「打タナイ囲碁ノススメ」 あわわ・作
【1、はじめに】
こんにちは、あわわと申します。Xの囲碁界隈に生息している囲碁ファンです。
私の囲碁の楽しみ方は主に観戦と棋士の推し活。囲碁のルールは最低限知っている程度で自分で打ったことはありません。
月に数回、推し棋士の対局中継がある時は休みを取り、ネット幽玄の間やYouTubeで観戦を楽しんでいます。
あとは自作の推しぬいと出掛けたり、写真を撮影するなど。
普段からSNSで囲碁の情報を追ったり、関連動画を見たりと囲碁沼にどっぷりハマっている私ですが、ほんの数ヶ月前までは囲碁のイの字も知らず、興味もない人生を送っていました。
そんな私がなぜいきなり囲碁に目覚め、どんな経緯で夢中になっていったのかをお話させて頂きたいと思います。
またプレイヤーとして囲碁を楽しむファンとは違い、打たないファンである自分がこの数ヶ月間どのように囲碁を楽しみ、悩み、葛藤してきたかなど、拙い文章ですが文字数の許す限り書き綴れたらと思います。
【2、囲碁との出会い】
私が囲碁を知ったのは、月並みですがヒカルの碁(ヒカ碁)がきっかけでした。
言わずと知れた囲碁漫画の決定版であるヒカ碁が一大ブームを起こしたのは20年以上前のことですが、私が初めてアニメを見たのは15年ほど前の再放送でした。そして去年、思い出したように突然ヒカ碁が見たくなってアニメを見返した私は、それまで以上にどっぷりヒカ碁にハマります。
この感動を、萌えを誰かと共有したい!
そう思った私はXにアカウントを作り、ヒカ碁オタクが集まる界隈に恐る恐る足を踏み入れます。
トンネルをぬけると、そこはオタク達の天国でした。
次から次へと湧き出す珠玉の二次創作。思い思いにキャラ愛を語る同士達。ヒカルの碁原画展のお宝写真やレポートなどブクマを保存する手が止まらない。
ヒカ碁がブームだった頃からのファンとは世代が近いこともあり、初日から楽しく絡めるオタ友が出来たのも幸いでした。
あまりの居心地の良さに、暇さえあればXに入り浸る日々。
しかし一週間ほど過ぎた頃でしょうか、いつものようにヒカ碁垢のTLを徘徊していた時、不意にあるポストが目に留まったのです。
それは、こんな内容でした。
・日本棋院の経営難により、ヒカ碁の聖地である建物が売却の危機
・歴史と名誉ある本因坊戦がシステム、賞金ともに大幅に縮小
・ヒカルの碁にも登場する新初段シリーズが、週刊碁の休刊に伴い中止
それまでの楽しい気持ちがいっぺんに吹っ飛んでしまう程、私は強い衝撃に襲われました。
何年経っても色褪せない、そう思っていたヒカ碁の世界が、現実の囲碁界では既に失われていたというショック。
そして両者の乖離は今後さらに広がっていくかもしれないというのです。
心の中に「私にも何かできることはないか…」という思いが湧き上がりました。
とは言え私はただヒカ碁が好きなだけの、囲碁のルールも知らないオタクです。お金もなければ知識もない、ついでにフォロワー数もようやく2桁に届いた程度。
どう考えても無力だし、お呼びでないことはわかっているけれど、このまま黙っていることもできず、取り敢えず誰かに聞いてみよう…と、私はそのままの気持ちをXに投稿しました。
「囲碁界のこれからのために、弱オタでしかない私にもできることはあるだろうか?」
ありがたいことに、すぐに沢山の返信が届きました。それは以下の様なものでした。
・地元の囲碁教室に通う。プレイヤーになって囲碁界の裾野に加わる
・日本棋院の会員になる
・日本棋院からグッズを買う
・クラウドファンディングで支援する
・ヒカ碁プロジェクトで支援する
・SNSで好きを呟く
どれもなるほどと思わされるアドバイス。しかし、その時の私は正直しっくりきていませんでした。
なぜなら、その時の私の「何かしたい」は「ヒカ碁の世界を守りたい」から来るものであり、オタクとして、ヒカ碁ファンとして出来ることがある筈だと思い込んでいたのです。
毎日ヒカ碁ファンたちの熱いエネルギーを浴びていた私は、この熱量を利用しない手はない…と思っていたのです。
今思えば、その考えは愚かなものでした。結局、それは「小さな私」個人が出来ることではなかったからです。
先の問い掛けを通して交流を持った囲碁ファンの中にも同じ構想を抱いていた方もいました(しかもただ単に妄想していた私とは違い、実際にビジネスとして企画を打診しておられました)が、残念ながら実現に至ることはできませんでした。想像以上にハードルは高かった、ということでしょう。
囲碁界のために私にできることはないか…自分一人では何もできないくせに、そんなことを考えた私がバカだったと反省しました。
でも一度現実を知ってしまったらもう、ただキャーキャー言ってヒカ碁を楽しんでいた自分には戻れない。
