イオンモールのガス爆発事故から考える、本当の危機管理とは

本当の危機管理
先日報道されたイオンモールでのガス爆発事故。
まずは、この事故で尊い命を失われた方々のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方々の一日も早い回復を願っています。
私は電気工事業に約30年間携わり、消防設備点検資格者としての資格も保有しています。現在は消防設備の仕事から離れていますが、設備に関わる人間として、このような事故にはどうしても関心を持ってしまいます。
事故が起こるたびに耳にする言葉があります。
「今まではなかった」
「初めての経験だった」
「予見できなかった」
確かに、すべての事故を事前に予測することは不可能です。
しかし、本当にそれだけで終わらせて良いのでしょうか。
私は今回の事故を通じて、改めて「本当の危機管理」について考えさせられました。

設備工事の三大インフラ
建物設備には大きく分けて、
電気
ガス
水道
の三つがあります。
どれも私たちの生活には欠かせないものですが、それぞれ危険性の種類が異なります。
水道設備
実は建物における損害件数で考えると、水漏れ事故は非常に多いものです。
配管の破損や接続部の緩みなどで、店舗やマンションに大きな損害を与えることがあります。
しかし、建物附属設備の水漏れによる人的被害は比較的少ないと言えます。
もちろん経済的損失は大きいのですが、人命に直結するケースはそれほど多くありません。
電気設備
電気は危険なエネルギーです。
極性の異なる電気回路がわずか数ミリ接近するだけで、短絡事故(ショート)が発生します。
感電や火災につながる恐れもあります。
しかし現在では、
漏電ブレーカー
接地設備
絶縁管理
各種保護装置
など、安全技術が大きく進歩しました。
昔と比べると、電気事故は確実に減っています。
ガス設備
私が最も怖いと思うのがガスです。
実はガス配管の圧力はそれほど高くありません。
そのため普段は漏れにくく、設備としては比較的安定しています。
しかし、一度漏れ始めると非常に厄介です。
なぜなら、
目に見えない
音がしない
静かに広がる
からです。
気づく手段の多くは「臭い」です。
2026年の現在でも、最後は人間の鼻に頼っている部分があるのです。

ガス臭がしたらどうするのか
今回の事故報道では、爆発前にガス臭を感じたという証言があったとされています。
もちろん、最終的な事故原因は今後の調査結果を待つ必要があります。
しかし設備管理の視点で考えると、
「ガス臭を感じたら何をするのか」
という行動基準は非常に重要です。
防災センターへの連絡
ガス会社への通報
建物内への立入制限
避難誘導
こうした行動が迅速に行われたのか。
あるいは情報が途中で止まってしまったのか。
事故調査では、その部分も検証されることになるでしょう。
本当の危機管理とは
私は長年現場で仕事をしてきて思うことがあります。
それは、
「危険を感じたら、自分で考えて行動する」
ということです。
もちろん組織にはルールがあります。
上司の指示もあります。
会社の命令系統もあります。
しかし、それ以上に優先されるものがあります。
それは命です。
例えば火災現場で、
「上司からまだ避難指示が出ていないから」
と言ってその場に留まる人はいないでしょう。
地震や津波でも同じです。
本当に危険を感じたら、自分の命を守るために行動する。
それが危機管理の原点だと思います。
日本人が忘れかけているもの
私は日本人の良いところは、規律を守ることだと思っています。
しかしその反面、
指示待ち
前例主義
空気を読む文化
が強すぎる面もあります。
「みんな残っているから自分も残る」
「上司が何も言わないから大丈夫だろう」
そんな心理が働くことがあります。
しかし災害は空気を読んでくれません。
ガスも火災も地震も、
私たちの都合など考えてはくれません。
だからこそ、
「おかしい」
「危ない」
そう感じた時には、自分の頭で考える力が必要です。
技術はもっと進化できる
もう一つ感じるのは、ガス設備の安全技術です。
電気設備には漏電ブレーカーがあります。
消防設備には自動火災報知設備があります。
防犯設備にはAIカメラや遠隔監視があります。
ではガス設備はどうでしょうか。
もちろんガス警報器やマイコンメーターなど優れた技術はあります。
しかし私は、
「まだ進化の余地がある」
と思っています。
例えば、
IoTによる常時監視
AIによる異常検知
建物全体のガス濃度マップ
自動換気システム
自動遮断システム
などです。
技術の進歩によって、将来は大規模なガス爆発事故を大幅に減らせるかもしれません。

事故から学ぶべきこと
事故が起きた時に大切なのは、誰かを責めることではありません。
「なぜ起きたのか」
そして、
「次にどう防ぐのか」
を考えることです。
設備に携わってきた一人として、私はそう思います。
「予見できなかった」
で終わらせるのではなく、
「次は予見できるようにする」
その積み重ねこそが、安全な社会をつくるのではないでしょうか。
職人として長年現場を歩き続けてきた私が学んだことがあります。
危機管理とは、マニュアルの厚さや規則の数ではありません。
危険を感じた時に、自分の頭で考え、自分の命を守る行動を取れることです。
そして、その判断力は突然身につくものではありません。
普段からニュースやSNS、過去の事故や災害事例に関心を持ち、「もし自分がその場にいたらどう行動するか」を考えることが大切だと思います。
そうして蓄えた知識が経験となり、経験が知恵となり、いざという時の行動力につながります。
それこそが、私の考える本当の危機管理なのです。

📖 現在30年間、現場で学んだ経験を一冊の本にまとめています。
『職人から経営者へ。そして、自由人へ。』
NOTEでは、本には書ききれない現場の話や、今の電気工事業界のリアルも発信しています。
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