ”を聴いた時には「なんだかしっとりした曲だけど、後半の盛り上がり方とか良いな~」とぼんやり思っていた程度だった。そののちに、BUMPがカバーするくらい凄い影響力のあるバンドなのでは?と思い元ネタを調べたのが、忘れられない夏の始まりだったと言える。

 こんなの…最高すぎるだろ…!!!少々メランコリックな入りから、サビの爆発にも似た低音響く歪み。
 MVは、海外の街並とバカデカ工場廃墟 (後に、と言っても25,6歳頃だが、この廃墟がピンクフロイドのアニマルズのジャケットでお馴染みのバタシー発電所だと気づいた)。
 かっこよすぎる。ぶん殴られたような気持ちだった。

 ゴミみたいな先輩のゴミみたいなイビリが嫌すぎて部活(ソフトテニス部)をサボり、周りには「部活も遂行できない奴は人間のカス!」みたいな目で見られ、もう大体全部どうでもいいから好きなことがしたいとギター弾き続けた中学生の俺にとって、「心が荒んだとて何か希望はあるんだろ?」みたいなその一撃が、痛くて心地よかった。

 俺もファズが踏みたい、ファズを踏んでシンプルなコードを鳴らしたい。バンドを組みたい。そんなことを思った。どれも今現在の俺がやっていることだ。原点がそこにあった。
 そういえば夏の始まりとか抜かしてたが、この時はゴリゴリに冬だった。

 中学2年の冬から学年末にかけて、幼馴染や友達を誘って文化祭に出る名目のバンドを組んだ。
 メンバーである幼馴染の家が何戸も蔵がある大きな家だったので、その中でも特に使ってない蔵をめちゃくちゃ掃除して、バンドの練習ができるような部屋にした。まさにガレージバンド。

 中学3年生の春、修学旅行で行った京都でディストーションを買った。どこのメーカーか忘れたが、黄色くて安かった。初めてのエフェクターだった。踏む前からワクワクしていた。あの爆発を自分でも起こせることに。

 修学旅行から帰ってきた後、みんなで楽器を猛練習した。練習した曲はもちろん"ハイブリッドレインボウ"だった。俺以外のメンバーは元々楽器経験が無かったので、全てのパートを俺が自力で予習して、メンバーに教えるということを繰り返した。やっと一通り形になったのが夏休み手前だった。

 その年の夏は暑かった。近年の夏に比べると暑くないのかもしれないが、その時その場にいれば夏はいつだって今が暑い。
 練習場所にしていた蔵には、当たり前だが冷暖房など無く、汗だくになりながら練習をした。扇風機を回していたと思うが無意味だった。

 あの夏が俺の経験した夏の中で一番輝いていたと思う。しなきゃいけない受験勉強をするでもなく、朝起きたら飯を食って蔵に集合し、延々楽器を弾いて、途中休憩がてらオススメのバンドの情報や曲を持ち寄って聴き、また楽器を弾いて、陽が落ちるか落ちないかくらいの時間に解散。その繰り返し。
 "ハイブリッドレインボウ"の合奏自体が形になったこともあり、段々と違う曲も練習し始めた。"Funny Bunny"や"Wake up! dodo"あたりを演奏していたと思う。

 楽しかった。本当に楽しかった。何のしがらみもなく、ただ純粋に音楽を楽しんでいたなと感じる。他のメンバーは分からないが、俺はそう思った。

 秋、文化祭は何のトラブルもなく終了した。全校生徒の前で演奏したのに、思い出に残っているかと聞かれると怪しい。俺の中に残っていたのは、熱気の篭る狭い蔵でthe pillowsを演奏していた あの夏だけだった。


 今年、the pillowsが解散した。
 俺は毎回ライブに行くような出来たファンではなかった。なんなら解散直前の24年12月に初めてライブを観たくらいの所謂にわかファンだったと言わざるを得ない。これからもっとライブ行こうかな~くらいに思ってた自分が恥ずかしい。もうthe pillowsのライブは観れないのだ。

 解散の報を知ったのは、イダショウゴ's Dexter HeadのEPレコーディング当日だった。ベースのノギコウダイに「the pillows解散したらしい」と告げられ、駅で呆然としたのを憶えている。
 喪失感の中でも、レコーディングは進む。今 作り出そうとしているものを希望と銘打って、がむしゃらに地団駄を踏み続けるしかなかった。
 
 35年間 お疲れ様でした。大好きでした。
 選ばれなかった俺は、また明日を待つよ。

イダショウゴ's Dexter Head
X(Twitter) : https://x.com/dexterhead024
Instagram : https://www.instagram.com/dexterhead024/
シンガーソングライターのイダショウゴを中心に2024年に結成。 90~00年代の音楽をルーツとした楽曲を軸に、ダイナミックなライブ演奏を届ける。 東京、神奈川を中心に活動。

https://www.tunecore.co.jp/artists/is.dexterhead

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