菜緒と僕101 特別編One Love(後日編)
日向坂の移動車。
午後の光が窓から差し込む。
メンバーはそれぞれ、
スマホを見たり、
寝ていたり、
静かな時間。
ラジオが、ゆっくり流れている。
次の瞬間。
「百年先も愛を誓うよ♪」
イントロが流れた瞬間——
菜緒の手が止まった。
「……」
One Love。
あの日の夜。
コンビニのベンチ。
翼の声。
「菜緒しかおらんのや」
全部、
一瞬で蘇る。
気づいたら、
涙がこぼれていた。
ぽろっ。
「……え?」
隣に座っていた正源司陽子が驚く。
「菜緒さん?どうしたん?」
菜緒は慌てて涙を拭く。
「……思い出し泣きや」
正源司は心配そうに見る。
「悲しいんですか?」
菜緒は首を横に振る。
そして、
少しだけ笑う。
「もちろん、嬉し涙やで」
正源司は、ぽかんとする。
「嬉し涙……?」
菜緒は、窓の外を見ながら言う。
「昔な、ケンカした時に」
「……翼が」
「この曲、歌ってくれたんや」
正源司の目が見開く。
「え……」
「歌って……?」
菜緒は小さく笑う。
「コンビニの前でな」
「急に歌い出して」
「“菜緒しかおらん”って」
正源司の顔が、
一気に赤くなる。
「え……」
「えぇ……」
「なにそれ……」
手で口を押さえる。
「尊すぎる……」
菜緒は少し誇らしげに言う。
「アホやろ?」
正源司は即答する。
「完璧な男やないですか」
菜緒は笑う。
「やろ?」
正源司は本気の顔で言う。
「正に名言ですし」
「そこで
使う音楽のチョイスが素晴らしすぎます」
「もう物語やないですか」
菜緒は少し胸を張る。
「菜緒の旦那やからな」
正源司は、真顔で言う。
「やっぱり売って下さい」
菜緒「非売品」
即答だった。
正源司は崩れ落ちる。
「くぅ……」
「世界で一番欲しい非売品……」
その会話を、
後ろの席で金村美玖と加藤史帆が聞いていた。
美玖「……は?」
史帆「ちょっと待って」
二人が身を乗り出す。
美玖「今の話、詳しく」
史帆「One Loveってあの嵐のOne Love?」
菜緒は少し照れながら言う。
「……そうや」
史帆が頭を抱える。
「なにそれ」
「少女漫画やん」
美玖はため息をつく。
「アイツは本当に馬鹿だな」
でも、
少しだけ笑っている。
史帆
「私、菜緒の彼氏じゃなかったら惚れてるわ」
正源司「もう惚れてます」
菜緒「おい」
車の中に笑いが広がる。
ラジオでは、
サビが流れている。
「百年先も愛を誓うよ♪」
菜緒は、
静かに窓の外を見る。
そして、
心の中で答える。
(……私もやで)
(百年先も)
(翼しかおらん)
涙はもう、
出ていなかった。
代わりに、
優しい笑顔があった。

後日談2へ続く
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