#177【介護雑記】「認知症」は、「ある日突然やって来る」わけではない。
「親が認知症かも知れない。」「親が認知症になった。」「認知症になって介護が必要になった。」それは、ある日突然に・・・。
なんていう認知症関連の記事は多い。
しかし、アルツハイマー型認知症については、最近の研究で、「発病」から「発症」するまでの、「発症前期」が10年~20年あるという事が解明されて来ている。(これは本当に、多くの人に知って欲しい。)
つまり、「認知症」は、ある日突然、やって来るわけではないのだ。
「発病」・・・病気が発生すること。(起こること。)
「発症」・・・症状が起こること。(症状が出てくること。)
金沢大学 医薬保健研究域 医学系 脳神経内科 教授の小野 賢二郎氏が監修されたアルツハイマーについて詳しく書かれたWebサイトがある。
その中でも「アルツハイマー病のステージ分類」という項目に着目したい。⬇️⬇️⬇️

縦軸が「認知機能」横軸が「経過年」。
🟠「加齢」正常な認知の加齢曲線
高齢になるにつれて、認知力は徐々に低下していく。初期段階のアルツハイマー病の方(およびその家族)は、初期症状を正常な加齢と考えて、医師に相談するのを先延ばしにしてしまうことがある。
【発症前期】発症前のアルツハイマー病(潜伏期間)10年~20年
発症前のアルツハイマー病は、症状を伴わないもののアルツハイマー病の病変がある状態。
【軽度認知障害(MCI)期】2年~6年
MCI期は、アルツハイマー病の症状期の初期段階で、アルツハイマー病の症状が認められ、1つ以上の認知領域に障害が認められるものの、症状によって日常生活に支障をきたすことはほとんどない。
【認知症発症】臨床期間は平均8年~10年
軽度アルツハイマー型認知症、BPSD周辺症状が顕著になる中等度アルツハイマー型認知症、歩行が困難になり、寝たきりになる、重度アルツハイマー型認知症の各段階において、認知能力がさらに低下していき、日常生活に障害を引き起こす段階。
🔷🔷🔷
ーポイント1.
認知症を発症すると老化速度は3倍に。
まず、オレンジ色で「加齢」と示された「正常な認知の加齢曲線」と、MCI期から、右下に向かって急速に低下していく加齢曲線に注目して頂きたい。
「MCI期」から「認知症」へ移行(発症)すると、「正常な認知の加齢曲線」との間が拡大していく。これは、「認知症を発症すると、老化速度が3倍になる。」という研究データに基づく。
ーポイント2.
「MCI期」は、まだ「認知症」ではない。
「認知症」と診断されるのは、脳に著しい変化が確認され、脳機能の低下によって、身体的機能がダウンしはじめて、生活に支障が生じること。
「MCI」期は、アルツハイマー病に見られる「短期記憶能力」の低下や「気分の落ち込み」等はあるものの、話せばわかるw 他者との会話が正常に成り経つ。意思決定も、ほぼほぼ正確にできる。
「何が」「どこにある」も、思い出せる。「お金」の勘定もできる、簡単な調理なら出来る。入浴も一人で出来る。買い物もゆっくり時間をかければ出来る等、サポートは必要だが、生活に支障はない。⬅️この差は大きい。
何より、リハビリによって、ある程度の機能回復が望める。⬅️この差も大きい。
故に、「MCI(軽度認知障害)期」と「認知症期」は、明らかに違う。
ーポイント3.
介護を開始するなら「MCI期」から。
「MCI期」は、まだ「認知症」まで進行していない時期だが、本来、介護が必要なのは、この「MCI期」からだと考える。
認知症にこじらせない為には、その前段階である「MCI期」を見逃さず、そこで「通い介護」から開始して行き、「見守りグッズ」の導入や、ケアマネの選定など介護保険サービス利用の準備を始めておく。
そして、この段階で、兄弟姉妹がいる場合には、誰が「介護キーパーソンになるのか?」ひとりっ子の場合においては、「親の介護が可能かどうか?」決めておくと、いざ、親に不穏な症状が発生した場合に混乱しなくて済む。
近所の歩道橋の横断幕にある交通安全標語で『”まだ行ける”は、もう危険!!』というのがあるのだが、認知症もそれと同じで、『まだ行ける。まだまだ行けるは、もう認知症。』位に、考えておいて損はないだろう。
”いやだけど、そうは言っても、親が、いつ「MCI期」になるかなんて、わからんっ!!💢”
おっしゃる通りw
なので、先日ご紹介した、「MCIスクリーニング検査プラス」を、是非、活用して欲しいっ!!⬇️⬇️⬇️
まだまだ、保険外診療で、実費¥2万~¥3万の自己負担にはなるが、いつもの「血液検査」で、MCIレベル、ひいては、アルツハイマー病発症リスクを、ある程度、予測することが出来る。

これは、例えば、気象予報において、「大型台風」の発生や位置、予報円を観測予測できるようなものだ。「大型台風が来る」とわかっていれば、それに対する「防災」が可能になるのと同じ事。
日頃から備えていれば、いざ「台風」が来ても、危険を回避し、安全を確保する事ができる。「認知症」も「親の介護」も、それと同じ。”直撃”による”衝撃”を和らげることができる。要介護者も介護者も。
ーポイント4.
