物置に住むちよ子ちゃんの話
配食の仕事をしていると、いろんな方のお宅にお邪魔する。
その中に、とってもかわいいおばあちゃんがいる。
ドアを開けると、真顔でこう言う。
「ちよ子ちゃんっていう人がね、物置で寝泊まりしてるの。しかも庭でお便をしてしまって、後始末が大変で。地域包括の人にも相談してるんだけどね。」
真顔だ。
さすがに物置で寝泊まりしてる人はいないだろう。いい大人が庭でそういうことはしないだろう。
でも真顔だ。
「はい、はい、そうなんですね、大変ですねえ」
否定もしない。肯定もしない。
「また夕食の時に来ますね」
そっと消える。これが自分なりの正解だ。
―――
でもある日、ピンポンを押しても返事がなかった。
いつもはリビングにいるのに、シーンとしている。
大きな声で呼んでみる。
するとどこからか、ハアハアという声が聞こえる。
配食は見守りも大事な仕事だ。異変があれば緊急で通報、家族、ケアマネさんに連絡しなければならない。
「2階ですか?」
ハアハアしながら、そうだと言っているように聞こえる。
恐る恐る2階へ。寝室らしき部屋からハアハアという声。
「開けますよー」
ベッドから起き上がり、喉を抑えている。
「大丈夫ですか?」
ハアハア。
「痛いとこありますか?声が出ないんですか?」
うんうんとうなずく。
「大丈夫ですよ、無理しなくていいですよ。どうしたんですか?」
しばらくして、絞り出すように言った。
「さっきまで気を失ってたの。目が覚めたら声が出なくなってて。」
―――
それはそれは。大変なことが。
でもここでも、否定はしない。
「大変だったね。よかった、目が覚めて。怖かったね。もう少ししたら声も出るようになるから。」
―――
最初はびっくりした。
でも最近は、次は何が起こるかなって思いながらお宅に向かうようになった。
ちよ子ちゃんの話も、気を失ってた話も、全部真顔で話してくれる。
全部信じて、話を聞く。
話を聞くくらいしかできないけど。ちょっとの時間しかいられないけど。
ちゃんと話、聞くよ。
そんな気持ちで今日もお弁当を届けに行く。
📍 配食のふれ愛 焼津店 / シニアライフ相談サロン めーぷる焼津店
高齢者の食事と暮らしのサポートをしています。
