日本映画ベスト100 その①「浪華悲歌」「有りがたうさん」「人情紙風船」
本来ならば「忠治旅日記」を入れたいのですが、やはり全編を観ていない(観ることは不可能)なので外すことにしました。
浪華悲歌/溝口健二 1936
溝口に関しては学生時代に「西鶴一代女」「雨月物語」「近松物語」などを観て時代劇で情念を描く監督なのだろうと勝手に思っていましたが、近年、山田五十鈴主演のこの作品と「祇園の姉妹」を観て目からウロコ状態になりました。こんなにドライに、そしてリアルに現代人(まぁ戦前ですが)を描く人だったのですね。借金で首が回らない父や学費を払えない兄のために、職場の上司の愛人になったり、詐欺まがいの行為をしたりしているアヤ子だったが…。

有りがたうさん/清水宏 1936
戦前の松竹現代劇を小津安二郎とともに牽引した清水宏の代表作。三浦半島を走る遠距離バスに乗り合わせた人々を描く、ジョン・フォードの「駅馬車」を先取りしたような作品です。この作品の素晴らしいところは、全編ロケーション撮影で行っているところ。この撮影のため、主演のバス運転手を演じた上原謙はバスの運転を習得したとのこと。この作風は戦後さらに進化し、実際の戦災孤児たちを主人公にしたロードムービー「蜂の巣の子供たち」へち繋がっていく。

人情紙風船/山中貞雄 1937
日中戦争で28歳の若さで戦病死した山中貞雄の遺作にして、戦前の日本映画の最高傑作だと個人的には思います。質屋の娘が武士との縁談を嫌がっていることを知った髪結いの新三は、同じ長屋に住む浪人・又十郎と一緒に娘を匿うことに…。この時代独特の厭世的な空気感が江戸の時代の不況による厭世感とリンクし、悲劇的なラストに反映されていく。すべてを見せずに予感させる…その完璧な画角とカメラワークが素晴らしい。

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