「発症前期」➡️「MCI期」➡️「認知症」へ移行する時は、必ず、何かしらの”イベント”がある。
「認知症」は、ある日突然、発生するのではなく、まず「発症前期」があり、「MCI期」から「認知症」へ移行する。この移行期間の間には、何かしら、きっかけとなる「イベント」があると私は考えている。
① 他の疾患や転倒骨折による手術や入院による「せん妄」の経験。
② 連れ合いとの死別。
③ 家族との同居、または、別居。
④ 親戚や親しかった人との死別。
⑤それまで不自由なく出来ていた事が、出来なくなった時。
これらのイベントに共通するのは、「大きな環境の変化」による「心理的ストレスの増大」
「脳力」がまだ元気なうちは、これら「環境の変化」や「心理的ストレス」を、日々、意識的または無意識に、なんとか”折り畳んで”、対応し、心身供に乗り越えて行くことが出来る。
ところが、早ければ50代から、心身供に猛烈なストレスに晒され、既に「認知症を発病」している場合、「脳力」は、確実に低下してきており、60代後半から70代で、上記の様なイベントが発生し、強いストレスを感じると、不可逆的に、それらに対応することが出来なくなる。
そこで、「発症前期」➡️「MCI期」突入。または、「MCI期」➡️「認知症」へ突入という心身的変化が現われる。
ここを、我々子供世代は、見逃しているんだよね。
「親」という存在に対する、良くも悪くも「普遍的なバイアス」で。
故に、親も、そして自分も、60代から70代に入って、「大きな環境の変化」があった時には、「MCIスクリーニング検査」を受検して、「認知症発症リスク」を予測しておくのが、「認知症予防」として、大変有効だと考えている。
一概に「認知症」、一概に「介護」と言っても、そのフェーズは、「発病」からの長い期間で勘案すると、明確に異なる。当然、求められる有効な「介護方法」も、フェーズ毎に違ってくる。
「MCI期」であるなら、それ以上、脳の機能を低下させない「脳トレ」や「運動」、「規則正しい生活」という、積極的「リハビリ」と「見守り介護」が有効。
しかし、ひとたび「認知症」に進行すれば、「MCI期」で有効だった、それまでの「リハビリ」や「見守り介護」では、もう本人には、届かなくなっていく。
不可逆的に、生体機能がダウンしていく中で、「なんでわかってくれないの?」と、要介護者に承認を求めても、「なんで、出来ないの?」と、要介護者を責めてイライラしても、なんの解決にもならない。
親の命が朽ちて逝くのを、常に文句タラタラ、不満イライラ、悶々と待っているのか?最終ステージの「看取り」に向けて、積極的に働きかけ、「その務めを果たそう。」と、腹を据えて掛かるか・・・。
「施設介護」にしても「在宅介護」であっても、後者の方が、圧倒的に介護者のストレスは少ない。実務繁多にはなるが、その分、心は満たされている。これはもう、100歳(要介護5)の老母を、ひとりで「在宅介護」している私の師匠(隣の奥さん)を見ていれば容易にわかる。
何より忘れてならないのは、50代、60代の我々「介護者世代」も、既に、アルツハイマー型認知症を「”発病”しているかも知れない。」というリスクを抱えているということだ。
”自分がもし、認知症を発症したら、どんなケアをして欲しいか?"
”自分の時は、どんな終末を迎えたいと願うか?”
そう考えてみるのも、「親の介護に、どう対応するべきか?」の大きなヒントになるのではないかと私は考える。
知識は武器。
介護とは、自分の人生の終焉を含めた”戦略”なのである。