何も出来ることはないけど、とりあえず囲碁界がどうなっていくか見続けよう、という思いだけが残りました。見届けられるかはわからないけど、気になる限りは見守っていこう…と。
そして、どうせ見続けていくならせめてもう少し囲碁のことをちゃんと知ろうと思いました。
そのために私は次のことを始めました。
・囲碁アプリでルールを勉強する
・囲碁棋士を覚える
・囲碁専用のアカウントを作る
「囲碁界を応援するために、自らも囲碁の裾野に加わる」それは先にXで問い掛けた際、返信の中で一番多く頂いたアドバイスでした。
それにならって私も囲碁を打とうと始めてみたのですが、結局ハマるには至らず。
しかし反対に、囲碁の観戦は意外に面白いということがわかりました。
見る前は、囲碁のルールも知らない人間が対局なんて見たって楽しめるわけがないと思っていました。
しかし実際に見てみると、AIのグラフが形勢を逐一教えてくれるし、物によっては次の最善手まで示してくれます。盤上で何が起こっているか全くわからなくても、傾くグラフを見て「おおー!」と興奮したり「きゃー!」と悲鳴を上げたりできるのです。
囲碁は打つ人でないと楽しむことができない、それは全くの思い違いでした。
対局を見ていると、この棋士はどういう人なのかと気になってネットや書籍で人隣を調べます。もちろん全員が魅力的なのは言うまでもなく、自然と応援するようになっていました。
どうやら自分は囲碁を打つよりも観る方が合っているようだ、早いうちからそう気付いた私でしたが、同じ頃あることに気付きました。
Xに集まる囲碁ファンの中で囲碁を打たない、いわゆる観る碁ファンは、囲碁を打つファンに比べて圧倒的に少ない、と。
囲碁の裾野という言葉を、私はみたび思い起こしました。
囲碁を打たなくても囲碁を楽しむことが出来るのに、なぜこんなにも観る碁ファンは少ないのだろう?囲碁を打たない者は囲碁界にとって価値はないのか?
今の私では囲碁の裾野に加わる資格はないのか…そんな事を悶々と考えていた時でした。
私の悩みを、見事に打ち砕いてくれる人に出会ったのです。
それは数多く存在する棋士の中でたった一人、唯一にして無二の棋士である、最推しとの出会いでした。
【3、囲碁と推し活】
私が推しを見つけたのは、ほんの小さな写真の一角でした。
なんか可愛い人がいる!!
すぐにググって出た画像を見て、やっぱりめちゃ可愛い!となり、YouTubeを見た瞬間完全に堕ちました。
推しに出会ってからというもの、私の囲碁に対する熱量はうなぎ登り。
それまではタイトル戦や世界戦など大きな試合を観るだけでしたが、ネット幽玄の間に登録し、盤面だけのリーグ戦も追うようになりました。
Xだけでなく、日本棋院のHPも数日おきにチェック。
それまでは勝ち負けだけを見ていた観戦も、現在推しは全体のどの位置につけているのか、どのくらい勝てば次のリーグにいけるのか…など、それぞれの棋戦のシステムから調べて対局を追うようになりました。
何よりも変わったのは、観戦の回数を重ねるうち、AIの数字を追うだけではなく盤面も見るようになっていったことです。
わからないながらも、ここに陣地を張ろうとしているんだなとか、この石を取られないように戦っているんだなとか、今は劣勢だけど残り時間と盤面の空きを加味するとまだいけるかも…など考えながら観戦するようになっていきました。
そして、なんと言っても推しの対局を観るのはめっちゃ楽しい!!
実を言うと、推し始めた当初はビジュから興味をもつのは邪道で、棋士に対して失礼かと思っていたこともありました。
けれど、Xで推しのことや囲碁のことを呟くといいねや肯定的なリプをくれたり、色々と親切に教えてくれる周りの囲碁ファンの人達に励まされ、きっかけはどうあれ応援する気持ちに優劣はないんだと思えるようになりました。
そして夢中になって推しを応援しているうち、気がつくと囲碁の裾野のことを考えなくなっていました。
誰に訊ねずとも、もう私は囲碁の裾野にいる…と自分自身で認められたからです。
【4、終りに】
先日、日本棋院の理事長が変わりました。
私が囲碁に興味を持ち、その行方を見守ろうと決めてから最初に訪れた変化です。
囲碁界を応援したいと思う気持ちは今も変わりません。
けれど、その動機は以前とは少し違います。
ヒカ碁の世界を守るために日本棋院を応援したい。以前はそう思っていましたが、今はそれよりも日本棋院に所属するプロ棋士や職員、これから囲碁棋士を目指す若者や子供たちのために応援したい…と思うようになりました。
囲碁の研究が進んだことで白番にコミのルールが生まれたり、AIの進化によって定石が変わったり…時代の流れと共に囲碁も変化しています。
無くなったものを惜しんで後ろを見続けるのではなく、これから生まれる新しいもので囲碁の未来が明るく開かれるように。
囲碁ファンとしてはひよっ子の私ですが、自分なりに囲碁を楽しみつつ、応援を続けていきたいと思います!
