見出し画像

意識と無意識を「海」に例えてみる

コラムNo. 5, ”物質宇宙”と”精神宇宙”を1枚の紙に描く

ー 前回に続き、意識と無意識について考えていきたいと思います。

1,意識と無意識、覚醒と睡眠
この意識や無意識という精神構造を具体的なイメージに置き換えると、海が最もわかり易いと思います。
また意識と無意識を、覚醒と睡眠という状態に対応させるともっと風通しがよくなります。

上の表に沿って説明します。
精神の「自我」は海面の表層の「波」のようなものです。風や雨、太陽熱といった外圧によって絶えず揺れ続け、決して静止することがありません。これは、覚醒時の意識が外界の刺激によって常に揺らぎ続ける様子に重なります。
 
波のすぐ下(中層)には、海中の水塊が広がっています。これが「個人の無意識」に相当します。表面の波ほど激しくは揺れませんが、海面と同じ水質で、「個人の無意識」も「自我」と同じ“個人の属性”を持っています。自分の過去の記憶や感情の残響が沈んでいる領域です。
 
さらに深く潜ると、海洋深層水のような領域が現れます。上の二層とは組成そのものが異なります。温度、密度、流れ、性質——すべてが表層・中層とは違う。この非常にゆっくりとした大きなうねりをもつ深層水のような領域が、ユングの言う「集合的無意識」に相当します。

精神の階層を、この海の各層に例えましたが、横のコラムに目をやると、じつは睡眠の各段階とも対応させることが出来る事に気付きます。精神の層と眠りの深さが同じ構造を持つことが、この思索の重要な足場となります。
 
意識、無意識の役割を整理しておきます。 
2,意識(表層)と無意識(中層、深層)、及びその役割

  • 表層: 通常の意識状態(日常の表層)です。個人としてはっきりとした自覚があり、言語や論理を使って、時間軸(過去・現在・未来)に沿って直列で物事を処理しています。言語を使い、論理的に「あれこれ計算したり悩んだり」している日常の意識です。その際に脳からはベータ波やガンマ波(高周波)が観測されます。個体ごとにバラバラ(波の位相や周波数に関して)で、集まると互いに相殺し合うノイズの層といえます。

  • 中層: 変性意識状態(深層・基底へのシフト)。何らかのきっかけで、表層の「言語・論理プロセッサ」のボリュームがスッと下がった状態です。脳波はアルファ波、シータ波、あるいはデルタ波(低周波)へとシフトします。 

  • 深層(低周波帯:シータ波・デルタ波・その奥):自我は消え、深い睡眠や変性意識状態にあるときのベースラインです。海洋深層水の層に相当する、ユングの集合的無意識層です。その際の脳からはデルタ波が現れています。

2,脳の知らぜざる機能 
表層、いわゆる意識下の脳は、普段私たちが気付かないバリケード機能を持っているのです。
もしこのバリケード機能がなかったら、私たちは1秒も正気を保っていられないでしょう。

どういうことかと言うと、実は私達を取り巻く現実世界が「情報(ノイズ)」に満ち溢れているのです。
具体的には、次の2つのバリケード機能を持っています。
 
2-1, 「情報を間引く」= 脳のパンクを防ぐための情報カット
今、この瞬間も、私たちの目や耳には膨大な情報が飛び込んできています。

  • 部屋の中を流れるかすかな空気の音、エアコンの振動

  • 視界の端に映っている、壁のシミや家具の質感

  • 服が皮膚に触れている感覚、椅子の固さ

通常の脳は、これらを「今は必要のないノイズ」と判断し、意識にのぼる前に自動的にゴミ箱へ捨てています(=間引いている)。 もしこれらすべてを100%真正面から受け止めてしまったら、脳の情報処理が追いつかなくなり、一瞬でパニック(脳のフリーズ)を起こしてしまいます。私たちが快適に暮らせているのは、脳が世界を「適度に無視して、間引いてくれている」おかげなのです。
 
2-2,「バリケードによって守られる」= 言語と論理による「世界の見やすさ」
私たちの表層意識は、入ってきた生データをそのまま受け取るのではなく、「言語」や「論理」というバリケード(フィルター)を通して、扱いやすい形に翻訳しています。

例えば、森を見たときに、私たちは「あ、木がたくさん生えているな」と1秒で理解します。 しかし、言語のバリケードがない剥き出しの状態だと、何千枚、何万枚という「葉っぱの1枚ずつの形、脈の走り方、色のグラデーション」という狂気的な量の生データがダイレクトに脳に突き刺さることになります。デジタルカメラのRAWデータと画像圧縮後のデータのようなものです。

つまり、表層の意識というバリケードは、「宇宙の無限の情報量から私たちを守り、人間が生きるために必要な分だけをスマートに切り取るための防護壁」の役割を果たしているのです。

一般の人間はこの「バリケード」があるからこそ、押し寄せてくる大量のデータに狂わされることなく日常を処理できているのです。

しかしその反面、バリケードが頑丈すぎるために、その奥にある中層、深層へまで行きにくくしてしまっているとも言えます。
 
まとめ
長くなりましたが、ここでは、意識・無意識、覚醒・睡眠は、階層構造を成しており、海だとイメージする、だけを覚えておいてください。

「ゾーン」へ入るには、精神の深層まで見渡す必要があります。
なんとなく、アスリートの日常のルーティーンを見ていると、大変そうな感じを受けてしまいます。

しかし、人は毎晩、これとよく似た状態を自然に経験しています。それが睡眠です。睡眠では、海の表層から見渡すどころか、深層に近づいて行っているのです。次の回では、睡眠を「意識が深層へ潜る過程」として眺め直してみます。

いいなと思ったら応援しよう!